パリやフランス各地で広がる物々交換“トロック”

最近、TROC(トロック)という言葉を目にするようになりました。

トロックとはフランス語で物々交換のこと。車やワークスペースのシェアの動きは既に盛んになっていますが、服から本、おもちゃ、さらには食材、日曜大工やガーデニングなどのお手伝いといったサービスまで、シェアしたり交換する対象がさらに広がっているのです。

ネット上に交換する場をつくって希望者同士でシェアしたり、定期的に場所を決めて集まっているグループもあります。

人気が増加している理由は、何よりも不要になったものを再利用し、無駄なゴミや出費を減らすことができること。また、新しいコミュニティづくりやご近所付き合いの場としても注目されています。服やアクセサリーを交換するトロックは、ファッションに興味のある同年代が集まるため、友達づくりのきっかけにもなっているそうです。

さらに、マンションの住民同士によるトロックを推進するグループも登場してきました。

たとえばフリー・トロック・ボックスFree Troc Boxは、建物のホールにボックスを設置。住民は本やDVD、おもちゃ、服など不要なものを入れて、欲しいものがあれば自由に持っていけるというもの。ボックスといっても、使っていないダンボール箱にロゴ入りの紙を貼るだけです。

「不要になったものをここに入れて、気に入ったものがあれば自由に持っていってください」と書かれた紙。

実際に行っている人たちは、フェイスブック上に写真を掲載したりして、コミュニケーションの輪を広げています。

また、読み終わった新聞や雑誌の回し読みを推奨しているのが、今年6月に生まれたトロック・ドゥ・プレスTroc de Presse。

会員登録したらマンション内に希望者を募り、お互いに新聞や雑誌を郵便箱に入れて回していくシステムです。

新聞や雑誌の売上に影響すると懸念する声もあるようですが、トロック・ドゥ・プレスは「ふだん雑誌や新聞を読まない人が、これをきっかけに定期的な読者になる可能性もある」とし、反対に紙媒体の宣伝効果もあるとしています。

さらに、フランス西部のナンシーで呼びかけが始まったプロジェクトがパルタージュ・トン・フリゴPartage ton frigo。マンション内に共同の冷蔵庫を置いて、買いすぎてしまった食材や旅行に出る前に冷蔵庫に残っている食材、菜園でたくさん収穫した野菜や果物などを置いて、住民同士で分け合う仕組みです。もちろん、事前に住民同士の十分な話し合いや運営のための合意が必要です。

さらに範囲を広げたり、友人同士でもやり取りができるように、携帯電話に食品の写真が投稿できるアプリケーションも開発し、テスト中だそう。

(写真左)Troc de Presseの仕組みのポスター。住民の1人がトロック・ドゥ・プレスのサイトに申し込んだら、こうした紙を張って同じマンション内の住民に参加を呼びかけます。/(写真右)Partage ton frigoの、「食べ物の無駄ゼロとアットホームな雰囲気づくりのために、共同冷蔵庫をおきましょう」と呼びかけるポスター。

食べ物の無駄についてはフランス政府も問題視していて、今年6月から“アンチ・ガスピヤージュanti gaspillage(略anti gaspi)”キャンペーンをスタートしました。

政府の発表によると、食品ロスは1家庭あたり年間およそ20~30kg。必要以上に購入して余ってしまった食材や食べ残し、いたんだ野菜や果物、さらにはまだ食べられる食品も含まれています。

このため政府は、食材の保存の仕方や賞味期限の見方、食材を無駄にしない調理法などを呼びかけるパンフレットやポスターなどを作成。家庭だけでなく、食品メーカーやスーパー、飲食店、さらに学校や会社などにも呼びかけて、2025年までに食品の無駄を半減させる目標です。

(写真左)食品の無駄を減らすためのキャンペーン・ポスターから。ウイットに富んだ一言が添えられています。ぼてっとしたサツマイモが放つ一言は「私の美しさは中身です」。/(写真右)ナシが写ったポスターには「そう、分かってるの。見た目がよくないことは」

(写真左)「卵を捨てる人は、牛を捨てる人」/(写真右)生鮮食品に記載されている消費期限(DLO date limite de consommation)を正しく理解してもらうためのポスター。

こちらは、保存食品や乾物などに記載されている賞味期限(DLUO=date limite d’utilisation optimale )について。期限が過ぎると品質や味は落ちる可能性はありますが、危険はありません。

物々交換やシェアの動きは、日本をはじめフランス以外でも始まっているようですが、経済的にも環境のためにもプラス面が多い取り組みといえます。

オークションやリサイクルショップに出すほどのものではないけれど、捨てるのはもったいないというものが日常生活には結構ありますから、同じマンション内の住民にあげたり、気軽に交換ができるようになれば便利ですね。

2013/09/25

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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