西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!省エネ編

マンション共通の悩み。電気代削減が最初のきっかけ

西京極大門ハイツのエコへの取り組みは、一体いつから始まったのでしょうか? 佐藤理事に伺いました。

「当初はエコ意識が高かったと言う訳ではありませんでした。電気代を減らす方法探しから始まっています。というのも修繕工事の積立金不足から管理費を抑えるために出費項目の見直しに取り組んでいたら、電気代が一番大きかったんですね。1989年には年間280万円かかっていた電気代が、2012年には110万円にまで抑えられました」

エコ・プロジェクトの資料の数々。1980年から現在に至るまでの毎年毎月の電気使用量は、すべて記録されているそうです。使用量と金額の動きを把握し、新計画の論拠に用いる視点は、論理的かつビジネス的。エコ化推進には必要な観点だと実感します。

さまざまな設備の交換タイミングの度に、省電力・エコ化を視野に入れて計画を実施。モーター交換、インバーター交換、コンバーター制御のエレベーターの入替、水道の揚水ポンプ交換、高架水槽のモーター容量の低容量化、LED化、真空ガラスの導入などで省エネ化を図ってきた取り組みが、京都環境賞受賞に結びついたのだそうです。

こうした取り組みの結果、日常生活に影響を感じさせない部分で省電力化が図られ、同規模マンションと比較して、共用部の使用電力量は35%も少ないという結果に。さらに電力使用量の低減と高圧一括受電による電力単価の低下が相乗効果を発揮して、電気代は最高時の6割減となりました。

「うちは集住のメリットを最大限に活用しています」と佐藤理事。まさに、マンションならではの省エネの取り組みです。

工事費用を安く抑えるために、インターネットで公募

「設備交換を行うことで、初期投資に費用がかかるのではないかとよく訊かれます。しかし実際は、うちのマンションの工事費は、他と比べて安いんです。

なぜかというと、普通のマンションは設備交換の際に、管理会社やコンサルタントに丸投げなんですね。その手数料の分が結構高くつくんですよ。うちは、全部自分らで工事会社に見積もりと発注を行っていますから」

西京極大門ハイツでは、工事を発注する際に一貫したやり方をとっています。自分達で仕様書を作成して、インターネットで業者を募集。応募してきた業者を管理組合で審査して、その後入札。公募した方が、適正な価格でより多くの業者から選ぶことが出来るのだそうです。

仕様書づくりや業者の審査といった面倒な作業もきちんと自分達で行う姿勢は、経営編でのお話の通りです。ネットを活用して検討するなら、他のマンションでも真似できそうですね。

太陽光発電設備導入も満場一致で決議!

写真右手前のコミュニティホール屋上に設置された太陽光発電設備。正面奥が西京極大門ハイツ。

今年6月に臨時総会で太陽光発電設備導入を稟議に図ったところ、反対はゼロ。敷地内の共有施設であるコミュニティホールの屋上に太陽光発電設備の設置が完了しました。将来的には、売電事業を計画中です。シミュレーションを行ったところ、売電により年間62万円ほどの収益が発生して、11年ほどで設備費は回収できる予定だそうです。

「これは法人化した管理組合だからできることです。マンション本体は190戸の区分所有ですが、共有施設は法人の所有物ですからね。試算してみて収益が見込めるなら、ということで決断しました。

管理組合は共有財産を預かっている立場ですから、ソロバンをはじいてみて、採算が合うか合わないかで計画の実施を判断します。環境保全の取り組みと行っても、やはり現実的な側面で考える必要がありますからね」と佐藤理事。

一括受電方式への切り替え

「2006年に一括受電方式へ切り替えました。日経新聞に、福井県のマンションが一括受電方式を採用したという記事を読んだのがきっかけです。“あ、これ、おもしろいやんか”と、翌年の総会で議題にかけたんです。

それがあっさり皆に採決されまして、結局京都で初めての一括受電方式への切り替え事例となりました。これも反対ゼロ。一戸ずつにお願いした、従来の個別契約からの切り替えも、一ヶ月もかからずにすべて処理が完了して、業者さんにびっくりされたほどです」

住民一致の採決で、切り替えの移行作業も業者が驚くほどのスピーディーさで処理。住民の合意形成に、一体どんな仕組みがあるのでしょうか?

「何でもそうですが、急にすぐ明日こうします、来年値上げしますというと誰でも反対します。たとえば管理費を値上げする場合は、5年後にこうなりますという告示をします。そうすれば、総会ですぐ反対という結果にはなりにくい。情報の見える化・共有が大切なんですね」

さまざまな地道な取り組みのおかげでマンションの経理は好転。現在の管理費は、建設当時の金額にまで抑えられている上、住民への還付金まで実施されています。省エネの取り組みのおかげで、各戸の電気代も20%削減。居住者各人が自分の住戸でも省エネを実感することで、合意形成の基盤である、確かな信頼関係が育成されたのだといえます。

西京極大門ハイツの住民の方々。左から、日下部さん、大曽さん、西出さん。

住民のお一人、大曽さんは「理事さんがいろんなアイデアを実行するので新聞にも取り上げられ、近所でも有名な、自慢のエコマンションになりました(笑)」と喜んでおられます。「部屋の窓を真空ガラスに取り替えてから結露もなくなりました」と西出さん。日下部さんは「毎月の電気代の数字を見ると節電を実感しますね」とニッコリ。

