Vol.7 コミュニティ×ソーシャルデザイン

毎回、上質なライフスタイルに精通するゲストの方々と
コミュニティづくりをサポートする『HITOTOWA Inc.』荒氏の対談を通じて
マンションライフやマンションコミュニティのこれからを考える連載企画、
「つながり ~マンションコミュニティの話をしよう~」。

今回のゲストは「あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア厳選マガジン」
をテーマに掲げ、独自のコンテンツを発信する「greenz.jp」編集長の兼松佳宏さん。

社会の課題を“楽しく”解決するムーヴメントづくりを行う兼松さんが考える、コミュニティの未来とは?

人と人がつながるためのちょっとしたきっかけについて。

コミュニティを育むための仕掛けを用意する。

荒:「グリーンズ」を見ていて感じるのは、コンテンツの質の高さはもちろん「グリーンズ」を取り巻くコミュニティが面白いなぁってことです。コンテンツをつくるプロセスのコミュニティと、アウトプット=読者を巻き込んだコミュニティがありますよね。

兼松:グリーンズって実は、いろんなコミュニティの集まりなんです。例えば、記事を書いていただくライターのコミュニティやマネタイズを考えるプロデューサーのコミュニティ。このふたつはプロセスの部分ですね。そしてアウトプットの部分が、読者のコミュニティと「グリーンズ」でインタビューさせていただいた人たち=取材対象者のコミュニティ。他にも日本のアイデアを世界に届けるGlobal Communityというものもあります。すべてに共通するのは「未来をもっと素敵にしたい!」という価値観なんです。

荒:なぜ、それらのコミュニティをつくろうと思ったんですか?

兼松:明確に意識したのは、ここ1年ですね。ちょうどNPO法人化する流れがあったり、当時副編集長だったモリジュンヤくんが卒業するタイミングだったり、きっかけはいろいろあるのですが、ひとりで何でも抱え込むよりも、いろんなひとたちがそれぞれにできることで貢献しあう組織のあり方のほうが、グリーンズらしいと思ったんです。グリーンズはまだまだスタートアップですし、やるべきことはたくさんある。みんな器用だから、そこそこできちゃうんですね。だけど、それをすべて自分でやろうとするといつまでたっても忙しさはなくならないし、何より次の世代が育たない。そこで最初に取り組んだのは、それぞれが抱えていた仕事をまるっと棚卸しすることでした。

荒:なるほど。整理してみて「コミュニティが必要」という課題が浮かび上がってきたわけですね。当時コミュニティをつくるために「グリーンズ」では何を行ったのですか?

兼松:僕らは「要項」って呼んでいるんですけど、それまで暗黙知で共有できていた部分を明文化したものをつくりました。わかりやすくいうと、「よくある質問」をまとめたものです。それまでもライターさんたちが積極的に関わってくれていたこともあって「グリーンズ」は”なんとなく”良い感じで回っていました。ただその一方で、新しく参加するメンバーとは温度差があることもある。だから読み合わせをすれば『「グリーンズ」はこういうものだよね』というのがわかる素材が欲しかったんです。現在も海外に住むライターさんが増えたりと、状況の変化に応じて「要項」はアップデートしていますが、これをつくっておくとコミュニティ形成時の初期コストはぐっと減る気がしますね。最初の一時間、「要項」を共有する時間をつくるだけで、その後も長く一緒に歩いていける感じになるというか。

荒:月並みな言葉になってしまいますけど、いわゆる理念やポリシーの共有ですね。実は理念やポリシーありきでスタートするコミュニティって意外に多いんです。でも、「グリーンズ」の場合は、暗黙のうちに形成されていた土壌や理念があって、コミュニティを成長させるためにそれを明文化した。順番が逆なんですよね。そこが、とても「グリーンズ」らしいと思います。

兼松:僕らは全部後からです(笑)。「グリーンズ」を始めて6年になるんですけど、今実感しているのは、いろんなものをどんどん手放す歴史だったなということ。かつては本気で、「僕でなければこの記事は書けないし、クオリティは保てない」と思っていました。でも、自分たちのキャパシティを超えてしまって、いよいよオープンにライターを募集してみたら、「なんだ、僕よりすごい人っていっぱいいるじゃん」って当たり前のことに気づいた。やっぱり自分だけでできることは限られているし、役割を手放せば手放すほど、みんなの居場所ができてコミュニティも育っていく。つまり、「グリーンズ」の可能性も広がるんじゃないかって。

荒:なるほど。根っこの部分は共有しながら、メンバーの個性にどんどん任せていくですね。その点で、マンションコミュニティが「グリーンズ」に学ぶべき点は多いのかもしれませんね。基本的にマンションコミュニティの場合は、「○○してはならない」という「管理規約」から入るケースが多い。だから息苦しくなってしまってしまうし、コミュニティが育ちにくい。もちろんプロジェクトのためのコミュニティと住まいのコミュニティは異なる部分もありますけどね。

