王室を灯した荘厳な香り-世界最古のキャンドル・メーカー

前回の「ディプティック」に続いて、今回は世界で最も古いロウ製品メーカー「シール・トゥルードン Cire Trudon 」を紹介します。

サンジェルマン・デ・プレ地区にあるショップ。黒い外壁が重厚な雰囲気をかもし出しています。

壁に並んだカラフルなキャンドルが、黒いガラス入りキャンドルと対照を成しています。

同社の歴史は1643年、クロード・トゥルードンによって始まりました。パリ市内に食料品店を開きながら、油脂やロウソクを一般の家庭や教会に販売していました。ルイ14世が即位(1654年)した頃、製造工場を設立。跡を継いだ息子のジャックは1687年から、ベルサイユ宮殿にキャンドルを納めるようになり、1719年から王立キャンドルメーカーとなります。18世紀にはさらに会社は拡大し、フランス中の主な教会のためにキャンドルを作るようになりました。

フランス革命後も、ナポレオン1世をはじめとする帝政期、トゥルードンはキャンドルを納品。ナポレオン一世は、息子の誕生に際して贈ったキャンドルも、同社のものだったそうです。

さらにガスや電気が普及する19世紀に入っても、クオリティーの高さが世界で認められ、フランスを代表するキャンドル・メーカーとして現在に続いています。2006年に話題になった映画『マリー・アントワネット』でも、トゥルードン製のキャンドルが使われました。

現在ももちろん、教会にキャンドルを納めています。たとえば、ルーブル美術館からも近いサン・ロック教会は1643年から、トゥルードン製のキャンドルが灯されているとか。

ショー・ウインドー。真っ白なシンプルなキャンドルが、こんなに印象的な装飾になっていました。

キャンドルは一つ一つ、鐘形のガラスをかぶせて陳列。

製造方法は企業秘密で公開されていませんが、すべて植物成分で作られています。主な材料は大豆と、ココヤシの果実の胚乳を乾燥したコプラだそうです。さらに国際的な環境保護団体グリーンピースが発表している有害物質はもちろん、重金属、殺菌剤もいっさい含まれていません。

このように安全性まで徹底的に考えられたキャンドルは、深い色合いのガラス容器にゴールドのラベルを貼った厳かな装い。400年近くも前から王室や教会を灯してきた老舗としての重さを感じさせます。

カメオを配したキャンドル。

スプレー式もクラシックなフォームで。容器はイタリアの職人による手拭ガラス。

フレグランスは、ナポレオン皇帝下の戦いの熱気や休憩時の安らぎを表現した「アンピール」、ルイ15世の寵愛を受けたポンパドゥール夫人をイメージした官能的な「ラ・マルキーズ」、柑橘やオレンジの木にバニラや杜松(ネズ)を組み合わせてオリエンタルな雰囲気をかもし出す「オダリスク」、マリー・アントワネットが愛した花々と田園をとじこめた「トリアノン」、ラベンダーやオレンジの香りが、ジョルジュ・サンドの小説に登場する主人公やパリの洗濯女たちを思い起こさせる「マノン」など。フランスの歴史や芸術などからインスピレーションを受けた19種類です。

さらにマリー・アントワネットやナポレオンなど、歴史上の人物をかたどったキャンドルや、「赤ずきん」「シンドバッドの冒険」といった童話とのセットもありました。

ルイ14世もマリー・アントワネットも愛用したというトゥルードンのキャンドル。マンションの部屋で灯したら、時空を超えた想像の世界が広がるかもしれませんね。

Cire Trudon
78 rue de Seine, 75006 Paris
01 43 26 46 50
http://www.ciretrudon.com/

写真提供:© Cire Trudon

2012/11/29

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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