山手線沿線の古い中古マンションを購入し、ライフスタイルに合わせて素敵にリノベーション!

●P1020363

「おうちに帰ってくると、『ああ、いつもの木の匂いだぁ』って思うの。うちが大好きなんだ」
―こんな言葉を娘さんからもらえる部屋を、渋谷区恵比寿駅から徒歩10分足らずのマンンションで、リノベーションし完成させた鈴木裕治さん家族。どんなリノベーションをしたのか、詳しくお話を聞いてみました。

取材者・住環境紹介

家族構成:夫婦・娘(小学3年生)
~購入マンション~
築年月:1971年9月
購入年月:2013年6月
転居年月:2013年12月
広さ:約110平米
間取り:2LDK
階数:7階建ての6階
方位:南向き/南西角部屋

住み替えても生活拠点は変えないという選択

鈴木さん家族が住むマンションは、なんと築45年。約20年前、裕治さんが2階の部屋に住み始め、その後結婚。約3年前に広い部屋を探していた時に、ちょうど今住む6階の3LDK (当時)の角部屋が空きました。
「広さはあるけど、とにかく古い!」部屋は、他の内見者が年季の入り具合を見て諦めていくほど。鈴木さんご夫婦もずいぶん悩み、知人にも相談しました。地盤が固いこと、同じマンションで、リフォーム後にきれいになった部屋も見ていたことから、当分はここで暮らせると判断。住み慣れた場所で暮らせることも決め手となり、鈴木さんの住み替え・リノベ―ション計画がスタートしました。
鈴木さんたちのリノベーションのテーマは、“家族が心地よく暮らせる”こと。どんなふうに実現していったのでしょうか?

2つの部屋を一つにつなげてつくったリビングには、外から気持ちが良い風が通り抜けます。

2つの部屋を一つにつなげてつくったリビングには、外から気持ちが良い風が通り抜けます。

体で感じる「無垢の木」の魅力

鈴木さん宅で印象的なのは、なんといってもふんだんに使われた「無垢の木」です。
玄関から続く飯能サワラの木の床は奥のリビングまで続き部屋中に広がり、歩くたびに心地よさが伝わってきます。天井にはラワンのべニア板が張られ、リビングに置かれた8人はゆったりと囲めるダイニングテーブルは、静岡の三島産クスの木の1枚板でできています。これだけ木に囲まれその香りを感じていると、都会のマンションに居ることを忘れてしまうほどです。
鈴木さんたちは、以前から無垢の木に囲まれた生活に憧れていたわけではありません。奥さんが同じマンションに住む、家具デザイナーの伊藤陽子さんの部屋に遊びに行ったことがきっかけで、木へのこだわりが始まりました。
日本の木を生活に取り込むことを大切にしている伊藤さんの部屋は、全面木でつくられスタイリッシュな部屋。奥さんは、その美しさと気持ちの良さに圧倒されてしまったとか。その後、伊藤さんの紹介で木の良さを体感できる小田原のイベントに、お子さんと一緒に参加していくうちに木への愛着が深まり、リノベーションに日本木材を用いることにしたのです。

リノベーションはライフスタイルに合わせた収納から

伊藤さんにリノベーションデザインをお願いした鈴木さんたちは、家族の暮らしぶりを見てもらい、それを上手に収納するための手段や、困っている箇所はどのように改善できるかなどの話し合いを重ねました。
伊藤さんからのリノベーションアドバイスは、「生活空間を快適にするための、収納を丁寧に考えた部屋づくり」。収納したものが、生活空間に入れても美しく映える方法を一緒になって考えていきました。
その中で生まれたこだわりの本棚とキッチンを紹介します。

サワラの木肌は気持ちが良くて、娘さんのお友達は来たらすぐに素足になります。サワラは傷つきやすくもありますが、それも味わいと鈴木さんたちは思っています。

サワラの木肌は気持ちが良くて、娘さんのお友達は来たらすぐに素足になります。サワラは傷つきやすくもありますが、それも味わいと鈴木さんたちは思っています。

(1)たくさんの本を圧迫感なく収納する本棚

リビングの雰囲気に溶け込むようにあつらえた壁一面の本棚。ここにもサワラの木を全面使用しています。大工さんに頼んで作ってもらった本棚は、木の耳を残した工法でできていて、「生きた木」が感じられます。
中には本や雑貨がぎっしり並べられているのですが、不思議としっくり落ち着いていて、大きさにも圧迫感が感じられません。自然素材に囲まれると見せる収納も、生活空間に見事に融合してくるようです。

