アメリカに学ぶ、放課後改革のヒント【マンション・アフタースクール#3】

皆様、こんにちは。放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰です。
前回に引き続き、今回も私たち“放課後NPO”についてもう少し紹介をさせていただきたいと思います。

(放課後NPOHP)
http://www.npoafterschool.org

今回のコラムでは、主にアメリカの放課後NPOについてお書きしたいと思います。

アメリカの放課後改革

私たちの活動のヒントはアメリカの放課後NPOでした。2003年5月12日ニューヨク・タイムズには次のような全面広告が掲載されていました。

「さぁ午後3時です。あなたの子どもはどこにいますか?」

続けてこうありました。

「時代は変わりました。子どもたちを薬物汚染から守るためには、子どもの放課後に気を配りましょう。あなたが帰宅するまで子どもは何かに夢中になっているようにしてあげてください。なんらかの放課後プログラムに参加している子どもたちは、薬物に汚染されにくいデータが出ています」

この全面広告はある市民団体が出したものでした。ひと昔前には、「さぁ夜の10時です。あなたの子どもはどこにいますか?」というキャンペーンが、午後3時に変わったと聞きました。

アメリカでは放課後は子どもが事件に巻き込まれたり、犯罪を犯す危険な時間帯として認識されています。午後3時から6時に子どもの事件の6割が起きているというデータもあるようです。

この広告が出ていたのが2003年、そして実は90年代の終わりごろからアメリカでは大規模な放課後改革が進んでいました。その主役となったのが“放課後NPO”の存在です。

ロサンゼルスのLA’sBEST

ロサンゼルスのLA’sBEST

アメリカの放課後改革のきっかけは、“安全性”と“学力格差”であったと聞きます。

共働きやシングルマザーの多いアメリカでは、親が帰ってくるまでの間の子どもの安全性の確保が深刻な問題です。そしてもう1つ、人種や地域差による学力の格差も大きいアメリカではそれを解消する手段として放課後に注目が集まったそうです。

結果として、放課後の学校で子どもを預かり、そこで夢中になれる豊かな体験をする。そこに放課後NPOが登場してきたわけです。放課後の子どもの預かり役として、そして豊かな体験のために地域や社会の力の集め役として、活躍しているのです。

市などの行政主導により放課後が改革され、市民の応援により活動が拡がり継続していく、素晴らしい発展をとげています。有名なものでは、ボストンのシティズン・スクールズ、LAのLA’sBEST、シカゴのアフタースクールマターズなどがあり、大きな放課後NPOでは放課後プログラムの種類が500以上もあるといいます。

シカゴのアフタースクールマターズ

シカゴのアフタースクールマターズ

私たちも頑張って活動をしてきてプログラムは今では120種類以上になりました。でも当初よりこの500種類以上のプログラム、という数字は大きな目標にしています。

日本では?

ところで日本の放課後はどうなのでしょうか?

私の見解では、日本はかつて世界の中でも非常に優れた子育てシステムを持っていました。それが“地域で子どもを見守る機能”です。

国土がコンパクトで、人口密度が高く、専業主婦も多く、つまり日中の街に人の目が多かった日本は、地域で子どもを見守るリソースが多分にありました。また古来からの長屋の文化、お隣の子の面倒も見る気質、犯罪率の低さなどもあり、放課後の子どもたちは街に飛び出してのびのびと遊ぶことが出来ました。言わば地域が子どもを預かってくれていたのです。

ところがその優れたシステムがあったおかげで改革は遅れていました。核家族化、女性の社会進出、広場・空き地の減少、児童への犯罪増加なども進んでいましたが、放課後に対する改革はさほど行われず、結果として今の姿になっています。

現在の日本の子どもの放課後は何と言っても”塾”と“TVゲーム”です。少し前は受験戦争のための“塾”でしたが、今は居場所確保のための“塾”であるケースが増えています。TVゲームも同様です。家に居場所を求めた結果、躍進してきたツールです。

もちろん悪いばかりでもありません、また親御さんも迷っています。私も含め今の親御さん世代の多くはまだ、「外で遊びなさい」と言われて育ってきた世代。「外で!」と我が子にも言いたいところなのですが、どうも心配で、つい「家で…」とか「塾でも…」となっていると思うのです。

かつて放課後先進国だった日本が、放課後後進国になりつつある。もちろんそうあってはいけません。それをお手伝いしていくのが私たちの活動なのです。

マンションでは?

私も子どもの頃、マンションで育ちました。日本のマンションはおそらく、世界の中でも居住者のつながりが濃いものだと思います。それは前述したような日本人の気質によります。

でもそこで、アメリカと日本の放課後の例ではないですが、元々気質があるので、と自然に任せているとあまりいいことはありません。絆を作る仕掛けはやはり作っておいた方が良いのだと思います。

子どものため、という旗印はそういう意味では最適です。みんなの気持ちが素直に1つになることが出来ます。

ぜひ“マンションアフタースクール”が数多く実現するよう私もお手伝いしたいと思っております。きっと今までのノウハウも十分いかせるものと思っております。

今回のコラムはここまでにいたします。次回はこれまでの活動の展開、苦労したこと、分かったことなどを書かせていただきたいと思います。

次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。

平岩 国泰 hiraiwa@npoafterschool.org

2011/03/02

プロフィール

平岩 国泰

放課後NPOアフタースクール代表理事。1974年東京都出身。1996年 慶應義塾大学経済学部卒。2004年長女の誕生を機に放課後NPOアフタースクールの活動開始。日本初の“放課後NPO”の活動は、100種類以上の“放課後プログラム”が誕生し、1万人以上の子どもが参加。グッドデザイン賞(2年連続)他各種受賞。