パリ市が推進する環境施策、大規模エコ・カルティエが建設中

エネルギー自立型を実現した集合住宅壁や屋上を緑化したアパルトマンなど、環境に配慮したパリの集合住宅について、これまで何度か紹介してきました。

パリ市の環境計画では、2020年までに二酸化炭素など温室効果ガスを25%削減、再生エネルギーの利用を25%アップさせることを目標に設定。このため1㎡あたりのエネルギー消費量は、住宅を新築する場合は1㎡あたり年間50kw、改装の場合は80kwに近づけることが義務付けられています。

こうした動きが進むなか、2010年から、パリ最大のエコ・カルティエ(環境に配慮した地区)の建設が進んでいます。

クリシー・バティニョールと呼ばれる地区で、ルヴァロワ・ペレ市とクリシー市に隣接するパリ北西部に位置しています。

エコ・カルティエは54ヘクタールにおよび、3400軒の集合住宅をはじめ、駐車場、10ヘクタールの公園、オフィス、映画館や劇場、商店、裁判所などを建設。2017年までには、地下鉄やトラムウエイ(路面電車)がこの地区まで延長されることも決まっています。

この区域は鉄道用地だった場所で、パリ市が2012年のオリンピックを招致した際、選手村の建設予定地になっていました。しかしオリンピックはロンドンでの開催が決定したため、この地区はZAC(集中開発整備地域)に指定され、エコ・カルティエ計画がスタートしたのです。

昨年後半から住宅や公園が完成し始めたと聞き、4月終わりにクリシー・バティノヨール地区を訪れてみました。公園はすでに市民に開放され、一部の集合住宅も完成していました。

マルティン・ルーサー・キング公園の入り口。右側の建物は集合住宅で、地上階(1階)にはレストランがオープンしました。

公園は4月半ば現在、6.5ヘクタールが開放されていて、2018年までにすべて完成する予定。バスケットボールのコートやサッカー場もつくられるそう。

116軒のアパルトマン(うち20軒は低所得者向け)が入った集合住宅。屋上には太陽光パネルが取り付けられています。バルコニーのデザインや屋根の形など、外観はとても個性的。最大の明るさと最良の眺望を得るために考えられたデザインだそう。

公園に面した建設中の集合住宅

公園を出た道路沿いでも住宅を建設中。建設会社の看板があちこちで目に付きます。

公園を歩いていたら、公園の外側に、木とグリーンが対照的なこんな建物が目に入ってきました。

ここはなんと、保育園と小学校。152室の学生寮、地域にある4つの学校に運ぶための給食を準備する調理室センターも兼ね備えているそうです(入り口はそれぞれ別につくられています)。500㎡の屋上に288枚のソーラーパネルを設置。外壁520㎡と屋上800㎡は、植物が植えられています。

公園から出て見た学校。壁が緑化されているのが分かります。右奥はホテル。

このエコ・カルティエは、パリ市が推進する環境施策のモデル地区でもあります。太陽光パネルや壁や屋上の緑化のほかに、下記の取り組みが実施されています。

-2013年から、パリ初のゴミ空気輸送システムを採用(地下のパイプを通してゴミ処理センターに送られる仕組み)
-地熱エネルギーの活用
-公園の整備に雨水を利用

こちらの集合住宅では、ゴミ空気輸送システムが実施されているそう。

クリシー・バティニョールのエコ・カルティエ計画で、環境対策と並んで目標に掲げられているのが、ソーシャル・ミックス(社会的混合)。住民の多様性の実現です。

新築する3400軒のアパルトマンのうち、500軒が学生と若年層、200軒が高齢者と障害者向け、さらに半数以上は低所得者層などを対象とした社会住宅(公団住宅)に設定。さまざまな人が共生する地域づくりをめざしているのです。

実はフランスには、2000年に制定された社会住宅(フランス語でHLM)に関する法律があり、人口3500人(パリを含むイル・ド・フランス地方は1500人)以上の都市は、最低でも20%が社会住宅を建設しなければならないのです。

しかし高級住宅地と呼ばれる街や区、不動産価値が高い町では、この“ノルマ”を守っていないところもあり、批判の対象になることもあるのですが……。

「環境との共生」「ソーシャルミックス」は、フランスの住宅施策において、ますます重要視されています。

先日マンション・ラボで居住者の高齢化が進む公団で誕生した「ルネッサンスin洋光台」の試みが紹介されていましたが、共通する視点を感じました。数を合わせればいいという単純なものではありませんが、多文化、多世代がバランスよくミックスされることで、マンションや地域の活力につながるのではないでしょうか。

クリニー・バティニョール地区についてのサイト
http://www.clichy-batignolles.fr/

2014/05/07

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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