フィンランド映画「365日のシンプルライフ」から学ぶ、モノとの真面目な向き合い方

(c)Unikino 2013

マンションの部屋が片付かないと悩んでいる人は多いはず。それは、必要以上にモノが溢れているからではないでしょうか?

フィンランド映画「365日のシンプルライフ」は、365日間自分の持ちモノと真剣に対峙した、主人公の実験的映画。昨年日本で公開されて以来、静かなブームを巻き起こし、いまも各地で自主上映が続けられています。

今回は、この映画を通してモノとの向き合い方を学んでみましょう。

溢れる身の回りの持ちモノと真剣に向き合うフィンランド映画

テレビで話題の便利グッズ、流行のファッションやインテリア、本、DVDソフト、欲しいモノを買い込んでいるうちに、どんどん部屋にはモノが溢れていきます。気に入って買ったモノが、部屋だけでなく自分の気持ちまで支配して重荷になり、部屋が片付かないという悪循環に陥っていく。大なり小なり、誰もが経験していることではないでしょうか?

ソファや冷蔵庫、本やCDから、自分がいま着ている洋服にいたるまで、すべての身の回りのモノを一度取り除いてリセットして、生きていく上で本当に必要なものは何なのか考え直してみたら、一体何が残るのでしょうか?

映画の主人公ペトリは、彼女との破局をきっかけに、たくさんのモノで溢れた自分の生活が空っぽだと感じ、自分の生活をリセットする実験を決意します。

彼が決めたルールは以下の4つ。

Rule1. 自分の持ちモノすべてを倉庫に預ける
Rule2. 1日に1個だけ倉庫から持って来る
Rule3. 1年間、続ける
Rule4. 1年間、何も買わない

一切のモノがなくなったアパートの一室で、自分が着ていた衣服さえ倉庫に預けたペトリは、真っ裸で1日目に持ち帰るモノを探しに倉庫へ向かいます。

何もかもない生活の1日目、真っ裸の彼にとってまず必要だったのは? ©Unikino 2013

365日続けられたこの実験を通して、彼は何を得ることができたのでしょうか?

映画「365日のシンプルライフ」

フィンランドからやってきた、「人生で大切なもの」を見つけ出す365日のモノがたり『365日のシンプルライフ』。

監督・脚本・主演:ペトリ・ルーッカイネン/2013年/フィンランド/フィンランド語/カラー/80分/原題:Tavarataivas/英題:My Stuff。

公式ページ
http://www.365simple.net

Facebookページ
https://www.facebook.com/365simple

※2015年5月23日にDVDソフトが発売されます。

リサイクルやリユースが生活に溶け込んでいるフィンランドの暮らし

「人生で大切なものは何か?」ペトリとおばあちゃんとの対話は、心に響いてきます。©Unikino

今回は、この映画を日本に紹介した配給会社のキノローグ森下さんに、映画の話やフィンランドの暮らしについてお伺いしました。

──映画は、主人公であり監督であるペトリ・ルーッカイネンさんが実際に行った365日をそのまま映し出しています。まわりの友達、母やおばあさん、すべて実在の人物ばかり。しかし単なるありのままのドキュメンタリーではなく、実に映画的な魅力が備わった不思議な映画です。

監督のペトリさんは、MTVやTVCM作家。「モノに囲まれていても幸せを感じることはないのはなぜか?」そんな疑問を行動に移したのです。40㎡のアパートの部屋に、5,000〜20,000点のモノに囲まれていたペトリさんが、すべてを倉庫に預けてガランとした部屋に真っ裸でいる姿は圧巻です。

森下さん「昨年の公開に合わせて監督のペトリが来日しました。彼は、日本人というのは小津安二郎の映画や禅のような暮らしをしていて、持つモノも少ないミニマリストのような人々だと思っていたようです。取材にきたメディアの人たちが“どうやったらモノを減らせるのか?”と真剣に相談してくる様子に驚いていたようです」

──この映画を観た人々が、モノとの付き合い方を“自分ごと”に置き換えて考え始めたことがよくわかります。フィンランドでも、彼の実験を真似る人フォロワーまで出てきたのだとか。確かに映画を観ると、自分はこのままでいいのか、何かしなければ!という気持ちが沸き立ってきます。

森下さん「不思議な映画ですよね。何度も観てくださる方もいるし、さまざまな場所で自主上映会を開催してくれる方々もいます。私は、映画を題材にしたキノローグ(映画で対話する)というワークショップも開催しているのですが、『365日のシンプルライフ』は、観た人に自然と対話を生み出させる映画だと言えます」

──そもそも、森下さんがこの映画を日本に紹介した理由は何でしょう?

森下さん「東日本大震災を経験し、それまでの暮らしが当たり前ではないんだと気付いた日本人にとって、いまだからこそ、この映画の主題を深く感じることができるのでは、と確信しました」

──モノがあるのが当たり前という生活が震災によって激変し、いまもどこかで、このままの暮らし方でいいのだろうかという疑問を抱えている私達。確かに、映画が投げかけてくる「本当に大切なモノは何だろう?」という問いかけが、心に深く響いてきます。

フィンランドの暮らしはリユースが当たり前

──森下さんは、フィンランドのヘルシンキでアパートを借りて、3ヶ月間暮らしていたそうです。映画に出てくるフィンランドのアパートは、シンプルで使いやすそうな雰囲気でしたが、実際に暮らしてみて、フィンランドの人々の暮らしぶりどうだったのでしょうか?

森下さん「フィンランドの人々も日本と同じで、やっぱりモノに溢れた暮らしをしていたりしますよ。みんながシンプルライフを実践している訳ではありません。けれどフィンランドは、リサイクルやリユースの習慣が自然と暮らしの中に溶け込んでいて、皆普通にそれらを利用しています。リユースショップでも、普通のブティックのようにきれいな品物が整然と並べられています」

──フィンランドのアパートはどんな風なのでしょうか?

森下さん「バスタブがないことと、サウナがあるかどうかくらいで、日本とそう大きな違いはありません。サウナ付きのアパートは家賃も高いですしね。アパートは気密性が高いので、室内はかなり暖かくて、じゃがいもなどを室内に放置していると腐ってしまうほど。映画でもペトリさんのお母さんが“冷蔵庫は大切よ”と力説していましたよね。

ただ、さきほどお話したように、リサイクルやリユースでモノを手放す手段があることと、モノの循環が根付いていることが違いますね。映画でも冷蔵庫を修理する人がいたように、電化製品でも何でも直して使うのはごく当たり前。ペットボトルや瓶も、スーパーマーケットに返却すれば金券で戻ってきます。すべてがうまく循環している気がしました」

映画の中でも、冷蔵庫はキーモチーフになって登場します。故障した冷蔵庫を直そうとする主人公。©Unikino 2013

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2015/05/20