メディアも注目!パリで実験が進む水耕栽培とアクアポニックス

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都市における農業の実験が、パリで進んでいます。これまでにも、ギャラリー・ラファイエット百貨店の屋上の菜園や、線路沿いに農園をつくったラ・ルシィクルリーの試みなどを紹介してきました。今回は、土壌を必要としないハイドロポニックス(水耕栽培)について研究を続けているアクアプリムール社代表のアニエス・ジョリーさんの取り組みを見学させていただきました。

アニエスさん。ヨーロッパ23カ国が集まるアクアポニックス研究会に、フランス代表として参加しています。

アニエスさん。ヨーロッパ23カ国が集まるアクアポニックス研究会に、フランス代表として参加しています。

アニエスさんは2014年4月から、パリ20区の高台にあるベルビル公園のパリ市立・空気博物館の中に“菜園”を設置しています。その前年にパリ市が、「革新的な緑化」プロジェクトを募集。アニエスさんのプロジェクトも採用され、研究をさらに進めるきっかけになりました。

また多くのメディアに紹介されたことで、1000人もの見学者が訪れたそうです。空気博物館は現在閉館していますが、アニエスさんはパリ市に家賃を払い、場所を借りて研究を続けています。

2014年はバジルやコリアンダーといったハーブからスタートし、同年9月からは中国野菜、2015年の春はイチゴを栽培していました。夏の間は気温が上がりすぎるために栽培はストップし、10月半ばから、マスタードと3色のフダンソウ(スイスチャード)の栽培を始めました。

当初アニエスさんは、魚の養殖を組み合わせたアクアポニックスを実践していました。「ラ・ルシィクルリー」でも紹介しましたが、魚のフンが植物の栄養素となり、水も浄化してくれるというシステムです。しかし、アニエスさんも出張で海外に出ることも多く、魚の世話に目が届かないため、現在は水耕栽培に絞っているそうです。

白い筒の中にポットが設置されています。

中に入ると、さんさんと太陽が注ぐ天井の高いガラス窓の前に、白い細長い筒が並び、そこには苗を植えた小さなポットがずらりと置かれていました。

ポットの中に入っているのは、土ではなく、一般の家庭菜園で使う泥の粒(赤玉土)。真ん中に水を入れたタンクがあり、白い筒の中へと水が通っています。循環システムなので、蒸発した分を足すくらいで、手間もほとんどないそうです。週に2~3回、液体の栄養素を入れて育てています。

 水に養液を注ぐアニエスさん。器具は、研究のパートナーで、水耕栽培の器具を開発しているEurohydro社が貸し出してくれているそう。


水に養液を注ぐアニエスさん。器具は、研究のパートナーで、水耕栽培の器具を開発しているEurohydro社が貸し出してくれているそう。

「最低限の水量と養液で育てられるので、経済的です。水が流れているとはいえ、器具も軽いので、作業も簡単です。さらに育つ速度も格段に速いんです」とアニエスさん。

同時に土でも同じ野菜を育てていますが、水耕栽培との差は一目瞭然でした。

 手前が、同時期から土で育てている苗。水耕栽培の方が早いことが分かります。


手前が、同時期から土で育てている苗。水耕栽培の方が早いことが分かります。

日々の手入れの簡単さに加えて、水耕栽培の利点のひとつが、根が見えること。植物の状態が確認できます。

 ポットをあげると根がみえます。赤いフダンソウは赤、黄色いフダンソウは黄色い根が生えています。


ポットをあげると根がみえます。赤いフダンソウは赤、黄色いフダンソウは黄色い根が生えています。

苗を植えて40日くらい経ったフダンソウ。

苗を植えて40日くらい経ったフダンソウ。

黒い管を通って、水が循環しています。

黒い管を通って、水が循環しています。

アニエスさんは来年、フランス北部ノルマンディー地方に水耕栽培ヤアクアポニックスによる“農園”を建築予定で、実験段階から生産の段階へと入るそう。「アメリカをはじめ、ヨーロッパでも大きな農園が誕生しています。最低限の水で栽培できるので、アフリカなど水資源が少ない国でも推進していきたいですね」と話していました。

水耕栽培は、一定の場所が必要とはいえ、器具はさまざまなモデルや大きさがあるそうなので、一般家庭でも十分に取り入れられます。手入れが簡単で生長が早いとあれば、まさに家庭菜園にぴったりといえそうですね。

Aquaprimeur
http://www.aquaprimeur.fr/

2015/12/04

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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