フランスの集合住宅の未来を考える~「新しい福祉住宅」展~

昨年3月の「パリの『21世紀型』集合住宅とは?」でお伝えしたように、パリ市内には、新しいコンセプトのアパルトマンが増えています。その多くが、低所得者層向けの住宅でした(フランス語でロジュモン・ソシオー Logements sociaux)。住宅問題が大きな課題となっているパリをはじめとする大都市では、現在もこうした住宅の建築が進行または計画されています。
現在、パリ16区にある建築・文化財博物館では、福祉住宅をテーマにした2回めの展覧会『Vers de nouveaux logements sociaux(新しい福祉住宅へ向かって)』が開かれていて、さまざまなプロジェクトが紹介されています。

16の住宅

パリをはじめパリ近郊の町やボルドーなどで計画されている16の住宅を、模型や写真を使って紹介しています。

 

テレコパージュTélescopage

パリ東部に位置するシャンピニ・シュール・マルヌ市に今年完成予定の“テレコパージュTélescopage”。「衝突」「融合」という意味で、町に存在する建物や家を組み合わせているとのこと。<建築:Edouard François avec karine Sallière Trayssac>

 

ミルフィユMillefeuilles

不規則な向きで各階が重なった様子から、パイ菓子と同じ“ミルフィユMillefeuilles”と名づけられています。パリ12区で2007年から建設がスタート。土地面積は4000㎡で、9階と12階建ての2つの建物があり、62のアパルトマンが入居。広いテラスが特徴で、地上階のテラスは住民共同スペースの予定。<建築:Hamonic +Masson>

 

ア・ラ・メゾン A la maison

パリ西部のビジネス街の一部になっているクールヴォワ市に2010年に建設された『ア・ラ・メゾン A la maison(家で)』。地上階をのぞいて、1階に2軒のアパルトマンが入居していて、商店1軒、共有ホール、地下にパーキングを備えています。外側は壁で囲まず、通路に。ぽこぽこと飛び出した白いボックスの部屋は、建物にリズム感を与えるのと同時に、限られた面積のなかで最大のスペースを使う工夫。<建築:KOZ Architectes>

146のアパルトマンが入居

フランス第2の規模を誇る都市リヨンの例は、都市開発が進むコンフリュアンス地区にある“アンバレEmballés”(包まれた)。5階と6階部分をつなげた2つの建物で構成されていて、146のアパルトマンが入居。<建築:Winny Mass( HVRDV), Pierre Gauthier , Manuelle Gautrand, Emmanuel Comabarel (ECDM), Eric Van Egeraat >

このほか、第一回の展覧会で紹介したプロジェクトの進行状況も展示されていました。

自然との調和

世界で活躍する妹島和世さんと西沢立衛さんの建築ユニット「 SANAA(サナー)」は、パリ16区に建設予定の“アンティーム・コンヴィクションIntime Conviction(内的確証)”を設計。曲線を描く真っ白な建物デザインは、内側と外の自然との調和を図って、かつひとつのアパルトマンが2つの方角に向くという利点もあるそう。

これらの住宅は、都市開発の中での位置づけや、周辺の住居との調和、環境への配慮を模索しながら設計されています。住民同士の交流を促すため、共有スペースや通路を設けているのも、近年の都市住宅の傾向といえるかもしれません。福祉目的であってもなくても、どの都市であっても、これからの住宅には同様の考えやコンセプトが求められていくはずです。

また、同展が開かれている建築・文化財博物館では、中世時代から現代までのフランスの建築の歴史を、複製や模型を見ながらたどることができます。建築を学んでいなくても楽しめる内容ですし、館内からはエッフェル塔も一望できるのも得した気分になります。パリのアパルトマンの歴史も、模型とともに展示されていますので、別の機会に紹介したいと思います。

“Vers de nouveaux logements sociaux”
Cité de l’Architecture et du Patrimoine
場所:1 place du Trocadéro et du 11 novembre, 75116 Paris
開館時間:11時~19時(木曜~21時)
閉館:火曜
一般入場料:常設展8ユーロ、特別展8ユーロ
※展覧会の終了日は未定

2012/04/06

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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