50歳から考える、90歳までの住まい方「シニアリノベーション」

いま30代・40代の方は、ご自分のシニアライフを考えたことはありますか? お住まいのマンションで、こころ豊かに暮らすために、いまから将来のことを考えてみませんか?

「Good Over 50’s」 50代から考え始める、自分のシニアライフ

人生90年とも言われる長寿社会へ突入した日本社会。しかし、シニアになっても、リフォームをすることなくいまのマンションでそのまま暮らせるでしょうか?もしも介護が必要になったら?

マンション・ラボ編集部のスタッフも、高齢になった母親が外科手術を終えた後、実家に介護ベッドや手すりを増設しました。必要な機能は備えているけれど、これら介護用品のあまりにも無骨なデザインに愕然としました。自分たちが親の年代になったときに、やはりこうした介護用品を使わないといけないのでしょうか。

たとえ健康が大きく損なわれなくても、年齢を重ねるにつれて、できなくなることは増えてきます。シニアになると自宅での事故も多いため、自分の住まいで安心して暮らすためには、段差や扉にも配慮したいものです。だからといって、どんどんインテリアにあわない手すりを増設することにも抵抗があります。

インテリアにこだわる人なら、シニアになっても自分の気に入った家具や道具に囲まれて暮らしたいと願うもの。誰もが、自分たちがシニアになったときに、いままであたりまえだった生活を、決してあきらめたくないはずです。

そんないつまでも自分らしく暮らしたいと考える人々に、「THINK OF IT BEFORE IT’S TOO LATE!!(遅すぎないうちに考えよう!)」とアピールしているのが一般社団法人ケアリングデザインです。

(社)ケアリングデザインは、住まいや、医療、看護、福祉の空間をもっと心地よいものにすることを目的として、デザイン、建築、医療、看護、福祉、ことばの専門家の有志が集って設立しました。専門分野の違うメンバーがひとつのチームになることで複眼的な視点から、シニアのさまざまな相談や問題解決に当たることができるのだそうです。

ケアリングデザイン

「Good Over 50’s」をテーマに、シニアの住まいや暮らし方、機能性と美しさを兼ね備えた空間・道具・サービスを推奨、提案する活動を行う。池袋西武本店7Fリビングスペース「Stage Next」に於いても常時情報を発信する。2013年秋には、ケアリングデザインベストプロダクトやリノベーションルームを展示した「くらしのケアリングデザイン展2013」を開催し、好評を博す。シニアの自立した暮らしとケアをデザインでサポートする取組みが評価され、2014年グッドデザイン賞を受賞。

一般社団法人ケアリングデザイン
http://www.caring-design.or.jp/
2014年グッドデザイン賞
http://www.g-mark.org/award/describe/41864?locale-ja

今回は、(社)ケアリングデザイン代表理事の小野由記子さんに、その活動とシニアライフの住まいについて伺いました。小野さんは、インテリアデザイナーとして住まいのデザインに深く関わると共に、北欧のシニアの暮らしについても研究されています。

活動の中でも、50代からシニアの暮らしを考えていこうという呼びかけは、とてもユニークです。なぜ50代からなのでしょうか?

「理事メンバーの岩崎俊一さんのコピー“あしたのあなたを幸せにできるのは きょうのあなたしかいない”が、まさにその答えですね。いままでの生活とこれからの生活の、ちょうど分岐点となるのが50代~60代。今の自分にしか、未来の自分を幸せにすることはできません。それは日々の食生活で健康を気遣うことであったり、足腰を鍛えるためにウォーキングをすることであったり、住まいをリノベーションで変えることであったり、自分の現在の暮らし方のすべてが、密接に未来の自分に結びついているのです」と小野さん。

自分の将来を見据えた住まい方が、介護されることを遠ざけ、健康で、自立した、自分らしい生き方につながっていくと、小野さんは言います。

「北欧のシニアの暮らしぶりを拝見していると、皆さん、出来る事は自分でしようとしますし、ケアサポートも本人の出来ることにスポットを当て、さりげなく見守ります。北欧のシニアは一人ひとりの個性で、日々の暮らしを楽しまれているように見受けられます。高齢者の賃貸集合住宅であるナーシングホームの個室は、入居者が持ち込んだ馴染み深い家具やオーナメントで美しくコーディネートされています。

