Vol.11 コミュニティ×リノベーション

毎回、上質なライフスタイルに精通するゲストの方々とコミュニティづくりをサポートする『HITOTOWA Inc.』荒氏の対談を通じて、マンションライフやマンションコミュニティのこれからを考える連載企画、「つながり ~マンションコミュニティの話をしよう~」。

今回のゲストは、『リノベる。株式会社』代表の山下智弘さん。中古マンションをリノベーションすることで、自分らしい住まいをつくる。新しいマンションライフのカタチに挑戦する山下さんが見据える未来とは。

リノベーションで住まいをもっと自分らしく

中古マンション+リノベーションは住まい選びの選択肢のひとつ

荒:リノベーションの専門家である山下さんをゲストに迎えるにあたって、主に2つのテーマについてお聞きしたいと思っているんです。

ひとつが「空間のリノベーション」について。もうひとつが「コミュニティのリノベーション」について、です。

まずは「空間」の方からお聞きしたいと思うのですが、マンションのリノベーションは、昨今少しずつ市民権を得てきているという印象がありますが、実際のところはどうでしょうか。

山下:市民権という意味では、まだまだこれからだと思っています。というのも、これまでの日本では、10人いたら9人が新築、1人が中古というのが常識でした。

これが今は少しずつ変わってきていて、中古が3割くらいというのが実感値です。

ただ、欧米の場合だと、1割が新築で、9割が中古というのが当たり前。そういう意味でも、リノベーションは、まだまだ発展途上の市場だと思っています。

荒:これまでなぜか新築マンションしか選べなかったのが、ちょっと偏りすぎていた状況だったということですね。それが少しずつ「新築」か「中古」を住まい手が自由に選んでいける時代になっていると。

選択肢が多いことは人々の生活の豊かさにつながりますので、とてもよいことですね。

では、山下さんが考えるリノベーションの良さとはなんですか?

山下:建物に合わせて暮らすのではなく、暮らしに合わせて建物を作れる、ということだと思います。

もちろん、お金に余裕のある方は建築士に頼んで注文住宅を作るのもひとつの方法ですが、中古マンション+リノベーションだと、本当に一般家庭の方々でも資金的にそれができるんですよね。

僕自身も3回家を買って、3回リノベーションしているんですけど、家を作っている最中は仕事が手に付かないくらい面白いですよ。

荒:自分らしい自分だけの住まいをつくれるわけですから、それは面白いですよね。そして、手をかければかけるほど住まいに愛着も湧きますよね。

僕もコーポラティブという手法で自分の環境共生型の住まいをつくって住んでいますが、やっぱり「自分の家」という感じがします。

もちろん、大手のデベロッパーが供給する住宅は、緻密なマーケティングやこれまでのたくさんの経験則を踏まえて商品が企画され、住民に時間的な負担がかからないように購入できる仕組みとなっていて、それはそれで人々のニーズに適っています。

しかし、人によっては価格はそこまでかけられないけれども、もっと時間と手間をかけてこだわりたい、周りと違うのものでよいから自分らしい住まいを追究したいというニーズもあって、そこにリノベーションというスタイルがはまってきたんでしょうね。

山下:リノベーションのもうひとつの良さが、資産価値としての側面です。

新築物件をめぐる冗談のひとつに「カギを開けたら20%価値が落ちる」というのがありますが、築15年、20年経った中古ならば、資産価値もある程度落ち着いています。

そういう物件に手を入れながら住めるのも、中古マンション+リノベーションの魅力のひとつですね。

荒:なるほど。また、住まいに歴史が積み重なっていくことも、中古+リノベーションの魅力ですよね。

僕は住まい業界によくある「新築か、中古か?」といった二項対立の論調の議論にはあまり興味がないというか、市場的には両方ともきちんとレベルの高い価値提供をしながら、住まい手がリテラシーを持って選択できるようになることが最重要と考えています。

しかし、新築と中古で圧倒的な価値の違いは何かと言うと、歴史の継承度合いですよね。

山下:そうなんです。ニューヨークやパリにいって住宅を見せてもらうと、「ここの壁は前の代の○○さんが作ったタイル貼りの壁」なんてことを、みんな言うんです。そうやって受け継がれていくのが中古の良さで、欧米にはそういう文化がすでにあるのだと思います。

荒:昔からの時間の流れを大切にすること……。例えば、陶器の金継ぎなどの文化を有する日本人も持っているはずの価値観ですよね。

最近は「アップサイクル」という、リサイクルするほど価値があがっていくべきだという考えが話題になっていますが、中古+リノベーションにも結びつくコンセプトですね。

山下:もちろん、壊して建てることも時には必要だと思いますが、過去の流れを受け入れて、新しいものにアップデートできることもリノベの良さだと思いますね。

荒:なんでもかんでも壊してよいという価値観で街がつくられていることは、実は新築マンションを供給するデベロッパーとしても、自分たちが供給するものが一過性のものに見えてしまって寂しいことなんです。

そういう意味でも、「新築か中古か?」の二項対立を超えて、よりよい街をつくる気概で住まいづくりが発展していくとよいですね。山下さんや「リノベる。」の今後の展望を教えてください。

山下:実は、山下智弘のデザインを広げたいなんて、これっぽっちも思っていないんです。僕自身はクリエイターではないので、カッコイイものを自分でつくることはできないですから。

ただ、僕自身の感覚として、カッコワルイ家に住むのはイヤだし、カッコワルイ洋服を着るのもイヤ。だから僕は、洋服を選ぶ時には「この人カッコイイなぁ」と思うショップ店員から、どんどんアドバイスをもらうようにしています。

僕たちが目指しているのは、住まいという分野における「カッコイイショップ店員」のような存在。「あなたなら、ブルースタジオのデザインがいいんじゃないですか?」と的確にアドバイスできるような見立てのプロとしての実力を、これからもどんどん磨いていきたいですね。

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2013/07/01

プロフィール

荒 昌史

HITOTOWA Inc.代表


1980年東京生まれ。2004年住宅デベロッパーに入社。自ら部署を立ち上げたCSRを中心に、ブランド、住宅企画・プロモーションを担当。携わった複数の住宅がグッドデザイン賞を受賞。

2010年独立、HITOTOWA Inc.設立。都市のコミュニティづくり事業を手掛け、新規物件のプロデュースから既存物件へのコンテンツ導入まで、「ネイバーフッド・デザイン」を取り入れた住宅の企画に取り組む。また、住宅・建設・自動車会社等のCSR/CSV事業も展開。社会環境問題の解決に必要不可欠な地縁コミュニティをつくるプロジェクト「Community Crossing Japan」のオーガナイザーも務めている。


●HITOTOWA Inc http://hitotowa.jp/

●Community Crossing Japan http://communitycrossing.net/

●Twitterアカウント: aramasafumi