省エネの取り組みのおかげで、各戸の電気代も20%削減されたのですから、みんなの目に見える省エネ効果だといえます。

皆さんが「何でも安心してお任せできます」と、口を揃えておっしゃるように、信望が厚い佐藤理事。もちろん、その信頼関係は、実は毎日の草むしりや、きめ細かな対応といった日々の積み重ねから生まれたものです。住民同士の信頼関係は、やはり一緒に暮らしてきた年月から培うものなのでしょう。

マンションは、自分の家であり、みんなの家。だからできる。

1992年に完全自主管理に移行したことも、マンション管理の「自分ごと化」が実現できたと、佐藤理事はいいます。管理組合法人を設立したことで、「経営」視点からの管理組合運営が実現しました。

「自分の住んでいるマンションだから、自分が納得するようにやるんです。決して“マンションのため、人のため”なんて大義名分は考えていません。だって自分が住んでいるマンションなんですから。自分が嬉しいことは、みんなも嬉しい。マンションって、自分の家であり、みんなの家、そういうものなんだと思います」

今後はさらに外壁面に断熱材を貼る外断熱工事の検討をしているとか。なんと将来的には全戸にエアコンが必要なくなるほどの設備が理想だそうです。築37年のマンションでも、ここまでのことができるんだと、マンション・ラボ編集部もびっくりです。

最後に佐藤理事に、こうした取り組みはどこのマンションでも実現できるものでしょうか、と問いかけてみました。

「全国でマンション居住世帯は、世帯総数の40%超を占めるといわれています。京都議定書で約束したCO²削減目標、その後日本政府が更なる国際公約している削減目標を達成するためには、もはや企業のみではさらなる削減は難しい状態です。

本来なら生活の場でのCO²削減が求められるところですが、集合住宅での取り組みは遅々として進んでいません。これは、エコ意識の高い人がいても、集合住宅では全体での合意形成が困難を極めるからです。

こうした中、西京極大門ハイツでの取り組みは、すべてといってよいほど、全員賛成で進められてきましたし、いまも着々と省エネ化が進んでいます。

それは、CO²削減が経費削減に繋がるとともに生活がより豊かになることが、一人一人の居住者にも実感される仕組みを作ってきているからです。管理組合がCO²削減を進めれば、決算時に戻ってくる管理費が増えるわけですから、誰にでもわかりやすい。

『DO YOU KYOTO?クレジット認証証明書』

CO²削減に伴う排出権売買についても、マンションでの取り組みは皆無に近い状態ですが、我々は『DO YOU KYOTO?クレジット制度』に登録しています。削減されたCO²は、サッカーチーム京都サンガの試合で生じるCO²削減義務のために買い取られ、地元へ貢献する活動にも広がっています。これも目に見える取り組みのひとつですね。

こうした省エネの取り組みを行うことによって、個々人の電気やガス代の負担が減った上に、排出権売却によってCO²1トンにつき1万円が戻ってきます。決してボランティア的な高い環境意識などなくても、経済的な合理性が誰の目にも見えるとCO²削減の取り組みは進みます。

マンションは、集合して住んでいる、設備・建物を共有している、多数の人が一つ屋根の下に生活している、といった特異性があります。合意形成の手法をきちんと見極めれば、西京極大門ハイツのような取り組みは、特に難しいものではありません。

戸建住宅でのCO²削減に向けての取り組みを拡大するよりも集合住宅の方が一見、壁は高いように見えますが、アプローチの仕方によっては容易に進むという実践例として考えていただければ」

省エネ化の推進と、そこから得られる高い効果は、集住のマンションだからこそ実現できるのだということを、力強く感じました。スゴイ!と驚くだけでなく、マンション居住者ならみんながこうした取り組みを実現できるんだという意識を持って、皆さんも、マンションの省エネについてもう一度考えてみませんか?

その他の記事はこちら
西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!経営学編
西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!コミュニティ編
西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!高齢者対策編

西京極大門ハイツのこれまでの取り組み

2004年
・屋上防水改修工事にあたり屋上前面に断熱材を敷設
・エレベーター巻き上げ設備をインバーター方式に切替

2005年
・揚水ポンプ設備を貯水方式から加圧式(省エネタイプ)に改修(電力使用量の削減)

2006年
・高圧電力一括受電方式に切替(電力使用量の削減)

2009年
・住戸分電盤交換工事

2010年
・「西京極大門ハイツ 第二期まちづくり マスタープラン」策定
・屋上換気扇のインバーター調整(電力使用量の削減)

2011年
・住戸窓を真空ガラス スペーシアに交換(省エネ・結露防止・遮音)
・共用灯LED交換工事
・DO YOU KYOTO?クレジット制度登録(CO2排出削減量をクレジット認証・取り引きする制度)

2012年
・共用給水管敷設工事
・住民電気容量改修工事(全戸にIHクッキングヒーターを設置するため)

2013年
・コミュニティホール屋上に太陽光発電設備を導入(売電事業への参入計画)

西京極大門ハイツ

京都駅からバスで10分ほどの住宅地にある西京極大門ハイツは、管理組合法人で自主管理を行う190戸のマンション。第一次オイルショックの1976年に建設され、完全自主管理に移行したのが1992年。以来、経営という視点で管理組合運営を行い、あらゆる面でよりよい暮らしの仕組みづくりに大胆に取り組んでいます。2011年には第9回 京都環境賞 特別賞(市民活動賞)を受賞。

(写真撮影:合田慎二)

2013/08/29

↑ page top