パリで大規模な再開発プロジェクトが決定!22カ所のプロジェクトがパリを変える

パリの大規模な再開発計画が動き始めました。

2014年11月にパリ市長が発表した「Réinventer Paris(レアンヴァンテ・パリ)」プロジェクトで、市有地を中心とした23カ所について開発計画を公募。2015年1月までに815件の応募があり、昨年夏に75件を選考。そのうち22カ所について、今年2月、国際コンペの“勝者”が発表されました。

再開発の対象となる場所は10の区にまたがって、駅の跡地や旧変電所、公共浴場、15世紀や17世紀に建てられた邸宅、現在の安全基準に適していない1960年代の建物、更地など、土地や建物の性質もさまざまです。

いくつかの候補地には、パリ市が定めた条件が提示されていました。たとえば、「住宅を必ず含む。うち30%は社会住宅であること」「住民が集まれるプロジェクトを含むこと」「幼稚園をつくる」など。

このコンペのユニークな点は、建築家やプロモーター、緑地や環境の専門家といった関係者とともにチームをつくり、プロジェクトを提案することを課したことだそう。また審査員として、人類学者や数学者、微生物学者といった建築以外の専門家も混じっていました。

パヴィヨン・アルセナル(パリ建築博物館)で5月8日まで、上位3件のプロジェクトが紹介されていました(もし選ばれたプロジェクトが何らかの理由で遂行できない場合は、次点のプロジェクトが採用されるとのこと)。週末に行われるガイド付きツアーに参加したところ、幅広い年齢層が大勢集まっていて、パリ市民の関心の高さを感じました。

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プロジェクトの詳細や完成図、模型などが展示されていました。

それでは、選ばれたプロジェクトをいくつか紹介します。(写真はすべてパリ市提供 ©Mairie de Paris )

4区 MORLAND

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現在パリ市や国の機関が入居している、セーヌ川に面した高さ50mのビル。住居やオフィス、レストランなどが入居する混合施設になる予定です。8379 m²の広さを誇るセーヌ川沿いの土地の再開発は、今回のプロジェクトのなかでも注目されていた場所のひとつです。

パリ市の条件は、66人が入れる託児所と5000㎡の社会住宅を含むこと。選ばれたプロジェクト“Mixité Capitale”のコンセプトは、時代にあった開放的な建物。既存のビルに新しい建物を加えながら、住居やオフィスのほか、プール、ホテル、ユースホステル、フィットネスクラブ、文化スペースなどが入る予定。パリのすばらしい眺めが見られる屋上も一般開放し、最上階にはバーやレストランもつくられるそう。パリ市民やパリを訪れる人々が憩う、新しいスペースとなるかもしれません。

17区 PERSHING

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パリ17区と隣町ヌイイ市にかかる環状道路をまたぐように、施設が建設されます。

現在、バスの発着所と大型バスの駐車場になっていて、発着所と駐車場を残し、30%の社会住宅を含む住居を建設することが課されていました。

コンペを勝ち取ったのは、藤本壮介建築事務所とパリのNabak Rachdi, Oxo Architectes が共同で提案した“Mille Arbre(ミル・アルブル)”。「1000本の樹」という名前が示すように、地上と屋上に樹々を植えて、自然と建築を融合させています。逆ピラミッドのビルの形は、地上を走る車の騒音から住民を守るために考慮された形だそう。住宅は最高の眺望が得られる最上階につくられるほか、誰もが入れる公園やレストラン、託児所や幼稚園、オフィス、ホテルなどが建設される予定です。

13区 ITALIE

r007パリ13区のイタリー大通りにある540㎡の土地が使われます。

現在、公共地で、パリ市の条件は「商業や革新的なサービスに関する開発計画であること」。

選ばれたのは、L35 Architeosが提案する 7000㎡におよぶ“Italik”プロジェクト。審査員が評価したのは、住民の意見を反映したプロジェクトだったからだそうです。外壁は木材でつくられ、1100㎡の屋根は緑化されます。緑化された屋上は、緑化の専門会社Topagerと幼稚園が共同で運営する予定。また若いクリエーターの会社や農産物の直売所などが入店します。

19区 OURCQ-JAURÈS

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使われなくなった線路の横に位置する 1371 m²の更地。パリ市は、市民のための農場として再活用するプロジェクトを募集していました。

“Ferme du Rail”プロジェクトは、園芸を学ぶ学生や社会的参入をめざす人たちが中心となり、近隣遊民とともに、農作物の栽培や販売、それを使ったレストランの経営などを行い、短サイクルの流通と生物多様性の保全をめざそうというもの。19区の住民の参加も見込んでいるそうです。

このほか、20世紀初頭に変電所として建設された11区の建物は映画館に改修され、1634年に建築された個人邸宅は若いファッションクリエーターたちの発表や期間限定ショップの場に。また1475年にパリ大学医学部の校舎として建てられ、歴史的建造物に指定されている5区の建物は、さまざまなプロジェクトに関係するメセナや協会、ボランティアらが出会い、学び、情報収集できる場に改装される予定。コンセプトもユニークな場所が誕生しそうです。

22カ所を同時に開発またはリノベーションするという大規模なプロジェクトは、これまでパリでも他の都市でも例は少ないのではないでしょうか。全体的に、都市生活と自然との調和、住民や市民との交流を考慮したスペースづくりなどが目立っていました。

報道によると、プロジェクトの総額は13億ユーロ以上。土地を売却したり長期間の賃貸を行うことで、パリ市に約6億ユーロの収入をもたらし、年間2000人の雇用が創出できる見込みといわれています。

今後の日程はプロジェクトにより異なりますが、大規模な17区の「ミル・アルブル」プロジェクトは2020年の完成をめざしているそう。5年後には、パリの風景や市民の住環境も、少し変わっているかもしれません。

2016/05/13

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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