[コミュニティ座談会3]防災、子供、高齢者に特化したコミュニティ

前回記事「参加したい!手作りの自主イベントがウケてる理由」では、楽しめるコミュニケーション面でのコミュニティを紹介しましたが、今回は、防災、子供、高齢者をテーマにした目的特化型コミュニティについてお話します。

今回の研究担当

平生進一氏 株式会社メックecoライフ 取締役社長。三菱地所の商品企画部長として数々の分譲マンションを手がけ、現在はメックecoライフ社でマンション開発企画、及び既存マンションの環境・デザインに関する研究・提案を行う。

三輪弘美氏 三菱地所レジデンス株式会社 ブランド・CS推進部 リーダー。株式会社メックecoライフを兼務。マンション開発企画を経験し、現在は「ザ・パークハウス」のブランディングと住まいのエコを中心とした研究・提案も行っている。

藤本奈美氏 マンション・ラボ研究員 株式会社つなぐネットコミュニケーションズ

イカ焼きの炊き出しや自前の防災ラジオまである「超・防災マンション」

藤本 今回はある目的に特化したコミュニティの可能性についてお話ししたいと思います。まずは、「超防災マンション」と呼ばれている神戸・加古川グリーンシティ。こちらは阪神・淡路の大震災以降、防災会の取り組みをスタートされ、その内容の濃さは半端ではありません。

三輪 「超」がつくほどものすごいんですね(笑)。

藤本 ええ、それは「すごい」です(笑)。当社でも以前取材しましたが、住民同士の交流と被災時の炊き出し訓練にも役立つイカ焼きパーティを開催したり、敷地内に井戸を掘ったり、マンション内にラジオ局を設けて防災ラジオを作ったりしておられます。(取材レポートはこちら)こうした防災活動を通して、それまでは知らない同士だった住民が、「元気?」と自然に声をかけるような人間関係ができたそうです。マンションの「防災」という、一致団結する目的があってこそ出来たコミュニティだと感動しました。

家庭の常備品の小麦粉を使って、早くすぐにおいしく作れるイカ焼きマシーン。1分30秒で2人前、30分で40人分の食がまかなえる。

家庭の常備品の小麦粉を使って、早くすぐにおいしく作れるイカ焼きマシーン。1分30秒で2人前、30分で40人分の食がまかなえるのだとか。

マンション敷地内に掘った手動組み上げ式イド。ふだんは、憩いの場や飲み水に、災害時には防災用水となる。

マンション敷地内に掘った手動組み上げ式イド。ふだんは、憩いの場や飲み水に、災害時には防災用水となる。

三輪 地震に対する防災、という明確な目的を持って全員一致で取り組んでいらっしゃるからですね。

藤本 ここでは、コミュニティ形成はすべて防災力を高めるためにあるんです。みんなでサッカー観戦や炊き出しもやる。なぜ?というと、それはすべて防災力に帰結するんです。

平生 本来の意味でのコミュニティというのは、大勢が集まって自助努力で一致団結しないと成し遂げられない、危機や困難を解決するために存在していたものだと思うんです。たとえば、江戸時代の村とか共同体って、川の氾濫を阻止する、戦いから自分の村や田畑を守るということで、結びつきの強いコミュニティを生みだしてきました。だから、このマンションが「防災」という目的で活動しているのは、理に適っていますよね。

藤本 大災害という状況で本当に助け合えるのは、知っている人の輪ですからね。加古川グリーンシティ防災会の理事の大西さんは、行政を頼りにしていないっておっしゃっていました(笑)。

平生 「防災だけはヤバイ、自分たちでやらないといけない」、そう思って立ち上がったんでしょうね。いやあ、防災マンションとはね。今まで考えていたコミュニティの枠がぐんと広がりました。

「無理せず」「楽しい」がモットー 加古川グリーンシティ防災会

加古川グリーンシティ防災会 ホームページはこちら

加古川グリーンシティ兵庫県加古川市に位置する大規模マンションの自主防災組織。多彩な防災活動で各方面から高く評価され、「防災功労者内閣総理大臣表彰」等数々の受賞歴をもつ。「無理せず」「楽しい」をモットーに自主的な防災に取り組む超防災マンション「加古川グリーンシティ」の成功には、居住者全員が加古川グリーンシティ防災会の会員という、全員参加型の自主運営が大きく起因する。詳細はマンション・ラボの紹介記事にて。

