フランスで拡大中 住民が主導で運営する直売所

地域で生産されたものをその地域で消費するという「地産地消」の考え方は、フランスでも広がってきています。最近では、住民が主導となって、農産物や食材を中間業者を通さずに売買する動きも盛んになってきました。

なかでもフランス中に拡大しているのが、2011年秋から活動しているグループ「ラ・ルッシュ・キ・ディ・ウイ La Ruche Qui Dit Oui」(以下ルッシュ)です。

ルッシュのスローガンは“Manger mieux, Manger juste(よりよく食べ、より正しく食べる)。

フランス南部にあるトゥールーズ市の郊外でスタートし、すぐにパリ、ストラスブール、ボルドーといった主要都市に拡大。現在、メンバー数は15万人を超え、販売拠点はフランス各地に384(パリは23)。販売しているのは、販売拠点から250km以内で生産された食品です。

ルッシュを構成するのは、①“ルッシュ・ママ”と呼ばれているルッシュ本部、②配布拠点の運営者、③消費者、④農産物や食材を販売する生産者たち。

ルッシュ本部には25人の社員がいて、生産者と消費者を結ぶコーディネーターの役割を果たしています。配布拠点の運営者は随時受け付けていて、個人でも会社でもグループでも問わないそうです。

消費者と生産者は登録制。ルッシュのHP上で申し込んでメンバーとなり、販売拠点をひとつ選びます。各拠点の紹介ページに、販売している生産者や食品が紹介されているので、ネット上で注文し、クレジットカードで購入。指定の配布日に取りに行きます。

注文は配布日の1週間前から受け付け、一定量に足りない場合は販売されません。配布場所は、公民館や劇場、高校などさまざま。週に1回、土曜日が多いようです。

メンバー登録料はいっさいかかりませんが、生産者はHP運営費や銀行手数料といった経費代として、ルッシュ本部に売上の16.7%を支払います。

生産者にとっては適正価格で販売することができますし、消費者は従来の販売網より低価格で購入することができるわけです。事前に注文を受けるので、売る側にとって損もありません。

3月終わりに、パリ10区での配布の様子を見にいってきました。

配布場所はサン・マルタン運河沿いにある「ル・コントワール・ジェネラル Le Comptoir Général 」。2011年秋、つまりルッシュの始動とほぼ同時に始まったそうです。

多国籍な雰囲気の「ル・コントワール・ジェネラル」。すべてグリーンエネルギーを使い、内装は中古品という、環境問題や持続可能な世界の実現をめざしたイベントスペースです

責任者のエレーヌさんによると、生産者は35、メンバーは4800人。商品の配布は毎週土曜日、11時から13時まで行われ、毎週約200~250人がやってきます。

並んでいるのは、住民の需要が多いビオ(無農薬、オーガニック)製品が中心。野菜、乳製品、キノコ、ワイン、パンなどが売られていました。

11時30分を過ぎると、ショッピングカートやエコバッグを持った方が次々とやってきます。30~50代が多く、子供を連れた家族もめだちました

18世紀まで使われていた採石場を活用して栽培されているマッシュルーム

エリソン農場で栽培されたキャベツやニンニクが売られていました。

生産者やそのご家族が配布しているスタンドもありましたが、印象的だったのは、ほとんどの方がボランティアだったこと。

「多いときには3トンの商品が届くんです。商品を会場に運んだり、設営をしたり、準備も大変なので、メンバーのボランティアの力はとても貴重です」とエレーヌさんは話していました。

オルレアンのビオ農場のスタンドでは、ボランディアの3人が配布。「ルッシュの活動に賛同して、何かできないかと思って2週間前から始めました」

パリ北部ピカルディー地方で栽培されたビオ野菜を配布していた女性2人も、やはりボランティア。生産者とも顔見知りで「農作業が忙しい時期などに手伝っています」とのこと。

エレーヌさんの娘さんとそのお友達も、ビオのパンの配布をお手伝い。お母さんのお友達とのおしゃべりにも花が咲きます

子供たちの声やみんなのおしゃべりの声が響いて、会場はお祭りのような雰囲気。
消費者にも生産者にとってもプラスになる販売システムであると同時に、よりよい生き方や消費社会をめざす人たちのコミュニティーづくりに一役かっているように思えました。

日本では、住民数が多いマンションも多いですから、集会場や広場などを配布場所として、マンション単位で直売所を設置することもできそうですね。現在、208の拠点が準備中とのことなので、今後もますます広がりをみせそうです。

2014/04/15

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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