Vol.14 コミュニティ×あそび

毎回、さまざまな分野でスペシャリストとして活躍するゲストの方々とコミュニティづくりをサポートする『HITOTOWA Inc.』荒氏の対談を通じてマンションライフやマンションコミュニティのこれからを考える連載企画、「つながり ~マンションコミュニティの話をしよう~」。

今回のゲストは、「asobi基地」代表の小笠原舞さん。『オトナもコドモもみんなが平等な場所』をテーマに、さまざまな子育て支援プロジェクトやコミュニティづくりなどを手がける小笠原さんが考える、マンションと子育てのより良い関係とは。

オトナもコドモも完璧じゃなくていい

「asobi基地」とは?

保育士の小笠原さんと子ども精神科医の小澤いぶきさん、子育てカウンセラーのよしおかゆうみさんの3名が中心となり、2012年7月に立ち上げた「asobi基地」。

カフェや学校の体育館、商店街……など、さまざまな場所で大人と子どもがともに遊べるイベントを実施。子どもや子どもを持つ親だけでなく、子どもたちと遊びたい学生や社会人、シニア……など、幅広い人々がアクセスできる新しい子育て支援コミュニティの実現を目指している。

詳しくはhttp://asobikichi.jp

荒:小笠原さんは現役の保育士として働く傍ら、「asobi基地」の代表としてさまざまなイベントやコミュニティデザインを手がけられています。商店街と協力して子どもの職業体験的なイベントを行ったり、地域産業の廃材となった風船などを利用して自由にマスコットを作るワークショップを開催したり。

本当に幅広く活躍されていますが、今日、お聞きしたいのは、マンションコミュニティと子育て支援の在り方についてなんです。

小笠原:たくさんお話ししたいことがあります(笑)。

荒:よろしくお願いします(笑)。さて、まずお聞きしたいのですが、僕は普段からマンションコミュニティづくりに関わっています。そのなかで良く耳にするのが「親以外の大人とふれあうことが、子どもにとってすごく良い」っていう意見です。

きっと良い影響はあるとは思うのですが、具体的にどんな部分が子どもにとって良い影響を与えるのか教えてください。

小笠原:子どもであれ、大人であれ、人とふれあうことのメリットはたくさんありますよね。私が特にいいなって思うのは、子どもたちがたくさんの大人を見るなかで「いろんな種類の“好き”がある」ということを感じられることですね。

荒:「いろんな種類の”好き”」とはどういうことでしょうか?

小笠原:たとえば、マンション内に住む人を考えた場合でも、ロックが好きなお父さんもいれば、日曜大工が好きなお兄さんもいる。料理が得意なお母さんがいれば、楽器を弾けるお姉さんもいる。それぞれの人の“好き”にふれることで、子どもたちは「世の中にはいろんな特徴を持った人」がいるということがわかるし、もしかしたら、自分の“好き”に気づけるかもしれないと思うんです。

荒:自分が”好き”になるものには無限の可能性があるということですね。そこから個性が生まれるような気がしました。また、なんでもかんでも親が教えるというわけにはいきませんしね。

小笠原:もちろん親の影響はすごく大きいですし、たくさんのことを教えようと親が頑張っている姿というのも、子どもたちはちゃんと見ています。

けれど、英語も数学も家庭科も体育もできるオール5の人って、現実にはそうそういないわけですよね。だから、すべてのことを家庭内で経験させようとするのは無理があるし、親にとっても負担が大きい。子どもたちにとっても、本当に“好き”な気持ちを持った人に教えてもらった方が楽しいと思うんです。

荒:そういう意味では、多彩な人が集まって住んでいるマンションには、たくさんの可能性がありますよね。子どもたちにとっては、研究対象となる大人がたくさんいるわけですから。

小笠原:多くの人とふれあう機会は、子どもだけでなく親にとっても大きなチャンスだと思うんです。というのも、親は自分自身が完璧ではないのに、子どもに対しては完璧を求めてしまいがち・・・ということはないでしょうか。けれど、いろんな親子と関わっていくうちに、親たちにいろんな“好き”があるのと同様に、子どもたちにもいろんな“好き”があることに気づくと思うんです。「うちの子どもは音楽が好きなんだ」とか「でも、スポーツはいまいちかも」とか。

世の中には完璧な人なんていないし、ありのままの自分でいればいい。大人も子どもも関係なく、そう感じられることはとても重要なことだと思うんです。これって今の社会に必要で、すごく大切なことだと思っています。

荒:そうしたふれあいを通じて、他の家庭に対する敬意も生まれますよね。良いコミュニティが育つ大きな要因は、住民同士に信頼関係があり、お互いに敬意を持つことなんですよね。いまのマンションライフを見るに、個性を認め合うという姿勢は大人にこそ必要だと思いました。

それから、やっぱり子どもがいるマンションって、コミュニティができやすいですよね。子どもたちって、すぐに友だちになれるじゃないですか。この対談のシリーズでも、防災の専門家である片田敏孝先生は、子どものつながりを活かして親を巻き込みながら地域の防災対策をしていくとおっしゃっていました。

小笠原:子どもって不思議なもので、すぐにコミュニティをつくっていくんですよね。初対面でも年齢が違っても、たとえ言葉を交わさなくても、真ん中に“あそび”があるだけで、コミュニケーションを取れるんです。

そして、子どもたちがつながれば、大人たちもつながっていくんですよね。「asobi基地」にくる大人も、やっぱり最初はお互いに気を使っているんですよ。でも、そのうち「何歳ですか」とか「普段、どんなあそびをしているんですか?」とか。子ども達がスーっと大人たちの間に入り、つないでいく。素晴らしい力であり、役割ですよね。

荒:今は子ども同士が出合う場所が、とても限られています。小さい頃から生活や住まいから身近なの場所に友だちがいる豊かさを、マンションのなかで増やしていきたいんですよね。それがあれば、きっと大人もつながれるはずですから。

次のページ:大人も子どもも、みんなが関われる場所。理想のキッズルームとは。

2013/12/19

プロフィール

荒 昌史

HITOTOWA Inc.代表


1980年東京生まれ。2004年住宅デベロッパーに入社。自ら部署を立ち上げたCSRを中心に、ブランド、住宅企画・プロモーションを担当。携わった複数の住宅がグッドデザイン賞を受賞。

2010年独立、HITOTOWA Inc.設立。都市のコミュニティづくり事業を手掛け、新規物件のプロデュースから既存物件へのコンテンツ導入まで、「ネイバーフッド・デザイン」を取り入れた住宅の企画に取り組む。また、住宅・建設・自動車会社等のCSR/CSV事業も展開。社会環境問題の解決に必要不可欠な地縁コミュニティをつくるプロジェクト「Community Crossing Japan」のオーガナイザーも務めている。


●HITOTOWA Inc http://hitotowa.jp/

●Community Crossing Japan http://communitycrossing.net/

●Twitterアカウント: aramasafumi