壁が大きなキャンバスに パリの景観にとけこむストリートアート

景観の美しさが称えられるパリですが、古い建物の壁は、ときにアーティストたちのキャンバスとなります。緑化に関するシンポジウムを紹介した回で、緑化の例を紹介したパリ17区のビオ通りの壁にも、フレスコ画がありました。

市民参加型の都市緑化をめざすパリ-緑化に関するシンポジウムが開催

壁画というと、スプレーやペンを使って描くグラフィティが思い出されます。壁だけではなく、地下鉄の電車や高架橋など、あちこちで見かけます。

不法行為でもあるので、描かれては消去するというイタチごっこもしばしばで、消去のための費用も膨大。アートか犯罪か、つねに議論となるところですが、建物の管理者、アパルトマンの住民から正式に依頼を受けパリの景観の一部になっている作品もたくさんあるのです。

現代美術館やギャラリーで展覧会を開く有名アーティストも誕生し、ストリートアートとして認識されるようにもなっています。ちょうどパリのピナコテーク美術館では、1970年から1990年までの“絵画になったグラフィティ”展も開催中です。

それではパリの壁画を紹介していきましょう。

まずこちらから。壁画とはいえないかもしれませんが、工事中の建物を覆う“トロンプロイユ(だまし絵)”。

コンコルド広場にある高級ホテル「クリヨン」。工事が始まった2012年に覆っていた絵画は、バッグにリサイクルし、その収益金は慈善団体に贈られています。

ホテル「クリヨン」は、実際のホテルの外観を模した絵画で覆っているので、それほど違和感はありません。しかし数年前からパリでは、美術館をはじめとする歴史的な建造物の工事の際、数年前から、高級ブランドの派手な広告が貼られることも増えています。広告費の一部が工事に充てられるようですが、パリの景観にあわないと反対する声もあります。

次は、私が大好きなNemo(ネモ)の作品。パリ20区にあるメニルモンタン駅近くにある築100年以上の古い集合住宅の壁に描かれています。

アパルトマンの住民たちが依頼して、フランスの建築遺産や景観の保護を担当するフランス建造物建築士の同意を得て、実現したそうです。

レインコートを着た黒いシルエットの男性は、ネモの代表的なモチーフ。風船と一緒に空へ飛んでいきそうな雰囲気は、詩の世界です。

同じくネモの作品。やはりモチーフは、カラフルな風船と自転車に乗ったレインコートの男です。1階はスーパーマーケット。

パリの北東部に位置する20区は、パリの中でもストリートアートが多いことで知られています。ネモのほか、Jérome Mesnager(ジェローム・メナジェ)やMosko et associés(モスコ・エ・アソシエ)といった有名なアーティストたちの作品が見られるのですが、彼らは、昔ながらの魅力ある建物が壊されていくことへの反発もこめて、壁に描いているといいます。

ジェラール・メナジェは、白い身体のモチーフで知られるアーティスト。

次は、フランスを拠点に活動するアメリカ人で、ストリートアートのパイオニアといわれるJonOne(ジョンワン)が描いたピエール神父。

パリ17区のパリ市営公園の壁。この壁画の目の前に子供たちの遊技場があります。

ピエール神父は、路上生活者や社会的弱者を救済する慈善団体エマウスの創設者。ピエール神父の顔は、よくみるとアルファベットで描かれていることがわかります。

エマウスの活動を支援し続けているJonOneは、1954年2月にピエール神父がラジオから路上生活者の窮状を訴えたスピーチをモチーフにして、この作品をつくったのです。

パリの最北東の地区には、300mにわたる壁にグラフィティが登場していました。

壁の向こうは国鉄の倉庫。寂しい雰囲気の通りが明るくなった気がしました。複数のアーティストが手がけているそう。

世界的に有名なインベーダーのように、壁画にはアーティストのメッセージを想像する楽しみもあります。世紀を超えて残っているパリのアパルトマンとともに、こうした壁画作品も残っていくのでしょう。

2015/08/06

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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