家族の時間と一人の時間を両立する、パリジャン夫婦のライフスタイル

共働きが多い国、フランスならではの部屋選びの条件とは

2009年の統計ですが、フランスでは、子供をもち、夫またはパートナーと暮らしている女性のうち、71%以上が仕事を持っているそうです。育児休暇などの労働条件がより整っているからだと思いますが、多くの女性が、自分のための時間や家族と過ごす時間を、上手に調整しながら、仕事を続けています。

居間にて、アドリエンヌさんと、ジャン=イヴさん、ルイーズちゃん

居間にて、アドリエンヌさんと、ジャン=イヴさん、ルイーズちゃん

33歳のアドリエンヌ・ムニエさんも、子育てをしながら仕事を続ける女性の一人。パリ南部に位置する静かな住宅街にある15区のアパルトマンに、2007年7月から、パートナーのジャン=イヴさんと、昨年6月に生まれたルイーズちゃんとともに暮らしています。

2人が共同生活を始めようと、アパルトマンを探し始めたとき、それぞれ絶対に譲れない、細かい条件があったそう。

まずアドリエンヌさんは、「テラスがあること」「バスルームに浴槽があること」。仕事から解放された時には、ゆったりと自分の時間を過ごしたいという彼女ならではの希望です。そして大のジャズ好きでステレオにもこだわるジャン=イヴさんは、「ステレオが置けるような広い居間。できれば音響のために長方形」「車通勤のため、駐車場があること」。さらに2人の共通の条件が、「寝室が2つある」ことでした。離れて暮らしているジャン=イヴさんの長男ギエム君が時々遊びにやってくるとき、独立した部屋に寝かせてあげたいと思ったからなのです。

そして、すべての条件を満たし、駅から徒歩5分という好立地の今のアパルトマンがみつかって、入居。15区は「家族が多く住む地区で、オフィス街でもないので週末もにぎやかな地区」といいます。

パリ市営公園の中にある共同ビルの入り口。市営公園が、自分の庭のよう!

パリ市営公園の中にある共同ビルの入り口。市営公園が、自分の庭のよう!

たくさんのこだわりと、居心地のよさが同居する空間に

お気に入りのつまった居間

玄関を入って右側、ジャン=イヴさんのCDがぎっしり並んだ本棚が置かれた短い廊下を通って、居間に。ジャン=イヴさんのステレオも、長方形の居間の端に、堂々と置かれていました。「居間は南むきで、日当たりがいいの」とアドリエンヌさん。今ではもちろん、ルイーズちゃんの遊び場にもなっています。

写真左:友人の絵や思い出の品を飾った日当たりのよい居間/写真右:居間の反対側、ジャン=イヴさんが大切にしているステレオ。ジャズCDは、日本の会社からインターネットで購入することも多いそう。ルイーズちゃんの遊び場も確保されています。

写真左:友人の絵や思い出の品を飾った日当たりのよい居間/写真右:居間の反対側、ジャン=イヴさんが大切にしているステレオ。ジャズCDは、日本の会社からインターネットで購入することも多いそう。ルイーズちゃんの遊び場も確保されています。


開放感のあるテラス

居間からテラスに出ると、正面の共同ビルが見えますが、中庭をはさんでいるので、圧迫感はまったくなく、とても静かです。このテラスでは、天気のいい日はお茶を飲みながら2人でおしゃべりしたり、読書をしたり、友人とアペリティフ(食前酒)を楽しむことも。

写真左:テラスでは、友達とアペリティフ(食前酒)を楽しんだり、お茶を飲むことも/写真右:テラスから見える中庭

写真左:テラスでは、友達とアペリティフ(食前酒)を楽しんだり、お茶を飲むことも/写真右:テラスから見える中庭


アンティーク机をしつらえた書斎スペース

居間のさらに奥には、2段の階段を挟んで、もうひとつの居間があります。ここはジャン=イヴさんのアンティークな机を中心に、パソコンや本などを置いて、仕事部屋として使用。「家の中に小さな階段があるのが、おもしろいでしょう。この階段も備え付けの低い白い棚も、ジャック・タティの映画みたいで気に入ってます」

小さな階段の奥にあるもうひとつの居間。白い家具は備え付け。

小さな階段の奥にあるもうひとつの居間。白い家具は備え付け。

書斎机は18世紀製のアンティーク

書斎机は18世紀製のアンティーク


2つの役割を持つ子供部屋

玄関の正面にバスルームがあって、その左側に、寝室があります。2人の寝室の横にあるギエム君の部屋には、ルイーズちゃんが誕生してから、ベビーベッドも加わりました。スペースの問題は、ギエム君のベッドをソファベッドに替えて、不要なときはたたんでおくことで、解決。

写真左:二人の寝室/写真右:ギエム君の部屋

写真左:二人の寝室/写真右:ギエム君の部屋


風の抜ける、明るいキッチン

キッチンは、玄関の左側に。階下にはパリ市営の公園があり、窓からはいつも明るい光が差し込みます。アパルトマンの両側に窓があるので、風通しも抜群です。

キッチン。食事はここで。

キッチン。食事はここで。

住民だけがアクセスできる、素敵な共用部の存在

住み始めてから、うれしいサプライズもありました。住民だけが鍵を渡されて、アクセスできる屋上があり、パリの街並みが一望できるのです! 「エッフェル塔の花火を見たり、誕生日会の夜の最後をみんなで過ごしたり。贅沢な“部屋”でしょ?」。パリには、こうした屋上や中庭といった共同スペースがあって、小さくても、日常生活を豊かにしてくれる気がします。たいていは外からは見えないので、住民だけの秘密の場所といえます。

こちらのアパルトマンが入居する共同ビルは、70年代の建築で、パリでは「モダン」なアパルトマンに入ります。外から見ると、半円形のような形をしていて、同じ敷地内に、さらに2つの共同ビルが建っています。地上階(日本式の1階)には住居はなく、スーパーマーケットや薬局など商店が入店。当初は映画館もあったとか。つまり、ビルを出なくても生活必需品が入手できるような、ひとつのコミューンをイメージして、建てられたビルなのだそうです。人懐っこい2人は、近所の商店に顔なじみも多いそう。

日々仕事をこなしながら、家族で過ごす時を大切にして、それぞれのプライベートな空間も尊重する暮らしを、実現している2人にみえました。

2011/05/24

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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