デザインと開発の関係を探る展覧会がパリ工芸博物館で開催中

「開発/デザイン 交錯する視線」と題された展覧会が、パリ工芸芸術博物館で開かれています。

デザイナーが手がけた自転車やランプからロケット、3Dプリンターまで100点を展示。人間の欲や必要性に応え、最新テクノロジーをより多くの人が共有できるデザインへどう昇華してきたか、開発とデザインの関係を探っています。

また、それぞれの時代が抱える課題の解決や社会貢献をもめざしたデザイナーたちの真摯な視点も垣間見ることができます。

展覧会の会場。

自転車のさまざまなデザイン。実用性の高さをめざしたもの、デザイン重視の自転車など、さまざまです。

電球のデザインは、あまりに有用でなじみ深いため、あまり変化せず、いまも球体が中心。

最新のテクノロジーの中で印象に残ったのは、透明で平らな電気ヒーター。薄いガラスが2枚重なっているそうで、どんな部屋のインテリアにも合うモダンなデザインがポイント。空気を出さないので空気汚染やアレルギーのリスクがないという利点もあるそうです。

ガラスのヒーターは、フランスの有名なガラスメーカー、サン・ゴバン社製。

エコの精神と遊び心が調和したデザインが、「ポリフロス・ファクトリー・マシーン」。プラスチックを糸に変える機械で、綿菓子からインスピレーションを受けたもの。

見た目も、お祭りで見かけた綿菓子の現代版といった趣です。

使い方は綿菓子機とまったく同じ。下の部分にプラスチックを入れて回すと、糸状になったプラスチックがふわふわと浮いて、割り箸などに巻きついてきます。

右から2番目が、糸状になったプラスチック。まさに綿菓子!子供たちも喜びそうです。

糸状にしたプラスチックは、さまざまなものに再生できます。

環境問題のほか、災害時に役だつ用具を手がけるデザイナーの作品も。「リーフベッド」は。ボール紙でできた4つの箱がセットになっていて、4つすべて使えば大人用ベッドに、3つなら子供用ベッド、2つでテーブル、1つなら椅子として使えるというもの。シンプルなアイデアですが、ボール紙の耐久性を生かした再生可能なグッズです。

4つ使えばベッドに。耐久性は300kg、湿度も75%なら問題ないそう。

最後に、地球規模の環境・社会問題に対してデザインされた2点を紹介します。

最初はシーザー・ハラダ氏が開発・設計した船型ドローン。2010年のメキシコ湾岸の原油流出事故をきっかけに、原油を取り除くことができるボートを考えたとのこと。地球上のどこでも、誰でも利用できるようにと、特許権を破棄しています。

船型ドローンのアイデアは、誰もが自由に使用可能。ハラダ氏は福島県にも赴いて、放射線物質の影響を調査していたそうです。

2つ目は、アフガニスタン生まれでオランダ在住のマスード・ハッサニ氏の「マイン・カフォン」。いったい何だと思いますか?

竹とプラスチックでできた球体はオブジェのよう。

答えは、対人地雷の除去装置です。

軽いので風の力だけで地雷原を転がっていき、爆発させます。一度の爆発で壊れる竹は数本なので、また風で別の場所に転がって、違う地雷を爆発させていきます。中央部にはGPSが搭載されているので、地雷の場所がコンピューターで確認することができます。さらには制作費が1体5ユーロ程度と圧倒的に安いため、将来的な活用に期待がかかります。

発想の源は、ハッサニ氏は幼い頃に遊んでいたおもちゃ。風に飛ばされてしまうと、地雷の危険があるのでとりにいけなかった、という悲しい思い出が背景にあるそうです。

デザインと一口でいっても、便利さや快適さを増すためのデザインから、より安全に人間らしく生きるための“開発”まで、幅広いものでした。ボール紙のベッドは自然災害が多い日本では役立ちそうですし、「ポリフロス・ファクトリー・マシーン」は、マンションや地域、学校といった単位で設置して活用するといいかもしれません。

2015/10/02

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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