パリで進行する旧建築を生かした新コミュニティづくり

2011年2月のコラムで、建築が始まったばかりのアパルトマン“パリ・セット・リヴ・ゴーシュ Paris 7 Rive Gauche”についてお話ししました。

フランス・アパルトマンの基本情報(その2)アパルトマンの仕組み

当初は2013年第三期の完成と発表されていましたが、9月末に前を通ってみたところ、まだ完成には遠い様子……。予定通りにいかないのが、悲しいパリの常なのです。

このアパルトマンは、高級住宅地である7区にあり、しかも老舗高級デパートの「ル・ボン・マルシェ」の隣という絶好の立地条件。パリの中心部には取り壊しが禁止されている古いアパルトマンが多いので、大変めずらしい新築物件です。

それだけに分譲価格も、1㎡あたり9700~20000ユーロ(約130万~268万円)と最上級。ワンルームから5室まで、約200軒のアパルトマンが分譲されましたが、2011年秋の売り出しスタートと同時にほぼ完売したそうです。

工事関係者の入り口では、両側に新築アパルトマン、奥に古い建物が見えます。

西側の通りに回ってみると、こちらにも新築アパルトマンが建設中。奥には、外壁と屋根を残して改装が進む建物があります。

この“パリ・セット・リヴ・ゴーシュ”プロジェクトの特徴は、1632年に建てられた病院の跡地を活用し、歴史的に価値のある建物を保存していること。アパルトマンは新築ですが、チャペルはなんとオフィスに改装されるそう!

セーヴル通りから見た工事の様子。奥に見えるのがチャペルです。

もうひとつの特徴は、アパルトマン以外にもオフィスや商店、学生寮、低所得者向けの住宅、さらに3500㎡におよぶ菜園なども建設し、新しいコミュニティーが誕生するということです。

庭園はパリ市が管理し、指定時間内であれば住民以外もアクセスできるとのこと。完成したらぜひ訪ねてみたいと思います。

さらに同様のプロジェクトが、パリ南西部の15区でも始まっていました。

2001年に閉鎖した病院の跡地で、約5万1000㎡。パリ市は2007年から、再開発の計画をスタートし、2015年~16年までに約400のアパルトマン(そのうち半数は低所得者向け)や障害者向け住宅、文化施設、オフィス、商店などが順次、建設されていきます。

低所得者向けの新築アパルトマンは2013年中に完成予定。奥にチャペルが見えます。

チャペルを横から見たところ。

2003年に古い建物を改装して保育所と医学教育研究所をオープン。さらに2009年には、病院の受付棟だった建物は11クラスの学校となりました。

病院の受付棟だった建物は、学校へと生まれ変わりました。

美しい茶色のレンガ造りの建物の外壁は、このまま保存されます。

敷地の中央は、もともと植えられていたマロニエを中心に約3400㎡の庭園が造られる予定。今年の夏には、ハチミツの巣箱が設置されたそうです。

またエコ・カルチエ(エコ地区)をめざしており、新築はもちろん、旧建築の改装に伴って、太陽光発電や水の再利用システムなどを導入。工事中も、騒音を最小限に防ぎ、廃棄物の分別の徹底するといった努力が行われているとのことです。

パリ市はさらに今年の7月、国が管轄していたパリ12区の兵舎跡を購入。およそ2ヘクタールの土地に、400~500軒のアパルトマンが建設されることになりました。こちらももちろん、保育所や商店も入居します。


このように、歴史的に価値がある建物を保存して、近代的な建物と調和させる街づくりはパリならではといえるかもしれません。地震などの自然災害がほとんどないことも、こうしたプロジェクトを可能にしています。

また空き地となった広大な土地をばらばらに分譲せず、集合住宅を中心とした新しい地区を創造するというプロジェクトは、ゆるやかな人と人のつながりが求められる街の未来像ともいえそうです。

2013/10/07

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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