Vol.1 コミュニティ×インテリア(後編)

前編に引き続き、インテリアモデル倉本康子さんとの対談です。
後編ではコミュニティについて語っていただきました。

挨拶の連鎖反応ひとつで人と人の“つながり”は育つもの

あの震災から1年。変化したもの、変わらないもの

:震災以降、人と人との“つながり”の大切さを感じる人が増えています。ここからはマンションライフにおけるコミュニティ。つまり“つながり”についてお話しを伺いたいのですが、2011年3月11日以降、倉本さんの暮らしに変化はありましたか?

倉本:震災の日から現在まで。時間の過ぎ方が不思議な一年だったような気がしますね。時間の流れが速いのか遅いのかもわからないし、変わったこともあれば、震災前となにも変わらない部分もありますね。ただ、生活面で言えば、食料の備蓄や防災グッズは間違いなく増えました。また、友人や家族との“つながり”も強くなったと思います。今はあの震災から1年以上が経って、そういうことを、あらためてきちんと見直したいと思っていますね。

:そうですよね。僕も今年の3月11日の14時46分には黙祷をしましたが、やはりひと言では言い表せない気持ちになりましたね。それだけ大きな出来事だったんだと思います。ところで、震災以降に防災グッズが増えたということですが、防災グッズもインテリアの一部といえるのでしょうか。

倉本:もちろんです。実は『ディノス』で防災グッズのプロデュースもしているんですよ。というのも、お部屋に置いておいても違和感のないデザインの防災セットって、実はほとんどなかったんですよね。だから、機能的に優れていて、なおかつインテリアの邪魔にならない。むしろ、インテリアのプラスになって、目に付くところに置いておける防災セットを作りたかったんですよね。

:それは素晴らしいですね。せっかくの防災セットでも、クローゼットの奥にしまい込んでしまっていては、いざという時に使えませんからね。

“つながり”を育むちいさなきっかけたち

:“インテリア”と“コミュニティ”って、一見つながりにくいテーマなのかもしれません。ただ、前回倉本さんが提案してくださったように、同じマンション内の複数世帯で同時にホームパーティを開催して、お互い行き来するようにできれば、それこそ“つながり”が生まれますよね。ほかには、どうでしょうか。たとえば、今“シェア”や“フリーマーケット”に注目が集まっていますが、インテリアの“シェア”は可能でしょうか。

倉本:面白いですね。たとえば趣味が近い友人同士なら、物々交換も楽しいですよね。

:僕は、現代のマンションにおいては昔のようにベタベタしたコミュニティというのは、現実的ではないと考えています。ただ、同じような間取りの住居が多い分、“シェア”や“リユース”しやすい家具ってあると思うんですよね。そういうモノを捨てずに“シェア”していければ面白いんじゃないかな。

倉本:たしかに、家具などの大きなモノを捨てに行く時に「まだ誰か使ってくれる人がいるんじゃないかな」と思うことはありますね。たとえばマンション内に小さなスペースでも構わないのでインテリアなどを一時的に置いておける「ご自由にお持ちください」スペースがあればいいですよね。バザーやフリーマーケットほど大がかりではなく、お金もすべて無料にして。そうすれば活用できるインテリアは、多いかもしれないですね。

:いいですね。人と人のゆるやかな“つながり”も感じられて。不要になった家具を置いていたスペースに「ありがとう」なんて手紙が入っていたら、ちょっとうれしいですよね。

:実は震災以降、ちょっと今のマンションって“つながり”がなさ過ぎるんじゃないかって思っているんですよ。もう少し気軽に挨拶を交わせるような雰囲気があってもいいというか。実際に倉本さんご自身はどうですか?

