食&デザインをテーマにしたパリ3区の地域開発プロジェクトが進行中

今年3月にお伝えした食をテーマにしたパリ3区の地域再開発プロジェクト『ラ・ジュンヌ・リュ La Jeune Rue 』。9月から10月にかけて2店のレストランがオープンし、やっと動き始めました。

食をテーマにした大胆な地域再開発プロジェクトがパリ3区で始動

当初、レストランやパン屋、チーズ店など約30店舗が、4月から順次オープンすると発表されていましたが、まったく工事が進む様子はなし(これはパリ、フランスでは驚くことではありませんが)……。1企業が手がけるプロジェクトとしては大規模であることから、本当に実現可能なのか疑問視する報道や、資金を危ぶむ声も挙がっていました。

そんななか、バカンスが開けた9月になって、少しずつ動き始めました。

まず9月初旬にアルゼンチン料理のレストラン「アナイ Anahi」、10月8日韓国料理のレストラン「イバジ IbJI」がオープン。開発中の地域とは少し離れていますが、10区にもビストロ「パン Pan」を10月22日に開いています。

インパクトのある「イバジ」の外観。左隣の建物は『ラ・ジュンヌ・リュ』はチーズ屋になる予定だそう。

「イ バジ」は、壁際のカウンターと大テーブルあわせて23席の小さなお店で、コンセプトは韓国風ストリートフード。おなじみのビビンバ丼やユッケなどのほかに ブルコギとごまの葉のハンバーガーなどもあって、カフェに入る感覚で韓国料理を軽く食べたい方にいいかもしれません。

ユニークな内装は、イタリアの人気デザイナー、パオラ・ナヴォーネによるもの。カラフルなプラスチック製のライト、大きな藤のオブジェ、ひび割れたような仕上げのタイルなど、おもちゃ箱のよう。

「アナイ」は30年前から営業している老舗レストランで、『ラ・ジュンヌ・リュ』が経営者となってリニューアルオープンしました。内装を手がけたのはモード・ビュリー。フィリップ・スタルクの下で10年働いた後、独立した女性デザイナーです。

レストラン「アナイ」。アールデコ調の天井や白いタイル張りの壁はそのままの残し、タイルのはがれた部分に金箔を施されています。夜のみ営業。左のレストランは『ラ・ジュンヌ・リュ』の経営ではありませんが、老舗の有名ビストロ「シェ・ラミ・ルイ」。

『ラ・ジュンヌ・リュ』が掲げる哲学は、「土地や人間にとって“健康的な”取り組みをしている農家を選ぶ」「地球を保護する活動をしている人々を尊重し、ともに活動する」「土地と季節を知る」「食材の価値を知り、無駄にしない」「美を美味なものに活用する」など。

オープンした2店はともに、食材はすべてフランス産を使用。野菜から肉、魚、乳製品、油、さらに石けんやスタッフの制服、洗剤、ゴミ袋まで、生産者やメーカー名を各レストランのホームページ上で発表しています。ただし料理人は、アルゼンチンと韓国の出身者を選び、2つの文化の融合をめざします。

『ラ・ジュンヌ・リュ』が再開発している界隈は、近年は店が次々と閉まって、静かな通りになっていたようです。しかし今回のプロジェクトによって、確実に人の往来は増え、とくにおしゃれ敏感な人たちが増えていくでしょう。

事実、2つのレストランはオープンと同時にメディアに取り上げられ、「イバジ」は20時には行列ができていました。

近くにはこんなパリらしい風景も。

写真右、猫のイラストが描かれた建物はビストロになる予定。ブラジルのカンパナ兄弟が内装を手がけます。

にぎやかになっていく一方で、住民にとって住みやすい地区であり続けてほしいと思いますが、人気が上がれば家賃の高騰も考えられます。流行のおしゃれなカルティエが増えることで、昔ながらのパリらしい風景が減り、物価が上がってしまうという懸念は、いつもつきまといます。

食とデザインの融合、食を通しての地域開発、食材や環境への配慮といったコンセプトはすばらしく、ぜひ貫いてほしいところです。今後『ラ・ジュンヌ・リュ』による肉屋、チーズ屋、パン屋など、生活に密着した商店がオープンしていく予定です。界隈が活気づくことで、『ラ・ジュンヌ・リュ』が関わっていない店舗にも、プラスの影響があることを期待します。

La Jeune Rue
http://lajeunerue.com/
Anahi:49 rue Volta, 75003 Paris
Ibaji :13 rue du Vertbois, 75003 Paris

2014/11/18

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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