著名人が暮らしたパリのアパルトマン(その2) ウジェーヌ・ドラクロワ

『民衆を導く自由の女神』などで知られるウジェーヌ・ドラクロワ(1798年~1863年)は、19世紀ロマン主義を代表する画家。パリに生まれ、パリ市内の複数のアパルトマンに住んでいましたが、パリ6区サンジェルマン・デ・プレ界隈にある、終の棲家となったアパルトマンとアトリエは、国立美術館として公開されています。

芸術家や哲学者が集った知的エリア、サンジェルマン・デ・プレ

サンジェルマン・デ・プレは、「カフェ・ド・フロール」「ドゥ・マゴ」といった有名なカフェが軒を連ねる地区。ジャン=ポール・サルトルやシモーヌ・ド・ボーヴォワールが中心となった「実存主義」という哲学思想のメッカだったことでも有名です。現在は有名ブランドのショップも軒を連ねていますが、いまなお知的で文化的なイメージが漂う地区です。

ドラクロワが、1857年から逝去するまで暮らしたアパルトマンは、サンジェルマン・デ・プレ駅の裏側にある、小さな広場に面しています。17世紀に建築されたといわれる建物の2階(フランス式1階)でした。それまではパリ北部の9区に住んでいましたが、病を患っていたドラクロワは、礼拝堂の装飾の注文を受けていたサン・シュルピス教会により近い場所に、引っ越してきたのです。

道路側の美術館入り口は、小さな看板があるだけ。隣はシックなインテリアショップ「フラマン」。

道路側の美術館入り口は、小さな看板があるだけ。隣はシックなインテリアショップ「フラマン」。

アーチ状の天井をくぐって、美術館の入り口に向かいます。

アーチ状の天井をくぐって、美術館の入り口に向かいます。

ドラクロワが愛した風景、小さな中庭を望むアパルトマン

石畳の庭から木の階段を上ると、美術館の受付があり、居間、寝室、図書室の3部屋が見学できます。マホガニーの家具でそろえられた図書室には、アトリエに続く階段があり、アトリエでドラクロワに会いに来たお客様の待合室としても使われたそうです。

重厚な家具が置かれた書斎

重厚な家具が置かれた書斎。

アトリエと書斎には、ドラクロワのパレットも展示されています。

アトリエと書斎には、ドラクロワのパレットも展示されています。

ドラクロワが最期を迎えた寝室

ドラクロワが最期を迎えた寝室。

図書室からいったん外に出て、階段を数段下りると、アトリエです。高い天井から自然光がさし、木の床は、歩くたびにギシギシと音をたてます。ドラクロワの作品のほか、作品の重要なモチーフにもなったモロッコでの旅で持ち帰ったオブジェも展示されています。

天井が高いアトリエ

天井が高いアトリエ。

アトリエを出て、さらに階段を下りると、中庭に。アトリエの窓からも見える小さな中庭は、ひとつの“作品”といえるほど、美術館にとっても重要な部分。というのも、ドラクロワがこのアパルトマンを選んだ理由が、この中庭の存在だったから。ドラクロワ自身、「私の小さな庭の眺めと、快いアトリエの様子は、いつも、喜びの気持ちをもたらしてくれる」と書き残しているそうです。庭にはベンチが置かれていて、ここで読書をして過ごす見学者の姿もありました。豊かな色彩の作品が多いドラクロワは、四季さまざまな姿を見せるこの庭からも、インスピレーションを得たのかもしれません。

中庭から見たアトリエ。窓の高さから、天井の高さがうかがえます。

中庭から見たアトリエ。窓の高さから、天井の高さがうかがえます。

寝室の窓からも、中庭とアトリエが見えます

寝室の窓からも、中庭とアトリエが見えます。

この建物の違う階には、もちろん今でも一般の方が住んでいて、それぞれのアパルトマンの窓から、中庭が望めます。パリの真ん中にいながら、静かで緑豊かなスペースとともに暮らせるアパルトマンが、パリにはまだ健在なのです。

Musée national Eugène Delacroix
ウジェーヌ・ドラクロワ国立美術館
6 rue de Furstenberg, 75006 Paris
開館時間:9時30分~17時
休館日:火曜、1月1日、5月1日、12月25日
入館料:5ユーロ
http://www.musee-delacroix.fr

2011/10/14

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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