フランス・パリのアパルトマンの災害対策

日本では毎年、地震をはじめ大雪、土砂崩れなど自然災害に見舞われています。

フランスでも昨年11月終わりには、フランス南部のピレネー・オリエンタル県とオード県が大雨に見舞われ、65の市町村が被災。1人が死亡、3500人が避難する事態となりました。

そこで今回は、フランスやパリにおける災害とその対策について、調べてみました。

セーヌ川の氾濫

パリにおけるもっとも重要な自然災害対策が、セーヌ川の洪水でしょう。

1910年1月28日、セーヌ川の大洪水が起こりました。パリでは水位が最大8.62mに達し、2万戸が浸水、水がひくまで35日間かかったそう。オルセー美術館の窓も割れたとのことで、同美術館近くのベルシャス通りの建物の入り口には、当時の水位を示す線が記されていました。

オルセー美術館のすぐ近く、ベルシャス通りのアパルトマンの入り口。1910年1月28日の水位を示す線が記録されています

この洪水の後、セーヌ川の氾濫を防ぐためのさまざまな対策がとられました。水位が
上がった場合に水を移動させる人工貯水タンクも造られ、1910年レベルの水量の場
合、水位は約70cm、低くおさえられるそう。

セーヌ川沿いに建つルーブル美術館では、セーヌ川の水位が通常より6cm高くなると閉鎖され、地下の保管室にある美術品を上階に移動したり、別の場所に移動するなどの処置がとられるそうです。

パリ市は、1910年レベルの水位が予想される際、浸水の可能性があるゾーンマップを作成。洪水警報は3日前から発令するとしています。

警報がでた地域の住民への注意事項を見ると、「重要書類などはなるべく高い場所に移動する」「停電に備えて懐中電灯を確保しておく」「歩道に車を駐車している場合は、危険が少ない場所に移動する」など。「子供を危険にさらすことになるため、子供を学校などに迎えに行かない。各学校で対応が準備されている」という注意もありました。

洪水が発生したら「エレベーターを使わず階段を使う」「ガスや電気を切る」「水が入ってこないように窓、扉、換気口など開口部をふさぐ」「緊急の電話がつながりやすいように、不要な電話は使わない」。

これまで、水位の上昇によって河岸の道路が閉鎖されたり、観光遊覧船が休止されたことはありましたが、それ以上の水害が起こらないことを祈ります。

セーヌ川とノートルダム寺院。ふだんは美しい川です

風害が起こったことも・・・

冬になると、ときおり強烈な風が吹きます。2010年2月終わりには大嵐「シンチア」(アメリカでハリケーンに名前をつけるように、フランスでも嵐に名前をつけます)が大西洋岸を襲い、風速は160kmから最大242kmにも。

個人的に一番記憶に残っているのは、1999年のクリスマスの直後、12月26日から28日にかけての大嵐です。パリでも風速約170kmを観測し、5000台の消防車が出動し、木々は倒れ、アパルトマンの屋根の被害は500万フラン(当時はユーロではなく、フランでした!)に上ったそうです。

パリ市が促す注意事項は、「災害情報を聞くこと」「窓や雨戸をしっかり閉める」など。アパルトマンそのものの強化工事を行うといった対策はありませんでした。

フランスでは地震は起きる?

フランスで地震は起きないの? とよく聞かれます。基本的には、ないといえると思いますが、危険がゼロというわけではありません。アルザス地方のストラスブールには、地震を研究・分析する「フランス地震学中央オフィス」も設置されています。

調べてみると、地震が起きる可能性が高い地方はフランス東部(アルザス、ジュラ、アルプス)や南部(プロヴァンスなど)。フランス本土では中世時代から地震の記録が残っていて、現在も各地で揺れが観測されています。歴史上もっとも大きな地震は1909年、南部のプロヴァンス地方で起きており、想定マグニチュードは6.2。46人が死亡、250人がけがをしたそうです。

そのほかの地震は、多少の揺れを感じる程度で、ニュースになることはありません。たとえば2014年7月11日に大西洋岸のブルターニュで発生した地震はマグニチュード4.9。世界遺産に登録されているモン・サン・ミッシェルでも揺れを感じたという証言があったそう。ただし地元の消防署は3本の電話を受けただけだったとのこと。

調べたかぎりでは、パリで地震が起きた記録はありませんでした。だからこそ、石造りの古いアパルトマンが、今日も美しい姿を保っていられるというわけですね。

このようにパリは、ときに大きな嵐に見舞われることはありますが、地方に比べて自然災害の影響は少ない町といえます。

自然災害ではありませんが、パリで多い災害ニュースといえば、火事かもしれません。原因は電気配線の不備、ガスコンロの火、キャンドルなど。

パリ市が作成した火災予防のちらし。「PREVENIR(予防)」「EVALUER(対応)」などの項目別になっています。

パリやパリ郊外のアパルトマンは、建物が古いという理由だけでなく、電気やガスの定期点検や修理が行われていないことから、災害が起きたり、被害が大きくなる場合もあります。

火災警報器が設置されていないアパルトマンも多いそうですが、2015年3月からやっと義務化されるそう。

日本は災害の多い国だけに、不安を感じる方も多いと思いますが、それだけ災害対策が進んでいるといえます。

災害自体を防ぐことはできませんが、日本が実施している被害を軽減するための様々な取り組みは、世界中の人々にとって大変心強いものです。フランスでも、もっと日本の災害対策を取り入れて、より安全な環境をつくってほしいと思います。

2015/01/23

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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