停船所は200人待ちとの噂も 船上でセーヌ川に住まう『ペニッシュ』

パリを東西に流れるセーヌ川沿いには、多くの船が停留しています。観光客を乗せる遊覧船はもちろんですが、水上バス、木材や砂などの資材を運ぶ大型船、そしてレストランやバーに改装された船もたくさん泊っています。さらによく見かけるのが、ペニッシュと呼ばれる平底船。もともと運搬用に使われていた船を家に改装し、セーヌ川で船上生活をしている人がいます。

ペニッシュでの生活が始まったのは1970年代。第一の理由は、水上輸送が減り、役目を終えたペニッシュが増えたこと。さらに1968年5月のパリ五月革命(学生運動を発端とした半体制運動)を契機に、独創的な生き方を求める人が増えたことも、理由のひとつに挙げる人もいます。21世紀に入って、人気はどんどん上がっていきました。

アパルトマンの価格が高騰したこともあり、窮屈なアパルトマンを離れ、ゆったりとした環境で暮らしたい、と考える人が増えたのです。パリにはペニッシュ売買専門の不動産会社や雑誌もあります。

エッフェル塔、アレキサンダー三世橋が見えるセーヌ河岸に、ペニッシュが並んでいます。

こちらのペニッシュからは、オルセー美術館が見えます(写真左上)。テラスが気持ちよさそう。

水上生活とはいえ、ペニッシュは150~200㎡と広々していて、2階建てで広いテラス付きという豪華な船もあります。ペニッシュ暮らしを選ぶ方は、まず第一に、都会にいながら自然を感じられる環境に惹かれるのだそう。さらに「独創的な生活環境」「眺めの素晴らしさ」「隣人との問題がない」といった利点が挙げられています。

住民の方が、テラスで読者にふけっていました。

自転車も積んであります。

もちろん、河岸にはポストもあります。

とはいえ調べてみると、簡単にペニッシュが手に入れられるわけではないようです。

ペニッシュ人気に伴って船の価格も高騰。センチュリー21によると、ペニッシュの価格は8万~150万ユーロ(約1100万円~2億660万円)。アパルトマンや家と同様、ペニッシュには固定資産税と住民税がかかります。保険は、通常の住宅保険より高いそう。

一番の問題は、停船所。セーヌ川にもスペースの限りがあるので、停船所を空くのを待たなければなりません。はっきりした数字は見つかりませんでしたが、ある報道では、現在200人もの人が停船所が待っているのだとか。停船所の管理をしているポール・ド・パリPorts de Parisによると、2011年に空いたのは24カ所で、そのうち15カ所の許可証が2012年におりました。登録順に許可を出しているそうですが、単純に計算すると、全員に許可が下りるまで10年くらいかかるということになります…。

停船所が不足していることで、近年は無断で停めている船が増えていることが問題になっています。ペニッシュを購入した場合、新しい所有者があらためて停船許可を申請しますが、その法律を知らずに住んでいる人もいるそうです。この停船許可は、3~5年ごとに更新しなければなりません。

船を停留するには、駐車場と同様、停船料がかかります。料金は船の大きさや停留場所に応じて異なり、月100~900ユーロ。パリ郊外の方が安くなります。また、車に車検があるように、ペニッシュは10年に1度、船底の掃除と船体調査が義務付けられています。ある記事によると5000ユーロほどかかるとのこと。

このように、ペニッシュを購入した後も維持費がかかり、夢のペニッシュ生活はだれもが実現できるわけではなさそうです。とはいえ、ペニッシュで暮らしている人たちにとっては、そんな大変さも、水面の輝きを見ながら、日の出や夕日を眺め、鳥のさえずりを聞きながら暮らす日々には替えがたいのでしょう。

2014/09/03

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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