市民参加型の都市緑化をめざすパリ-緑化に関するシンポジウムが開催

今冬にパリ市が市民から募集した“参加型予算”で、もっとも希望の多かった施策が、「壁の緑化」でした。

市民の意見を反映する、パリの緑化プロジェクト!

このように街の緑化はパリ市民からも要望が高まっていることから、普及のための具体策や課題を考えようと、5月半ばにパリ市庁舎で、「密集した都市の建物を緑化する-都市の新しいモデルとは?」と題した国際シンポジウムが開かれました。

テーマは、「街と住民のための緑化がもたらすもの」と「都市緑化の発展のために必要なエンジニアリング」。

パリ市の担当者やAPUR(パリ都市計画局)、パリ・アビタ(パリ社会住宅供給公社)の代表、環境や農業の研究者、建築家、オフィスビルの管理会社、さらに“緑化先進都市”であるドイツ・ベルリンやカナダ・モントリオール、ニューヨークの緑化担当者らが登壇し、現状や取り組みについて語りました。

都市や建築物などの緑化にかかわる専門家が集まったシンポジウム。ちなみに、この素晴らしい市庁舎は1882年に、ネオ・ルネサンス様式で再建された建物です。

パリや外国における緑化の例やプロジェクトの写真や予想図も展示されていました。

パリ市の説明では、2020年までに約100ヘクタールにおよぶ壁や屋上を緑化する計画とのこと。屋上の緑化を調査したAPUR(パリ都市計画アトリエ)によると、パリでは約44ヘクタールの屋上がすでに緑化されています。さらに建築物の構造などから「すぐに緑化できる可能性が高い」とされているのは、約80ヘクタール分あるそうです。

一般的にいわれている緑化の効果は、環境面(都市高温化の緩和や省エネ、雨水流出の緩和など)、環境や自然を教える教育的な効果、癒しをもたらしてくれる精神面、など。

環境の専門家によると、フランス人の70%が、住居を購入する際の判断材料のひとつとして、緑化スペースの有無を挙げています。さらに「窓から緑が見えるオフィスは、欠勤者が10%少ない」という調査結果もあるそうです。

さらに今回挙げられていた効果は、社会的なつながりの強化です。たとえばアパルトマンの階下や中庭、屋上に植物を植えたら、管理人や世話をする庭師が媒体となって、住民同士の新たなつながりが生まれるでしょう。

パリといえば、17世紀や18世紀に建てられた美しい石造りの建物がイメージされますが、1950~60年代に建てられた集合住宅のなかには、無機質なコンクリートで造られ、お世辞にも美しいとはいえない建物もあります。こうした古い集合住宅の改修計画の中に、緑化を盛り込んでいく必要があるでしょう。

APURの発表でも紹介されていたパリ17区のビオ通り。もともとはアスファルトの歩道でバイク置き場になっていました。2011年夏に工事を行って木々や植物を植栽。夜の騒音問題も解消されたそうです。壁のフレスコは2000年、パリ在住のアメリカ人アーティスト、ウイリアム・マッケンドリーのデザインを元に描かれたもの。

シンポジウムを通して、「緑化に関する技術研究が進み、地球的規模での必要性も高まっている。複雑だ、お金がかかる、維持が大変といったネガティブな意見はもうやめて、アクションに移そう」というパリ市の意欲が強く伝わってきました。

APURからは、「一人3ユーロの鉢を買って植えるだけでもいいんです。緑化は複雑なことではありません」との意見もでました。

このように市民が率先して緑化に参加できるよう、パリ市は“植栽許可”を緩和するための法改正も行いたいとのこと。6月の議会で改正のための投票が行われるそうです。

というのもこれまでは、パリ市内の公共の場に植物や木を植える場合、集合住宅の階下の歩道であっても、パリ市からの許可を得るために何ヶ月もかかっていましたが、法改正によって、期間が短縮されます。

日本でも都市の緑化の研究や実践が進んでいると思います。とくに高層マンションが多い東京では、マンションの屋上や壁、出入り口といった場所も、“緑の空間”として活用されていくべきなのかもしれませんね。

2015/06/11

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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