パリ生まれの「隣人祭り」に学ぶ、マンション内ご近所づきあいの秘訣

先日のコラム「ご近所づきあいのルール」の中でもふれたように、パリでも、騒音などが原因で、隣人間の問題が発生することがあります。同時に、隣人間のコミュニケーション形成の難しさについても、ずいぶん前から懸念されてきました。この問題は都市部のパリにかぎらず、フランス全土に広がっているようです。

「隣人祭り」のポスター。運営協会は、宣伝や飾りに必要なポスターや風船、Tシャツなども配布しています

「隣人祭り」のポスター。運営協会は、宣伝や飾りに必要なポスターや風船、Tシャツなども配布しています

世界34ケ国で開催!パリで生まれた「隣人祭り」

隣人同士のコミュニケーションの場をつくろうと、1999年から、毎年行われているお祭りがあります。その名も、「フェット・デ・ヴォワザン=隣人祭り」。毎年5月の第4木曜日に開催され、今年も5月26日に、12回目のお祭りが各地で開かれました。私は今年は、“発祥地”であるパリ17区のお祭りにおじゃましてみました。

「隣人祭り」は、「イムーブル・アン・フェット(Immeuble en Fête)」、つまりアパルトマンが集まる「集合住宅のお祭り」とも呼ばれます。祭りといっても、集合住宅の中庭や近くの広場などに、それぞれ料理や飲み物を持参して、おしゃべりをするというシンプルなもの。だからこそ、大きな準備も必要なく、だれもが気兼ねなく参加できるのです。

お祭りの様子、共同ビルの1階にあるカフェのテラスと歩道にて17区のお祭りは、集合住宅の1階にあるカフェのテラスと歩道にて、20時にスタート。手作りのお菓子やワインボトルなどを片手に、次々と人が集まってきます。再会を喜んだり、友達を紹介しあったり、次々と人と人のつながりが広がっていきました。「子供の学校が一緒よね」「おいしいパン屋さんを知ってる?」「このタルト、誰が作ったの?」などなど、ご近所ならではの会話もはずみます。

「人々の交流をつなぎ、孤独や寂しさを断ち切るために」世界に広がる創始者の思い

「隣人祭り」の創始者は、パリ17区の助役であるアタナス・ペリファンさん。1990年、若き議員であったペリファンさんは、友人たちと「パリ・ダミ(Paris d’Amis)=友達のパリ」という非営利協会を結成。経済的に困難のある家族や動くのが難しい人たちを支援し、仕事を斡旋したり、子供を預かったり、家族がいない人のためにクリスマスパーティーを開いたりしていたそうです。そして1999年、地元のパリ17区で初めての「隣人祭り」を開催。1万人が参加し、大成功に終わりました。

創始者のアタナス・ペリファンさん(左から2番目)と、パリ17区の区長(右)ら。

創始者のアタナス・ペリファンさん(左から2番目)と、パリ17区の区長(右)ら。

そして翌年、全国市長会の協力を得たことで、フランス全土に拡大。2003年にはヨーロッパの国々、2008年にはヨーロッパ外の国も参加。2011年の参加国は34にのぼり、ヨーロッパ中で120万人が参加。フランス国内だけで20万にのぼるイベントが開催されたそうです。

地道な活動からスタートして、「隣人祭り」を世界規模にまで発展させたペリファンさん。原動力となったのは、同じ建物のなかで孤独死した老女の発見者になってしまったという、悲しい彼自身の体験からでした。

お祭りの様子「『隣人祭り』が、近所の人たちと気軽に出会える場であると同時に、孤独や寂しさを断ち切る第一歩になってほしい。これだけの成功を収めることができたのは、社会階層や共同体といった垣根を超えて、人々が社会的なつながりを求めているという証だと思います」と話します。今年は、老人ホームと職場における「隣人祭り」もスタートさせました。

「隣人祭り」以外の場で社会的連携の場をつくりたいと、ペリファンさんは2009年、「ヴォワザン・ソリデール(Voisins Solidaires)=連帯する隣人」という非営利協会も設立。活動のひとつとして、今年5月、パリ17区の集合住宅の管理員さんを集めてパーティーを開催。感謝状を贈呈したそうです。「管理員は影の存在ですが、住民を結びつける重要な存在でもあります」と同協会のメンバーは話していました。

フランスには「連帯・社会的団結省」という省庁があり、国を挙げて、社会的な連結の強化、とくに弱者への支援策を模索しています。今年は、ロズリーヌ・バシュロ=ナルカン大臣が、「隣人祭り」が社会に果たす役割についてのレポートをペリファン氏に依頼しており、政府も注目する存在となっています。

プレス発表も、連帯・社会的団結省にて行われました。挨拶するロズリーヌ・バシュロ=ナルカン大臣と、ペリファンさん。

プレス発表も、連帯・社会的団結省にて行われました。挨拶するロズリーヌ・バシュロ=ナルカン大臣と、ペリファンさん。

日本でも開催されている「隣人祭り」

2008年には日本でも初めての「隣人祭り」が開催されています。今年は、インターネット・ビデオで、パリの「隣人祭り」事務所と宮城県仙台市を生中継で結び、挨拶を交わし、乾杯しました。「今こそ隣人の力や連帯を必要としている時なのではないでしょうか。距離は離れていますが、日本への気持ちを伝えたかったんです」とペリファンさん。寄り添ってくれる“隣人”の輪は、距離に関係なく、世界中に広がっています。

2011/06/14

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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