また、延命治療に対しても日本とはまったく意識が異なります。自宅で医療や看護、介護のサービスを受けられますので、たとえガンであっても、自宅で過ごすことが普通です。なんともうらやましい限りですが、このような北欧の医療、福祉のすべてを見習えばよいということではなくて、日本人に相応しいサービスやケアが必要ですし、自分らしい暮らしを選択する自由が欲しいのです。

シニアライフについて考えることは、ユニバーサルデザインを考慮する事だけではなく、自分らしく生きるために暮らし方をデザイン=設計することなのだと思います」

インテリアデザイナーとして北欧のシニアの暮らしを調査することが多い小野さん。日本と北欧の違いを知った上で、日本にもより多くの選択肢を用意して、自分らしくあることができるシニアの暮らし方を提供していくことが必要だとおっしゃいます。

住まい、病院、福祉施設、すべての空間にケアリングデザインを

団塊世代がシニアにさしかかり始め、自分らしい生き方を好むシニアが増えてきたことも、これからのシニアライフを心地よく変えていくことの追い風になります。

「いまの60代、70代の方々は、ご自分ではシニアだと思っていらっしゃらないはず。そして新しくて使いやすいものを試してみたいというチャレンジ精神もお持ちです。そんな方々のために、リノベーションハウスや、より美しく、使いやすく、新しい暮らしを支える道具をご紹介していこうと考えて毎年開催しているのが“くらしのケアリングデザイン展”です」。

「くらしのケアリングデザイン展2013」展覧会ポスター

「くらしのケアリングデザイン展2013」は、昨年秋に池袋西武本店で開催され、シニアの方々だけでなく、30代〜40代の方々からも好評を博しました。それは、デザイン性の高い、機能的な暮らしの道具を紹介したことにも一因があるようです。

「海外のプロダクツも紹介していますが、日本にもデザイナーと共に美しく機能的なプロダクツを企画開発している企業がたくさんあります。会場ではそんなケアリングプロダクツの展示と販売、そしてシニアのリノベーションルームを原寸大で展示しました」

紹介されているプロダクツは、年代を問わずに使いたくなる美しいデザインのものばかり。いますぐマンションに取り入れたくなります。さらにそれらがシニアにも使いやすい機能ならいうことはありませんね。

「くらしのケアリングデザイン展2013」の会場風景。美しいハンディウォークやロボット掃除機ルンバ、津軽漆のちょいかけ椅子など、デザイン性の高いプロダクツを厳選して展示されました。

「車椅子でもステッキでも、手すりでも、ケアのための道具は、機能性に加え、美しく楽しく感動的であることが望まれます。そのような表情でさりげなく使い手をサポートするのがケアリングデザインの精神です」

弱った時、身体を支えてくれる道具にこそ、美しいデザインが必要なのかもしれません。確かに身の回りに気に入った美しい道具があることが、どれほど生活を豊かにしてくれることでしょうか。介護ベッドや杖のデザインのひどさにショックを受けていた編集部スタッフも、納得の言葉です。

「私達は、ケアリングデザインの考え方を、プロダクツはもちろん、住まい方や病院や福祉的空間にも浸透させていきたいと考えています」という小野さん。

機能だけを追求するのではなく、「美しさを諦めない」こと。そんなケアリングデザインの思想が、これからのシニアプロダクツや住まいに根付いていけば、未来のシニアライフが楽しみになりますね。

シニアのリノベーションプラン展示・64歳女性の夫婦二人暮らし

「くらしのケアリングデザイン展2013」で、会場に実際にモデルルームとして展示されたのは、64歳女性のライフストーリーとリノベーション例です。

夫と二人暮らしの女性が、一戸建てから新たに住み替えることにした58平米の中古マンションのリノベーションには、彼女の趣味や健康に配慮したきめ細かなデザインが施されています。

「より具体的にイメージいただけるように、住人である女性のライフストーリーをしっかり設定しました。どうしたら主人公が自分らしく住まいを自己表現できるのか、さまざまなアプローチでデザインしています」

