ソーシャル・ミックスを目指すパリ市の考える、社会住宅の在り方とは

低所得者層などを対象にした社会住宅について、これまで続けてご紹介してきました。あらためて今回は、パリの社会住宅の現状をまとめたいと思います。

2000年12月に制定されたSRU(solidarité et au renouvellement urbains=都市連帯と都市再生)法によると、3500人以上の住民を抱える都市では、全住宅戸数に対する社会住宅の最低比率を20%と義務付けています。

地価、家賃の高騰などで住居を見つけられない人も急増し、パリでは社会住宅の数が圧倒的に不足しています。2012年には、前年から10%以上も多い13万9850人もの人が社会住宅に申請、または再申請したそうです。

5月にパリ市が発表した統計では、2012年1月現在、パリ市の社会住宅は20万993軒で、全住宅戸数の17.38%でした。まだ引渡しが済んでいないものの、2012年までに予算が出資された物件をあわせると、2013年1月時点では19.8%に。

2014年中には20%に達する予定で、法律が定めた2020年よりだいぶ早く目標値に達することになります。パリ市はさらに、2025年には25%の達成をめざしているそうです。

アンリ四世大通り(Boulevard Henri Ⅳ)に建つ社会住宅。15のアパルトマンが入居しています。バスティーユ広場もセーヌ川もすぐ近くで、パリの中心に立地。

パリ市がこれほどのスピードで目標の達成に近づいているのは、2001年以来、社会党が政治の舵を取っていることも影響しているでしょう。ちなみに今年4月に地方選挙が行われ、ドラノエ氏に引き続き、社会党候補のアンヌ・イダルゴさんが当選。パリ初の女性市長が誕生しています。

SRU法がめざすのは、前回紹介したバティニョール地区のように、さまざまな階層や民族が共生するソーシャル・ミックス(社会的混合)。

なかでもパリは、移民や、私のようなフランス国籍以外の住民も多い街。これまでは、社会住宅はパリの外周部やパリ郊外に集中していました。しかし近年は、パリ中心部の集合住宅をパリ市が買い取り、社会住宅として貸し出したり、販売しています。

真ん中の真っ白な建物が社会住宅。パリ市庁舎の東に位置するロテル・ドゥ・ヴィル通り(rue de l’Hôtel de Ville) にあります。

社会住宅を増やしたくても、パリでは新しい建物を建てる土地はかぎられています。そこで数年前から登場しているのが、オフィスを改装した社会住宅です。

パリ市の事務所、郵便局、EDF(フランス電力公社)など公共機関の事務所が中心のようです。

写真の2つの建物ともに社会住宅。セーヌ川に面したセレスタン河岸quai des célestinsにあって、もともとパリ市の事務所だったところ。真ん中に見えるのは17世紀前半に造られたサン・ポール・サン・ルイ教会。

アパルトマンの目の前にはセーヌ川とサン・ルイ島が見えます。

一方、パリは区ごとに社会住宅の数にばらつきがあるのも事実。高級住宅地といわれる16区では、住民の反対によって工事が中断されている住宅もありました。

住宅を増やすというハード面に加えて、住民のコンセンサスがなければ共生はできません。こうしたソフト面がもっとも難しいのでしょうが、社会住宅への対応は、パリの未来の姿にかかわる重要な政策であることは間違いありません。

日本でも、個々の生き方や家族の形が多様化しています。マンション内で、そしてマンション間でも、さまざまな年齢層や階層、家族構成の住民たちとの“共生”がますます求められていくでしょう。

2014/06/20

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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