子供向けの人形劇で学ぶ、隣人とアパルトマンのあり方

共同住宅はその名の通り、さまざまな人が共同で住んでいる建物。異なるライフスタイルやリズムで生活する人たちの集まりです。そうしたさまざまなライフスタイルにあった住宅を考える人形劇が、子供向けに開かれていると聞いて、見学に行ってきました。

企画・上演しているのは、女性2人が運営する「PLUS+MIEUX création(プリュス・エ・ミュウ・クレアシィオン)」社。人形劇の上映のほかにも、6歳以上に向けた家やアパルトマンの模型作りキットを販売しています。

キットは、中世時代の城塞から30年代のアパルトマン、現代風デザインのアパルトマン、環境に配慮したアパルトマンまでと幅広く、時代と人間のライフスタイルの関係、建築や環境との関係を、自然に考えらえるようになっています。

私が鑑賞した人形劇は6歳から12歳向けで、会場は「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」にあわせてパリ市庁舎広場に建てられた「パヴィヨン・シルキュレール(Pavillon Circulaire)」。高さ3m、幅2.5mの4階建てのアパルトマンの模型が舞台となりました。

この日は子供たち9人が参加。

この日は子供たち9人が参加。

このアパルトマンの住民は11人。お風呂が大好きでバスルームで1日を過ごす若い女性アデル、新婚のモンテグラーヴ夫婦、夜間の仕事をしていて日中は寝ている男性、空を見るのが大好きな4人家族など、住民の紹介から始まります。

しかしアパルトマンが改装され、窓を含む外装が変わってしまったことから、住民たちに問題が生じてしまったのです。

 アパルトマンの住民たち。異なるライフスタイルの人々が、同じ建物で生活していることが説明されます。

アパルトマンの住民たち。異なるライフスタイルの人々が、同じ建物で生活していることが説明されます。

たとえば、編み物をしながら外を眺めるのが楽しみだった車いす生活のコメール夫人のアパルトマンは、窓が高い位置になり、車いすの高さでは屋外が見えなくなってしまいました。植物をたくさん育てている女性の部屋は、窓が小さくなり、自然光があまり入りません。

いったん劇が中断され、子供たちは、それぞれの住民にどんな外装がより適しているのか、意見交換が始まります。

 多様なタイプの窓が提案されます。プリュス・エ・ミュウ・クレアシィオン社のファニー・タッセルさんが子供たちの指南役。

多様なタイプの窓が提案されます。プリュス・エ・ミュウ・クレアシィオン社のファニー・タッセルさんが子供たちの指南役。

 子供たちは積極的に手を挙げて、新しい窓を選んでいきます。

子供たちは積極的に手を挙げて、新しい窓を選んでいきます。

小学生のグループ場合は、同じアパルトマンと住民を前提にして、実際に外装や内装を作るアトリエも開催するそうです。窓の形や位置は? すべてのアパルトマンやすべて階で同じ外装でいいの? 部屋によっても変えるべき? 壁の厚さや素材は? など、さまざまな課題にこたえながら完成させていくのだそうです。

すべてのアパルトマンの外壁が決まった後は、環境に優しいアパルトマンのキットを作成。紙製の集合住宅の屋根には、太陽光パネルが設置され、緑化もされています。

住民は人形劇と同じ住民ですが、みなエコな生活を送っています。お風呂が大好きなアデルは、ガラス瓶を再利用してバスルームの壁を作り、お風呂の水や雨水を浄化・再利用していたり、編み物が趣味のコメール夫人は絨毯の端切れを組み合わせてパッチワークにして床に敷き、燃料には木くずを使っていたり……。

エコ・アパルトマン作りのキットのパンフレット

エコ・アパルトマン作りのキットのパンフレット

建築や環境問題についてあらためて勉強するのはおっくうですが、今回の人形劇やキットづくりでは、大人にとってもためになる知識や知恵がありました。隣人とのお付き合いを学ぶまではいかなくても、共同住宅は多様な人々の集合体であることがほんの少しでも感じられるきっかけになりそうです。

2016/01/04

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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