「狭い部屋を上手に使いたい」「バスルームを改装したい」といったインテリアの悩みがあっても、建築家やインテリアデザイナーにいきなり頼むのは敷居が高いし、誰に相談していいか分からない、ということが多いのではないでしょうか。インターネットでインテリアやリフォームのヒントや手作り家具のアイデアを見つけても、思った以上に難しかったり、時間がかかったり、なかなか進まないのも現実です。
そんな悩みを解消しようと、2人の建築家、ベルナール・ヴィレさんとオドレー・ロシェさんが今年1月に「P’tit Building(プティ・ビルディング)」を創設しました。

創設者のベルナールさん(右)とオドレーさん(左)。
「プティ・ビルディング」は、建築会社やインテリアデザイナー事務所ではなく、人と人を結ぶプラットフォームであることが特徴です。「大切にしているのは、出会いと分かち合いです」とベルナールさんは話します。
相談者はまずホームページで登録。相談したい内容や時期、おおまかな予算を記入した後、北欧風や田舎風、ヴィンテージといったスタイルが異なる8枚のインテリアの写真から、好みのスタイルを選択。ベルナールさんとオドレーさんが内容や好みを確認して、もっとも適切なアドバイザーを決定します。2人が担当することも多いそう。

ベルナールさんが手がけたワンルーム・マンション。狭い部屋を有効に使うためのインテリア例。
©Bernard Viret /P’tit Building
相談にのってくれるアドバイザーは“Voisins”(ヴォワザン、隣人の意味)と呼び、現在すでに約100人が登録。パリだけでなく地方にも広がっていて、ベルギーからも申し込みがあったそう。
インテリアなどのプロは登録者の3分の1程度で、残りは一般の人。一般の人とはいえ、アパルトマンのリフォームやインテリアデザインをすべて自分で行った人や、インテリアデザインの勉強をしたことがある会社員など、日曜大工の経験が豊富でインテリアのセンスのある人ばかり。オーガニックで野菜を栽培している庭園デザイン専門家もいて、ガーデニングの相談にものっているそうです。
現在、サイトのブログでプロフィールの紹介を開始しています。今後は、相談する人がインテリアの趣味が似ているヴォワザンを選ぶことができるように、プロフィール紹介をますます増やしていく予定です。

キッチンのリフォーム例。ブルーを効果的に使うことで、がらりと雰囲気が変わりました。©Bernard Viret /P’tit Building
相談を受け付ける内容は、大規模な工事や建築、水道や電気といった専門技術を必要とする作業をのぞいた、家に関することすべて。ベルナールさんは「たとえばバスルームをリフォームしようと考えたとき、タイルやペンキはどこで、どんな種類を買ったらいいか、メーカーはどこがいいのか、道具は何が必要なのか、壁は壊して大丈夫なのか、といった多くの疑問が出てくるんです。こうした悩みに対して“ヴォワザン”は、経験から得たアイデアや情報を提供し、必要であれば大工作業を手伝ったり、さらに専門家を紹介したりします。現代は情報があふれていて、選ぶことも難しいので、時間の節約にもなります」と話します。ペンキ塗りや家具作りも、経験豊富なヴォワザンと一緒に作業すれば、一人でやるよりも素早くできるでしょう。
壁をつくらなくてもカーテンをかけるだけで仕切ることができたり、家具や壁の色を変えるだけで部屋の雰囲気が変わったり、収納棚をつくるだけで整理ができたりと、おおげさな工事をしなくても、リフォームができる場合も多いそう。慈善団体が運営する古道具店を利用すれば、予算も抑えることもできます。インテリア雑誌に載っているような部屋をめざすわけではなく、現実の悩みに現実的に応えることも、プティ・ビルディングの趣旨なのです。変わったところでは、バーベキューセットの製作や猫の家づくりといった依頼もあったそうです。
料金は1時間15ユーロと、わかりやすい設定に。「初めてのアポイントは、1時間あれば十分に実りある話ができます。アポイントが終わるとお茶やお酒を出してくれる方もいて、和気あいあいとした雰囲気なんです」とオドレーさん。さらに工事が必要な場合は、予算の範囲で収まるように、職人や専門家を紹介して進めていきます。
開設から半年足らずですが、予想以上の反響に驚いているそうです。ベルナールさんとオドレーさんは「今後はさらにヴォワザンを増やしていきたいですね。将来的には1つの通りに1人“ヴォワザン”がいて、文字通り隣人が相談にのってくれる環境をつくれたら」と話していました。
P’tit Building
→http://ptitbuilding.com/
2016/07/01