家に眠っている本を交換 パリの ボランティアが運営する「シルキュル・リーヴル」

一般家庭で不要になった本を無料で提供する「シルキュル・リーヴル」が、パリ各地に広がっています。

回すという意味の「シルキュルcircul」と、本を意味する「リーヴルlivre」を重ねた名前で、2004年にパリ12区の有志によってスタート。

徐々にほかの地区にも広がって、10年目に入った現在は11の区、28カ所で開かれているほか、4つの地方でも開催。すべてボランティアで運営されています。

「フリーマーケットが目的ではありませんし、文学団体でもありません。本を囲んで会話が生まれ、社会的なつながりが生まれることがうれしいんです。だからすべて無料ですし、登録も不要という簡単さが私たちの活動の特徴です」と、創始者のルネ・ベルトリュスさんは話します。

システムは簡単。家に眠っている本がある人は「シルキュル・リーヴル」の開催場所に持ち込みます。集まった本はいったんスタッフが預かり、内容や状態をチェックし、ロゴ・シールを貼ってから会場に並びます。

(写真左)本にはすべてロゴを貼付。せっかく無償で集めた本が転売されないための処置だそう。/(写真右)ポスターには、「本と情熱を、地域の人々と無料で交換しましょう」と書かれています。

会場に並んだ本は誰でも自由に持っていくことができます。家で不要になった本が、こうしてさまざまな人の手に回っていくのです。

本はガイドブックや辞典を除いて、どんなジャンルも受け付けています。約2000冊のストックがあるため、パリ市が貸してくれている場所に保管。本を会場に運ぶときは、やはりパリ市が車を貸してくれているそうです。

4月初めのある土曜日、「シルキュル・リーヴル」が始まった場所でもある20区のヴァンセンヌ大通りの交換所を尋ねてみると、まだ肌寒い朝だったにもかかわらず、次々と人が集まってきました。

朝市の帰りの人、通りがかって興味深くのぞいていく人など、さまざま。ショッピングカートにぎっしり本を詰めて持ってきた女性もいました。

20区のヴァンセンヌ大通りの歩道では、第一土曜日に開催。メリーゴーランドとお菓子の屋台に囲まれて、いつもお祭りのような雰囲気です。

顔見知りや近所の方が集まって、あちこちで立ち話も始まります。「2時間ずっとここにいて、おしゃべりしていく人もいるんですよ」とボランティアのメンバーは笑っていました。ここでは、1日になんと300冊も持ち出されているそうです!

本を探す目も真剣。ここで顔見知りになった人もたくさんいるそうです。

開催場所は、通りの一角や広場、公園など、野外の公共の場ばかり。公民館などで行う場合もありますが、閉じられた空間より野外の方がより活気があるからだそう。通りすがりの人も寄りやすい環境です。もちろんパリ市や区の許可を得ています。

開催日は1カ所につき毎月1~2回、土曜日や日曜日の午前が中心で、1時間30分から2時間程度。

高校に近い場所であれば、学校の昼休みにあわせて開いたり、夜に開催する地区もあります。

8月以外は冬も開いていて、開催日や時間はサイトで案内しています。12月にはクリスマス・ツリーを飾ってお祭りムードを演出したりと、ボランティアの方々も楽しんでいるようです。

20区のヴァンセンヌ大通り会場のボランティアの皆さん。

ベルトリュスさんたちの心配事は、本の回収を行っていないので、重い本を会場まで持参してもらわなければならないこと。

しかし、10年間継続していることや会場の活気をみると、まったくネックになっていないようです。「不要になった本を有効利用できる」「さまざまな本を無料で楽しめる」という利点があるだけでなく、地域のコミュニティーや人と人の絆が自然と育まれてきたことが、成功の利用なのでしょう。

パリでは、共同ビルの郵便受けの上に不要な本を置いておいて、住民に自由に持っていってもらうという取り組みをしているところもあるそうです。
たくさんの方が住んでいるマンションなら、たとえば理事会や自治会の方が中心となって同様の取り組みを行なうことができれば、本も無駄にはなりませんし、交流づくりにも役立つかもしれませんね。

Circul’Livre
http://circul-livre.blogspirit.com/

2013/05/07

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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