「超防災マンションが教える、防災コミュニティづくり成功の秘訣」
「超防災マンションはここまで備える!驚くべき対策を徹底調査」

防災を楽しく学ぶ! NPOが実施する子供のためのイベント

藤本 これはコミュニティから逸脱しますが、「防災」と「子供」を楽しくつなぐ活動を行っているNPOもあります。NPO法人・プラスアーツと美術家・藤浩志さんによる新しいカタチの防災訓練プログラム「イザ!カエルキャラバン」です。

『防災は楽しく学べ』イザ!カエルキャラバンの防災訓練プログラムとは

三輪 記事を拝見すると、ゲームやお祭りのイベントみたいですごく楽しそう。おもちゃの物々交換プログラム「かえっこバザール」というのもおもしろいですね。

「イザ!カエルキャラバン」水消火器で的あてゲームの様子。身の回りにあるもので設置台や的を作り、水の吹き出る消火器で的当てをするというもの。楽しみながら訓練ができる工夫は参考になります。

「イザ!カエルキャラバン」水消火器で的あてゲームの様子。身の回りにあるもので設置台や的を作り、水の吹き出る消火器で的当てをするというもの。楽しみながら訓練ができる工夫は参考になります。

藤本 このイベントのおかげで、防災訓練に参加しなかった若いファミリーも積極的に参加するようになったそうです。2005年の阪神・淡路大震災10周年事業では神戸市内7ヵ所10日間の開催で延べ7,000人 を集客しました。防災訓練は面倒くさい・時間がないという方も多いなか、子供と一緒に家族で楽しめるものにしたという発想転換が素晴らしいですね。

平生 確かに、家族で参加したいと思わせる魅力を備えているのは大きな魅力ですね。マンションのコミュニティ・イベントにもすぐ取り込めそうです。

マンションの高齢化に対応するコミュニティの取り組み

藤本 他には、居住者の高齢化に合わせて、マンションの形態を変えるべく取り組んでいるマンションもあります。たとえば、千葉県柏市の築30年の古いマンションでは、「ワンデーカフェ」といって、主にシニア層を対象とした交流イベントが好評だそうです。

週に2回程度、マンション内の集会室を使って、お茶やお菓子を用意して楽しく語りあえる場が提供されているというものなのですが、さらに毎回独自のテーマが掲げられていて。たとえばある回では、「写真展」と称して自慢の写真作品を持ち寄って展示し、品評会のようなスタイルにしたり。同じ趣味を持つシニア層同士の交流のきっかけにもなっているようですね。 高齢化社会に向かって、今後こうした有効活用事例は増えてくると思います。

平生 高齢化はマンションコミュニティにとっても大きなテーマですね。郊外や地方ではスーパーが近隣にないので、車がないと生活できなくなっています。多摩ニュータウンでは、空いたスペースに居住者のための街角レストランが絶対必要だと、東京大学の都市計画の専門家 大野秀敏教授が提唱されています。柏のマンションもそうですが、デイケアセンターまではいかなくても、高齢者に食事を提供する場をマンションの中に設けることや、そのサービスを提供するのも近隣の主婦を活用するなど、そうした活動に取り組まないと日本の郊外都市は持たないということですね。それも確かにひとつのコミュニティだと思います。

『シュリンキング・ニッポン―縮小する都市の未来戦略』 (鹿島出版会)

大野秀敏氏(建築家/東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)による著書。人口問題や環境問題を通して「日本が縮む」という現象を考察したもの。

三輪 しかも機能的なコミュニティですよね。サービスを受ける側と提供する側がお互いに利益をシェアできるんですから。

平生 コミュニティというのは、危機に際して動く部分と、日々の生活を運営するベーシックな部分の二つの側面があります。たとえば、災害や高齢者問題といった危機には、コミュニティの力が注目される。縮退する社会がどうしようもなくなると、将来には連帯する力をベースにしないとやっていけなくなるでしょう。それは、きっと自助努力みたいな部分が大きいと思います。

藤本 自分でやらなければいけない状態に陥っていく時に、柏の事例のように自分達で積極的に動く必要がでてくるということですね。防災マンションも同様に、「必然性」ということが重要なキーワードですね。

次回は、コミュニティ座談会の総括をお話します。

2012/01/16