倉本:私が住んでいるマンションに関しては、震災の前も後も、人と人の“つながり”はあまり変わっていない気がしますね。まず、顔を合わせる機会がほとんどないですから。ただ、以前住んでいた一人暮らしの方が多いマンションに比べると、今のところは年配の方が多い分、もともと雰囲気は良いんですよ。軽い挨拶ぐらいは交わしますし、いざとなれば助け合えるような気もします。

:そういう安心感があるといいですよね。あんまり会わなくても、会ったら挨拶するという関係性というか。

倉本:誰かがにこやかに挨拶をしていたら、みんなが挨拶をしはじめるんじゃないですかね。実際、私のマンションにひとり、とっても朗らかな女性がいるんです。誰にでも「こんにちは!」って挨拶されますね。その方と出会うと、本当に疲れている時でも「こんにちは」と返したくなる。挨拶の連鎖反応なのかなって思いますね。

:万が一の際にも頼れるっていう気がしますよね。逆に、誰ひとり挨拶しないマンションでは、そういう安心感は育まれないと思う。今は共働きの方も多いので、お子さんの教育にも良くない気がしますね。

倉本:私自身、生まれ育ったのが集合住宅だったんですけど、子供同士がすごい仲良しだったんです。エレベーターが分かれていたので、奇数階と偶数階でちょっとしたライバル意識はありましたけど(笑)。ただ、そんなライバルとも学校で同じクラスになれば仲良しになれる。だから、どんどん仲の良い友達が増えていくんですよ。

:昔はそういう“つながり”があったんですよね。地域のお祭りも“つながり”を生む場ですよね。お祭りにもよく行かれていましたか?

倉本:お祭りは大好きで、最近も機会があれば地域のお祭りにいきますね。もちろん、そんなに本気のお祭り女ではないですが、盆踊りなら1~2周くらいは踊ります(笑)

:踊られるんですね(笑)今日は本当にいろいろなお話しをありがとうございました。倉本さんのお話を聞いて、たくさんインスピレーションをもらった気がします。ホームパーティをマンション内で一斉に開催して行き来するアイデアは、とても素晴らしいと思います。

倉本:マンション全体というのは難しいかもしれないけれど、5世帯でも参加できれば面白いですよね。セキュリティ面さえクリアできれば、すごく刺激になりそう。それに、震災などの万が一のことを考えれば、信頼関係や“つながり”を育む場としても機能するかもしれないですね。

:万が一の緊急時って、ただ「助けてください!」と言っても、なかなか助けてもらえないんですよ。ただ、「倉本さん助けてください!」と名前を呼ぶことができれば、助けに来てもらいやすい。だから同じマンションに住む方の名前と顔が一致するだけでも、すごく意味があると思いますよ。

倉本:なるほど。まずは、お隣や同じフロアの方のお名前をきちんと憶えることからはじめます(笑)。


インテリアモデル
倉本康子

1974年東京生まれ。ファッションモデルならではのセンスの良いコーディネートや、シンプルかつ実用的な収納テクニックが支持を集めるインテリアモデル。雑誌やテレビなど幅広いメディアで活躍する。収納・インテリア術やファッション・美容法までを惜しみなく伝える講座も人気。著書は「モデル倉本康子のHappy美人生活」、「倉本康子のシンプルアレンジ術」他。


2012/04/27

プロフィール

荒 昌史

HITOTOWA Inc.代表


1980年東京生まれ。2004年住宅デベロッパーに入社。自ら部署を立ち上げたCSRを中心に、ブランド、住宅企画・プロモーションを担当。携わった複数の住宅がグッドデザイン賞を受賞。

2010年独立、HITOTOWA Inc.設立。都市のコミュニティづくり事業を手掛け、新規物件のプロデュースから既存物件へのコンテンツ導入まで、「ネイバーフッド・デザイン」を取り入れた住宅の企画に取り組む。また、住宅・建設・自動車会社等のCSR/CSV事業も展開。社会環境問題の解決に必要不可欠な地縁コミュニティをつくるプロジェクト「Community Crossing Japan」のオーガナイザーも務めている。


●HITOTOWA Inc http://hitotowa.jp/

●Community Crossing Japan http://communitycrossing.net/

●Twitterアカウント: aramasafumi