パリで10年ごとに義務づけられているアパルトマンの外壁工事「ラヴァルモン」

パリの人々がバカンスに出て住民が少なくなるバカンス期は、工事が多い季節でもありました。

道路の補修、石畳の張替え、地下鉄のホームの改装や軌道の工事などなど、利用者が少ない夏の間が、工事の絶好の機会なのです。アパルトマンも同様で、夏を利用して大掛かりなリフォームや修理を行う人が少なくありません。

「ravalement ラヴァルモン」と呼ばれる、集合住宅の外装工事もそのひとつです。

ラヴァルモンは最低10年に1度、行わなければならないと法律で義務付けられています。1~3カ月かけて、外壁の掃除や磨きなおし、塗り替えを行います。費用については、建物に入居しているアパルトマンの家主さんたちが分担して支払います。

こちらの写真のように、外壁に足場を組んで、ラヴァルモンが行われます。アパルトマンの窓からは、行ったり来たりする工事の人の足が見えることも!

工事を行わない場合、パリ市から督促状が送られてきます。法律を守らなかった場合は、最高3750ユーロの罰金が科せられることもあるそう。

ラヴァルモンの目的は、パリの美しい景観を守ること。そして定期的に外壁を修復することで、大掛かりな工事を避けることができ、建物の価値を守ることにもつながります。不動産会社でも、物件の紹介の中に「ラヴァルモンが近年行われたばかり」と記載されていることがよくあります。

工事が決定したらパリ市に書類を提出。およそ2カ月後に許可がおりて、工事が始まります。歴史的建造物に指定されている石造りの建物であれば、工事の申請から許可がおりるまで6カ月かかるそうです。

またパリ市は近年、ラヴァルモンの工事に伴って、断熱性の高い塗装を選んだり、暖房システムの見直しを同時に行うことも推奨。“Copropriétés : Objectif Climat ! (共同所有:気候目標)”と題した省エネ対策を発表して、専門家によるアドバイスのほか、調査費や改修工事の費用の一部を補助する政策などを打ち出しています。

外壁の塗り替え中の住宅。歴史的建造物など、外壁の色も指定される場合があるそう。

とにかくパリは古いアパルトマンが多いので、外装のほか水道管、電気配線、エレベーターなど、問題はしょっちゅう起こります。こうした改修工事ごとに、家主さんたちは工事費を支払っているのです。(賃貸アパルトマンの場合、電気や水道管など日常生活に伴って必要となった修理は借主の負担です)

私は建物の最上階にあるアパルトマンを借りていますが、今年7月に屋根の防水工事が行われました。4月終わりに家主さんたちの特別総会が開かれて、工事の実施が決定。住んでいる階やアパルトマンの面積などに応じて、工事負担金の額が決められたとのことです。

パリの美しい景観は、アパルトマンの家主たちの努力と負担があってこそといえそうですね。ただし、パリの工事は土・日曜はお休みで、工事はとてもスローペース。パリで暮らすには、時間にも心にも余裕が必要です……。

日本のマンションでも建物の安全性や美観を維持するために大規模修繕が行われますが、マンション単体ではなく地域全体で美観を考慮したうえで行うようになれば、街全体の魅力が増し、ひいてはマンション自体の価値が高まる、なんてことにつながるかもしれません。

2013/09/10

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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