パリ市も支援!住民同士ができることをシェアしあう仕組み“アコルドリー”

現在フランス国内に10カ所(うちパリに4)、年内設立をめざして8カ所で準備中と拡大を続けているのが、“アコルドリーAccorderie”です。

住民同士ができることを無償で提供し合うという、相互支援サービスです。地方ではボルドーやシャンベリー、モンペリエといった市単位で、パリでは14区と18区、19区、20区(ベルビル)という区の単位に設置されています。

アコルドリーの案内パンフレット

アコルドリーはもともと、2002年にカナダのケベック州で誕生。社会的に不利な立場にある方たちへの支援と地域社会での共生をめざして始まったそう。※英語読みでは「アコーダー」となります。

この活動を見て共感したマシフ財団Fondation Macif (保険会社マシフが設立した社会支援団体)の会長が、フランスでの設立を提案。まずフランス東部のシャンベリーとパリ19区に誕生しました。

その後すぐに、パリ市も活動への支援を表明。マシフ財団と、パリ市の場合はパリ市も補助金を支出して、アコルドリーの拠点が増えていったのです。

実際にどんなふうに相互支援が行われているのか、2012年12月にスタートしたパリ14区のアコルドリーを訪ね、責任者のリズ・ウィッターシェイムさんに話をうかがってきました。

14区のアコルドリー事務所で。右がリズさん。左の女性は、同じ事務所をシェアしている14区のアソシエーション「レジ・ドゥ・カルティエ・デュ・キャトージエムRégis de Quartier du 14ème 」のスタッフ。

現在、会員は230人。「アコルドリーの目的は、住民同士の関係をつくり、有料サービスが受けにくい方を助け、さまざまな社会階層の交流を促進することです」とリズさん。

会員になる条件はたったひとつ。なにかひとつ、サービスを提案すること。

日曜大工やガーデニングのお手伝い、スポーツや外国語、絵画を教える、写真撮影の指導、掃除、料理、ベビーシッターなどなど、できることなら何でもいいのだそうです。

事務所にもサービス例が貼ってありました。『買い物の代行、子供を預かる、宿題のお手伝い、行政手続のお手伝い、税務についてのレクチャー、履歴書の作成』など、さまざまです。

会員になると、ホームページのメンバーページから、メンバーの連絡先と提案しているサービス内容を見ることができます。その後は、メンバーと直接やり取りをして、日時や場所などを決めていく仕組みです。

会員の登録料や会費はゼロ。サービスにかかる料金もゼロ。アコルドリーでは、お金ではなく、サービスにかかった時間を“銀行口座”に入れます。つまり、だれかに1時間のサービスを提供したら、自分も1時間サービスを受ける権利があるということ。

たとえば、壁の塗り替えをお願いして、3時間かかった場合。壁を塗ってくれた方に氏名と「3時間」と明記した“小切手”を渡します。ペンキ代などの経費はお願いした会員の負担です。

この時間が、それぞれの会員の“口座”に記録され、サービスを受けた時間とサービスを受けられる残りの時間が表示されます。

これがサービスをしてくれた会員に渡す小切手。サービスを受けた人の名前、サービス内容、かかった時間、渡した会員の名前、日付を記入し、署名します。

会員のプロフィールをうかがってみると、25歳以下は少ないものの、年齢も職業も収入もさまざまとのこと。当初は、退職者が大半を占めることを予想していたそうですが、もっとも多いのは会社員。ただ男女比をみると、女性が75%を占めているそうです。

個人と個人でサービスをやり取りする場合が多いですが、団体同士の場合もあるそう。たとえば、ヨガを教えられる数人の会員が集まって、複数の会員を対象に教室を開く場合です。

「今後はアコルドリーという団体としてサービスを提供することも考えていきたいですね。たとえば、新学期にあわせて文房具をまとめて購入して会員に販売したり、会員同士で貸しあったりするといった取り組みです」

アコルドリーと同居しているアソシエーション「レジ・ドゥ・カルティエ・デュ・キャトージエム」は、大工道具の無料レンタルなどを行っています。

基本的には、14区のアコルドリーは14区の住民が対象ですが、区や市を超えてより広い範囲におよぶ興味深いサービスが“旅行、住居”。自宅への宿泊を提案している会員もいるのです!14区の会員がアルプス山脈にも近いシャンベリーの会員宅に、無料で泊まることもできるわけです。

自分できることや能力を提供して、必要なときには助けてもらう-。アコルドリーのシステムは、能力と時間の交換というシンプルなものです。しかし無償であるだけに、存続は簡単ではないようにも思えます。

「月に1回、新メンバーを紹介したり、提供するサービスについて語り合える会員の親睦会を開いています。実際に会った会員同士の方がサービスをお願いしやすいこともありますが、なにより、住民が集まる場やつながりを求めている方が多いんです」

サービスの提供・授受という関係だけではなく、そこから生まれる人と人との関係を大切に考えるからこそ、アコルドリーが各地で求められ、会員を増やし続けているのでしょう。

アコルドリーの運営には、拠点となる事務所と会員の個人情報管理がきちんとできるインターネット・ツール、そしてリズさんのようなまとめ役が必要です。パリ市の場合、マシフ財団とパリ市の補助金でまかなわれていますが、こうした金銭的そして精神的なバックアップも不可欠だと感じました。

日本でもマンション単位でアコルドリーをつくることも可能かと思いますが、組織化するのは大変なことですね。まずはご近所をお手伝いするといった軽い気持ちから始めて、マンション全体に広げていくのかもいいかもしれません。

・フランスのアコルドリー
http://www.accorderie.fr/
・マシフ財団
http://www.fondation-macif.org/les-accorderies

2014/05/26

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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