オフィスや商店を改装 パリに少しずつ増える新タイプのアパルトマン

パリの住宅不足の問題は、これまでも何回も取り上げてきました。解消策のひとつとして、次第に注目されているのが、オフィスや商店を住居に改装するというアイデアです。

パリでは、オフィスや商店はアパルトマンの地上階(日本の1階)に位置しています。パリには建築物の改築についてさまざまな規制がありますが、住宅問題の深刻化に伴って、2005年にこうした改築に関する規制が緩和されています。

パリ15区にある学生寮は、オフィスだった建物を改装。後述するアルスナル建築博物館で写真や図面が紹介されています。

たとえば商店を住宅に変えたい場合。歴史的建造物に指定されていない物件で、外観を変更せず、床面積5㎡を超える部分を建設しない場合は、パリ市の担当部局に“用途の変更”を事前に申告すればよし。それ以外の場合は、やはり“建築許可”を得る必要があります。

ただし物件によって条件が異なりますし、町や地区によっては、小さな商店を守るために住居への改装を規制している場合もあるそう。さらに物件が入居している集合住宅の管理組合へも、打診が必要です。

商店の物件をアパルトマンに改装する利点は、なにより価格の低さ。不動産情報サイトによると、地上階にあるアパルトマンより、価格は20~40%安く買えるそうです。

ただしお店だったのですから、窓は少なく、キッチンも寝室もバスルームもありません。だからこそ自分の理想の住まいをつくる楽しみがあると考える人も多いようです。むき出しの鉄骨や天井窓など、アパルトマンにはない構造をもつ場合もあります。不動産会社では“個性的な物件”として紹介しています。

また、たいてい地下にも部屋がありますが(お店では商品の保管場所、パン屋さんやケーキ屋さんでは工房になっています)、窓がないので自然光は入りません。これをマイナス点ととらえる方もいるでしょうが、外に音が漏れる心配が少ないので、音楽室やホームシアター、ジム、子供の遊び場に改装されるそうです。

オフィスからアパルトマンに改装されている例については、パリのアルスナル建築博物館で4月22日から、『メタモルフォーズ オフィス→住居』と題した展覧会が開かれています。

同展の資料によると、2001年から2012年の間に、住居への改装が許可されたパリ市内のオフィスの総面積は37万8600㎡。一般向けのアパルトマンのほか、学生寮や、住居とオフィスが混ざった建物もありました。

現在進行中のプロジェクトも含め、約30の例を選び、改装前と後の写真や図面が展示されています。

エッフェル塔を臨むパリ7区の集合住宅は、1961年に建てられた郵便局。昨年改装が行われ、郵便局と61のアパルトマン(うち21軒が社会住宅)が入っています。

一見ホテルのような物件は、住宅公団と慈善団体のオフィスでした。現在はパリ市の事務所とともに、高齢者用住宅と若い年齢層向けの社会住宅が入っています。さまざまな年齢層がすんでいるため、出会いの場として、写真のような共有スペースがつくられました。

完全にオフィスをなくすのではなく、オフィスとアパルトマンを混在させた建物も目だちます。たしかに、週末になると人っ子一人いなくなるような“オフィスだけの地区”がパリにはないのですが、このようにオフィスと住宅、さらには高齢者住宅や学生寮を“同居”させることで、いつも多種多様な人たちの声が聞こえる街づくりのきっかけになりそうです。

まだパリ市内には、使われていないオフィスもたくさんあります。1800万のオフィスのうち、6~7%が使われていないという報道もありました。パリ市の現政権は、あわせて20万㎡分のオフィスを住居へ改装すると、計画を進めています。

住宅不足の解消が何よりの理由ですが、経済的そして環境的な理由もあります。新しいアパルトマンや集合住宅を建設するより、資材が少なくて済むので、二酸化炭素の排出量は10分の1になるとパリ市は計算しています。

パン屋さんだったアパルトマン、オフィスだった寮など、これから新しいタイプの住居がますます増えていきそうです。

展覧会情報

MÉTAMORPHOSES Bureaux –> Logements
2015年5月24日まで

場所 :アルスナル建築博物館 Pavillon de l’Arsenal
住所:21 boulevard Morland, 75004 Paris
火曜~土曜 10時30分~18時30分/日曜 11時~19時
http://www.pavillon-arsenal.com/

2015/05/07

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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