夫婦二人暮らしの2LDKには、仕切りや壁をできる限りなくし、ゆったりとした住まい方を提案しています。(「くらしのケアリングデザイン展2013」より)

お茶を教えている女性ですが、関節炎のために正座ができなくなったという設定。椅子式でお茶のお手前ができる立礼の茶机と椅子がチョイスされています。モダンなインテリアにもすんなり溶け込んでいますね。ダイニングチェアも少し低めの座面のもので、安定感とくつろぎに配慮されています。

女性ならキッチンのリノベーションはこだわりたい部分。140度に開いたブーメラン型のキッチンは、流しの下をオープンにして、スツールに座っても炊事ができるようになっています。対面キッチンを部屋の中央に配したことで、夫や友人が一緒に調理しやすい設計となっています。

水回りは細部にわたって、ケアリングデザインが施されています。楽に立ち上がれるトイレ便座の高さ、片手でも紙を切れるペーパーホルダー、すっきりした一本立ちの手すりバー、大人の贅沢、木の香りが楽しめる檜の浴槽など。

「リノベーションは、自分を表現するまたとないチャンスです。多くのシニアの方々に、自分の将来も見据えた、オンリーワンの住まいを実現してもらえるよう、経験豊富な設計者やデザイナーがお手伝いします」と、小野さん。

たとえばいままでは、子ども達が巣立ったあとの夫婦二人暮らしのためのリフォームを考えるときでも、自分のシニアライフの住まい方まで考えてプランニングすることは余りなかったはずです。しかし、自分の住まいだからこそ、趣味や住まい方に合わせて、いつまでも楽しく心豊かに暮らし続けることができるために、“未来の自分に合わせて住まいを変えていく”意識が必要なのかもしれません。シニアライフを見据えたマンションのリノベーションも、自分のライフプランの中に考慮しておく時代になりつつあるのですね。

2014年10月に「くらしのケアリングデザイン展2014」を開催〜テーマは同居!

次回の「くらしのケアリングデザイン展2014」は、2014年10月22日(水)〜11月3日(月・祝)の期間、西武池袋本店7階にて開催されます。

今回のリノベーション展示は、脳梗塞の後遺症が若干残る母親と同居する、50代後半のご夫婦という設定。いかに高齢の母親を見守りながら、お互いに気を遣わない距離感を保つことができるかがポイントだそうです。親の介護や、同居の住まい方についてのヒントがいろいろと得られそうです。

他にも、料理研究家の有元葉子さんのトークセッション、各界の一線で活躍するゲストによる各種セミナー&相談会、衣食住のプロダクトがマルシェ的に展示・販売されますので、ご夫婦や、シニア世代のご両親と一緒に、足を運んでみてはいかがでしょうか?

くらしのケアリングデザイン展2014

会期:2014年10月22日(水)〜11月3日(月・祝)/会場:西武池袋本店7階(中央A6)=インテリアフロア特設会場/シニアのリノベーションルーム展示、ケアリングデザインマルシェなど。期間中実施されるトークセッションやセミナー&相談会には、サイトから参加申し込みできます。

Good Over 50’s くらしのケアリングデザイン展2014
http://www.caring-design.or.jp/2014/09/17/480/

GOOD OVER 50’s都市型コンパクトライフのススメ展 二人暮らしの50m2

会期:2014年10月16日(木)~11月11日(火)/会場:リビングデザインセンターOZONE 3F/こちらは、ケアリングデザインが特別協力しているイベント。「コンパクトライフ」をキーワードに、住宅・デザイン・エネルギー・都市生活・新しい経済の考え方や働き方まで各分野の有識者が語り合うイベントに、小野さんがパネリストとして登壇されます。

都市型コンパクトライフのすすめ
http://www.ozone.co.jp/event_seminar/event/detail/1736.html


今回のお話を伺って、「THINK OF IT BEFORE IT’S TOO LATE!!(遅すぎないうちに考えよう!)」という言葉が一番心に残りました。自分のマンションを、シニアになった自分の視点で一度考え直してみてはいかがでしょうか。そのためにも、より多くのシニアのリノベーション展示や事例を見て、学んでいきたいものです。

2014/10/15