パリの住宅問題とソーシャルミックスを考えるスペース「ラルシペル」

社会貢献とソーシャルミックスをめざすスペース「ラルシペルL’Archipel」が、パリ8区にオープンしました。19世紀に修道院だった建物で、後に個人宅となり、1945年からは知的財産を所有する産業財産庁の事務所になっていたそうです。

高い天井が美しい「ラルシペル」

2012年に国から管理を委託されたのが、「オロールAurore」という慈善団体です。「オロール」はなんと1871年から住宅の問題を抱える人たちの社会復帰の支援を行っていて、1875年には公益事業と認可されています。現在、パリとパリ近郊で103の施設を運営し、1200人以上の従業員を雇用しています。

「オロール」はまず、ここを住宅を失ったり問題のある女性のための緊急宿泊施設に改装。今年1月からは、一般向けのイベントをスタートしました。

私がここを知るきっかけになったのも、1月23日に開かれた“ミュージック・シュー・ル・プス”でした。直訳すると「急いで食事を取りながらの音楽」。ランチボックスを食べながら気軽に音楽が楽しめるという企画です。

ミュージック・シュー・ル・プス”では、女性アーティストの演奏を楽しみました。

こうしたイベントは、「オロール」の活動に対する理解を深め、活動を支援してもらうことが目的。さらに、出身地も育った環境も異なるさまざまな人たちの出会いの場になることを願っています。

“ミュージック・シュー・ル・プス”のほか、起業をめざす人たちの集会や映画鑑賞会、ヨガ教室、裁縫教室などを開催。3月にはカフェもオープンするほか、地域住民との交流を視野に入れた子供向けインターネット教室なども予定されています。

扉を開けて中に入るとすぐに、15mの高さを誇る美しい天井が目に入ってきて、修道院だったことがよくわかります。1階から2階までずらりと本棚が並び、8000冊もの本が所蔵されているそうです。

2階の部分は小部屋に分かれていますが、ここは社会貢献に関する団体や会社に貸し出す“コワーキング”スペース。会議のために貸りることもできます。

本がずらりと並びます。2階はコワーキング・スペースになっています

緊急宿泊施設に立ち入ることはできませんが、現在、子供を抱えていたり、妊娠している37国籍約160人の女性が、ここに住んでいるとのこと。

パリの住宅問題はますます深刻化していますが、とくに冬になると、凍死の心配などがあるため、問題が表面化します。路上生活者だけでなく、劣悪な環境の住宅に住んでいる人も含まれます。

貧困層への住宅支援などを中心に活動するアベ・ピエール財団が今年1月に発表した統計によると、特定の住居を持たない人は、2001年から50%も増加しているとのこと。2013~14年の冬には、35万5000人が緊急住宅センターへの入所を求めましたが、居住場所を得られたのは13万8000人のみ。さらに社会住宅への入居が許されたのは、180万件の希望者のうち、46万7000件。さまざまな慈善団体が、問題の深刻さを訴え、活動していますが、解決への道はまだ遠そうです。

ちなみにフランスの法律では、例外はあるものの、11月から3月までの冬季、大家は入居者に退去を求めることはできません。電気やガスも、料金未払いであっても、供給をストップすることは禁止されています。

日本でも、同様の住宅問題が増えているのでしょうし、さまざまな支援団体が活動されていると思います。支援活動に参加することはなかなか難しいかもしれませんが、「オロール」が主催するようなイベントを通してなら、間接的に支援ができ、自然と問題意識を持つきっかけになるのではないでしょうか。

▼ラルペシルの住所
26 bis rue de Saint Petersbourg, 75008 Paris
http://www.larchipel.paris/

2015/03/09

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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