兼松:確かにプロジェクト型コミュニティってそこは合いやすいですよね。募集があって、応募があって、やるべきことがあるわけだから。でも、マンションコミュニティはなぜそうならないんでしょうね。だって同じマンションに住んでいるという時点で、隣人とは収入や立地といった条件がある程度一致しているってことですよね。なのになぜ大事な部分の共有ができないんでしょうか。

荒:本当にものすごい確率でお隣さん同士になっているのに、挨拶があればましな方。逆に言うともったいないですよね。ものすごい投資をして住んでいるのに。

兼松:コーポラティブとかなら、ミッションをシェアしながらコミュニティを作っていきやすいかもしれませんね。ただ、普通のマンションでも、その街が好きで、その街にいる理由をちゃんと対話する機会があれば、つながりは生まれるはず。もしかしたら、それがメディアの役割かもしれないですよね。「今日は403号室の兼松さんに聞いてきました。次の月は402号室の荒さんに聞いてきます」みたいなメディアがあって、それを見た住人同士が「あら、一緒じゃない!」って感じたところから、つながりが生まれたり。

荒:それ、面白いですね。マンションコミュニティや理事会では、もちろん楽しい話ばかりではなくて、お金に関するシビアな議論も行われます。だからこそ信頼関係がないと、みんなが黙ってしまってり、発言が偏ってしまったり、建設的な場にならないんですよね。関係を深めるためのちょっとしたきっかけこそ、本当は大切なのかもしれない。

兼松:きっかけづくりに関しては、「グリーンズ」でもいろいろと試しながらやっていますね。たとえば僕らが新しいライターさんと入るタイミングで、かならずライターさん2、3人と僕とで面談をするんですよ。そこで「要綱」の読み合わせして、何をテーマに書きましょうかという話を、それぞれにしてもらうんです。僕らはライターさんの募集を年に1度か2度に絞っているので、彼らはいわば“同期”になります。はじめて「グリーンズ」に関わるふたりがその場で出合うことで、グリーンズとの関わり方のバリエーションに気付けるし、その先もいろいろ相談しあえる仲間になる。この複数でのヒアリングは、いい思いつきだったなぁと感じています。最近ではGoogleハングアウトで、タイと名古屋と東京をつなげてやったりもしました。

荒:なるほど。やっぱりちょっとした工夫なんですね。

兼松:マンションの場合でも、隣人と仲良くなれれば最高だと思っているのに、なかなか話しかけるきっかけがないという人は多いはずですよね。僕自身集合住宅に住んでいますが、コミュニティを頑張ってつくろうとしている場に行くと、ちょっと気が引ける感覚もわかるような気がします。なんだか出来レース的みたいで(笑)。でも、隣の家から煮魚の良い香りが漂ってきたら、「おいしそう!」と褒めたいし、右隣の家で最近鳩が巣を作っているので鳩話をしたいという気持ちもある(笑)。やっぱりきっかけが大切なんですよね。

荒:僕の場合、マンションの住人同士が関係を深める最初の場づくりとして、お祭りやパーティを企画することが多いのですが、確かに「ありがたい」と言ってもらえることは多いですね。やっぱり住人としては、言い出しっぺになりにくいんですよね。「言い出したのはいいけれど、誰も来なかったらどうしよう」と。そういう意味では、僕のような第三者だからこそきっかけをつくれることもあると思います。

兼松:それはあると思いますね、ちなみに今年、団地のみんなが一番挨拶した日は金環日食のときでした。あの時は、みんなが団地の外に出てきて、みんなでいっしょに空を眺めていた。「この団地にこんなに小中学生がいたんだ!」というのが単純に驚きだったし、お隣さん同士サングラスの貸し借りみたいな光景もあって、すごくあったかい雰囲気でしたね。

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2012/12/27

プロフィール

荒 昌史

HITOTOWA Inc.代表


1980年東京生まれ。2004年住宅デベロッパーに入社。自ら部署を立ち上げたCSRを中心に、ブランド、住宅企画・プロモーションを担当。携わった複数の住宅がグッドデザイン賞を受賞。

2010年独立、HITOTOWA Inc.設立。都市のコミュニティづくり事業を手掛け、新規物件のプロデュースから既存物件へのコンテンツ導入まで、「ネイバーフッド・デザイン」を取り入れた住宅の企画に取り組む。また、住宅・建設・自動車会社等のCSR/CSV事業も展開。社会環境問題の解決に必要不可欠な地縁コミュニティをつくるプロジェクト「Community Crossing Japan」のオーガナイザーも務めている。


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●Community Crossing Japan http://communitycrossing.net/

●Twitterアカウント: aramasafumi