パリ東部で実施中!商店街と住民を結ぶ宅配サービス

パリ東部の19区と20区では2011年秋から、宅配サービス“ラ・トゥルネ La Tournée”が行われています。

“ラ・トゥルネ”は「一巡」という意味で、地域の商店で買い物した商品を、個人宅やレストランに届けてくれるサービス。車ではなく、車輪付きの荷台を使って徒歩で配達していることから、エコロジーの点でも注目されています。

創始メンバーの1人、ベルナール・リスシアさんによると、ヒントはインドのボンベイで見た弁当の配達サービス。インドには、自宅で作った弁当を、ダッバーワーラーと呼ばれる人たちが会社に届けるサービスがあり、100年以上の歴史をもつビジネスなのだそう。

地元商店が大規模大型店に押されて衰退し、住民同士のつながりがますます弱まっているパリに、取り入れるべき点があると考えたそうです。

そこで思いついたサービスが、地元の商店で買い物した商品を、個人宅に手軽な料金で届けること。ALUD(Association pour une Logistique Urbaine Durable持続する都市物流のためのアソシエーション)を設立し、地元での協力体制がもっとも整っていた19区と20区で始めることを決定。両区の役所と商店街組合、パリ市などの協力を得て、およそ4km²の範囲でサービスを実施しています。

加盟店に貼ってあるシールやポスター

利用を希望する商店や個人客は、まずラ・トゥルネに登録。月曜午前と日曜日を除いて、10時~12時、19時~21時の1日2回、担当者が車両を押しながら徒歩で加盟店を巡回。ひととおり回収が終わったところで、個人宅へ届けます。加盟店や利用者の情報は、担当者が持っている携帯端末にすべて入力されています。

料金は、6kgまたは10リットル以下の荷物で2ユーロ。利用者が、商品代とともに商店に支払い、商店からラ・トゥルネへ振り込まれる仕組みになっているそうです。

スタート時の加盟店は17店でしたが、現在は75店に増加。ALUD社長のキャロル・キュイリエさんは「同じ担当者が毎日、商店街を歩いて回収しています。実際に目に見えるサービスだからこそ、徐々に信頼関係が生まれてきたのだと思います」と話していました。

実際、どんなふうに行われているのか、12月半ば、配達を担当するアルノーさんに随行させていただきました。

スタート時から働いているというアルノーさんは、商店の人たちとはみんな顔見知り。挨拶を交わしながら、お店を次々と回っていきます。肉屋、チーズ屋、クリーニング、文房具店、書店など、あらゆるジャンルの店が加盟しています。10時から回収を始め、1kmほど歩いたところで車両がいっぱいになり、配達に向かいました。

商品を回収中のアルノーさん。自宅も近くで、界隈のことはよく知っています

チーズ屋さんでは、レストランに配達する商品が2箱分。商品の受領証を携帯端末でスキャン

チーズ屋で回収した商品を車両に積みます。冷蔵保存が必要な製品を運ぶテストも行っており、気温25度で4時間まで品質が変わらないことが証明されているそう。

利用者の登録数は819人で、そのうち50が会社。高齢者の利用が多いかと予想していたところ、高齢者の割合は25%と、意外と少ない数字。仕事が多忙で時間がないという若い人たちの利用も多いそうです。

たとえばアルノーさんと一緒にうかがった配達先は、ジャーナリストの女性のお宅。自宅で執筆しているときは時間がなく、ラ・トゥルネをよく利用しているとのこと。買い物をしたが、荷物が多くなって持ち帰れないといった場合に利用する方もいるそうです。

配達先の女性は常連さん。クリーニング店に預けておいた服と肉屋さんに電話で注文した肉を届けました

ラ・トゥルネはこの春、パリ市と提携して高齢者宅への食事宅配サービスを試行。パリ郊外の卸売市場からトラックで食事を運び、パリ市内の各家庭に配達しました。

「実施が決まった場合は、トラックで運ぶのはパリ郊外からパリの各区まで。その後はラ・トゥルネ方式で徒歩で配ります。パリ市の交通渋滞と公害の問題を少しでも改善するためにも、リヴレゾン・ヴェルト(直訳すると“緑の配達”、つまりエコな配達)を優先したいんです」とキャロルさん。

最終的な目標は、パリ市全体へのサービス拡大。そのため郵便局との提携、さらには郵便局がサービスを継承するといった案もあるそうです。

こうした地域密着型の宅配サービスは、地域のコミュニティーの強化、商店街の活性化、高齢者問題、環境問題、さらには雇用問題といったさまざまな面に、プラスになる方法だと感じました。日本にはすでにスピード、正確さ、細やかさとすべてにおいて世界に誇る宅配サービスがあります。そのノウハウを生かして、地元住民やマンション住民と提携したサービス、または住民が主体となるような宅配システムが生まれてくるかもしれませんね。

2014/01/08

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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