木の耳を残した工法で大工さんに作ってもらったおかげで、専門業者に頼むより安価で仕上がりました

木の耳を残した工法で大工さんに作ってもらったおかげで、専門業者に頼むより安価で仕上がりました

(2)収納と機能性を追求したキッチン

リビングで異彩を放つのはオールステンレス製のオープンキッチン。娘さんの様子を見ながら料理ができるようにと、バスルームと合わせて場所も向きも変更しました。主にキッチンに立つのは裕治さん。出版プロデューサーをしていて、よくお客さんを招いては腕を振るうので調理器具や食器も多く、収納率と使い勝手の良さが大切。ショールームにあるシステムキッチンでは気に入ったものが見つからず、プロも仕様するというメーカーでオーダーしました。すっきりとして機能的、奥行きがあり収納量も十分で、クールな表情を見せています。「角ばった感じとか、直線的なデザインの方が部屋にしっくりくると思ってね」と裕治さんは話します。

無垢の木の良さをそのまま生かした本棚と、ステンレスをそのままに飾らず機能を重視したキッチン。素材の違いこそあれども、「素材の良さ」を大事にしているところで相まって、生活空間に融合していました。

調理器具やスパイスが手ににとりやすいところに置かれ、裕治さん手作り本格派料理が次々と出てきそうなアイランドキッチン。

調理器具やスパイスが手ににとりやすいところに置かれ、裕治さん手作り本格派料理が次々と出てきそうなアイランドキッチン。

楽しくて快適な空間

「素材が生かされている」点では、マンションならではの梁とキッチンの壁にも表れ、クロスを貼らず無骨なコンクリートのままにし、木に囲まれた空間にアクセントをつけています。
さらには、リビング中央の梁にフックを取り付け、ロープをつるし、娘さんが欲しがっていたブランコにしています。小学3年生の娘さんもうれしそうに「お友達と一緒になって遊べるの」と話します。きっと楽しい空間になっているのですね。

フックは、牛を吊り下げるためのものなので、大人がぶら下がっても大丈! サンドバッグは、奥さんのストレス発散ができます。

フックは、牛を吊り下げるためのものなので、大人がぶら下がっても大丈! サンドバッグは、奥さんのストレス発散ができます。

窓には、高台で目線が気にならないのでカーテンをつけていません。窓が全開され、部屋には風が入り湿度が低くとても快適でした。聞けば、真夏は窓を開け放てば風が入り、エアコンを使う必要がほとんどないほどの涼しさで、真冬はガスファンヒーターだけで十分温かいのだとか。
確かに、柔らかなサワラの床に足を置いていると、「冷たさを感じにくいだろう」と想像がつきます。全ての窓ガラスをエコガラス(複層ガラス)に取り換えたことも、外気の影響を受けにくいのでしょう。冬の心地よさを感じに、もう一度お邪魔したくなりました。

あるものを生かし自然の力を利用することで、生活の中に楽しさと快適さをもたらしてくれているようです。

サッシ本体は取り付けていたものを使い、窓だけをエコガラスに替え、コストダウンをはかりました。

サッシ本体は取り付けていたものを使い、窓だけをエコガラスに替え、コストダウンをはかりました。

おおらかになれる住まい

これだけ快適に楽しく過ごせることができるお部屋。奥さんにとってリフォームでちょっと気になるのが、リビングに面したところに壁に囲まれた納戸。この壁が生活動線上にあり、時々ぶつかってしまうからです。けれども、そこもご愛敬。娘さんの成長に合わせてフレキシブルに使っていく予定です。また、天井の梁を使って雲梯をつける構想もあり、心地よく暮らすための楽しい追及は尽きないようです。


“家族が心地良く暮らせる”ことをテーマにした鈴木さんのリノベーションは、「素材を大切にする」ことに気付かせてくれました。リノベーションを考える時、あれこれ手を加えたくなりがちですが、飾り気のない素材を生かすことが心をおおらかにさせ、子どもや大人の気持ちをほぐしてくれるのでしょう。それが、「うちが大好き」「また来たいな」と言ってもらえるリノベーションにつながるのかもしれません。

(文:後藤菜穂 Loco共感編集部)

2016/08/18