マンション理事のつぶやき~管理組合理事に選ばれたら、あなたならどう行動しますか?

マンションの管理組合理事に選ばれたら、あなたはどう行動しますか?

「仕事で忙しい」を言い訳にして理事会活動を疎かにしていませんか?
コミュニティは大切と心のどこかで思いつつ、自分のマンションではなんとなく積極的に活動できない矛盾。みんなどこかでこの矛盾を抱えているような気がします。
今回は、マンション理事の一員としての活動を、時々SNSで発信されている中谷泰敏さんにお話を伺いました。

中谷さんの、とある日の投稿をご紹介してみましょう。

マンションガーデン。
ベランダの花を庭に植えたい、とおばちゃん。
今朝一緒に庭仕事。
会話するのも初めて。

僕はねぇ、2011年は輪番の理事長でした。
住民の顔もロクに知らないで、理事長ってねぇ。(個人の感想です)
今の方がよほど感謝される。
あの理事会があったからですが。

まあ、74世帯ならまだイケる。
大規模、500世帯とかはアナザーワールドだろう。

マンション。
そこは、都会の村だ。ずっと同じ建物に住むのだから。

今朝思ったよ、村だと。
そこ、わかって買っている人はいないだろう。

マンションの中庭のガーデン。ベランダの花をそこに植えたいという住民のお手伝いをして庭仕事をする様子が伝わってきます。

「マンションは都会の村」
しかし、いまその村の結びつきは希薄です。

声をかける、庭仕事を手伝う、そんな小さなやりとりから人間関係を積み重ねていくのが本来の姿なのではないでしょうか。

今回はそんな中谷さんの、理事として、マンション住民としての取り組みを伺ってみました。

「できることをしよう」と、管理組合の理事長に

中谷さんとお子さん。

中谷さんは、築12年、74戸の都内のマンションにお住まいです。2011年7月に輪番制で理事の仕事が回ってきたとき、やるからには理事長に立候補してしっかりやろうと心に決めていたと言います。

中谷さん「それまではマンションの総会にも一回も出席したことはありませんでした。しかし輪番制で理事の順番が回ってきたとき、『良い機会だな』と思ったんです。それにいい大人が、理事長をあみだくじで決めるのも何だかなぁと思っていたので、やるなら理事長に立候補しようと決めていました」

マンションの活動に興味がなかった中谷さんが、輪番制理事とはいえ、理事長に立候補してまで積極的に関わろうと思われたのはなぜでしょうか?

中谷さん「東日本大震災が起こったことが自分の中では大きいですね。発災後の4月は、ツイッターで流れる被災地の現状と平常運転の自分の暮らしとのギャップに悩みました。真夜中に涙が止まらなくなってしまったり。今思うと心の調子がおかしくなってしまったのだと思います。

その後、ツイッターで知った『ふんばろう東日本』の被災地支援活動に参加しました。最初は中古家電を高島平で集めて、被災地に送るプロジェクトでした。みんなで中古家電集めて、きれいに掃除して、夜9時にトラックに積み込んだ家電が、翌日朝に石巻市の小さな町で配布されていました。その様子をブログで見て、被災地は直接つながってる、自分にも出番があるんだと実感しました。その後、様々な支援活動に関わり、ひととひとのつながりの大切さを知りました」

ふんばろう東日本支援プロジェクト

東日本大震災を機に、SNSを活用して立ち上がったボランティア組織。
早稲田大大学院客員准教授の西條剛央氏がSNSで被災地支援を呼びかけたことが発端。物資支援や自立支援系などさまざまなプロジェクトを立ち上げて活動。参加ボランティアは2,500名を超えた。「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2014」、Prix ArsElectronica ゴールデン・ニカ受賞。

http://fumbaro.org

中谷さん「しかしボランティア活動と比べて、自分の足元を振り返ってみると、自分のマンションや子どもの学校では何もやってない。3.11の日も、小学生の娘がマンションに一人だったんです。いざというときに家族を心配しあう関係もなかった。10年暮らしていても、です。今、東京で災害が起きたときに自分たちは助け合えるのか、土台のコミュニケーションがあるのか、と考えるようになりました。理事になって、できることをしようと思ったのは、そのこともあります」

東日本大震災とボランティア活動から、人とのつながりを深く考えるようになったという中谷さん。自分はいままでネット弁慶でリアルな関わりをちゃんとやってこなかったことに違和感を感じたと言います。

東日本大震災以降、多くのマンションが住民同士の助け合いの大切さを痛感し、コミュニティの必要性を感じました。しかし実際に行動に移す人は少ないはずです。

マンション理事会に積極的に関わろうと決意した中谷さんは、「できることをやろう」というスタンスで、いろいろな人と関わり、一緒にアイデアを実現してくれる人と行動していきます。

たとえば、マンションでは初めての食のイベントとして、餅つき大会やBBQを開催するなど。発案者は中谷さんですが、餅つきのうまい、小学校や保育園のオヤジの会のお父さんにお願いしたり。それぞれに得意な部分を担当して有機的に助け合うのは、ボランティア活動と一緒です。どこのマンションでも一緒にやってくれるメンバー集めは大切な課題ですね。

わかりにくい長期修繕計画を住民目線で説明

中谷さん「2011年に理事長になったときは、まず人と知り合うことから始めたので、いろいろなことが実現してきたのは去年くらいからですね。いまは、修繕委員をしています。2015年秋の大規模修繕に向けて、修繕計画のデータを見てチェックし、みんなにわかりやすい形のスライドで報告する説明会を、先日行いました。総会の報告書って、読みにくい数字の羅列ばかりでちんぷんかんぷんでしょう?それを僕なりに読み込んで、もっとみんなにわかりやすく伝えて、情報を共有したかったんです」

中谷さんの資料は、「“そのうち”なんて当てにならないな。いまが“その時”さ」というムーミンのスナフキンの言葉を引用したり、修繕計画の全体像が見える図式を使ったり、とにかくわかりやすいものです。こんな風にわかりやすく伝えてもらうと、マンションに今いくらあるのか、どのくらい使っていて、修繕にはどのくらい必要なのかについて理解しやすくなります。

また、住民に修繕計画についてわかりやすく伝えるための説明会をマンション内で開催するなど、事前に情報共有を行いながら進めている点も、見習いたいポイントです。いきなり決定事項を伝えるのではなく、段階を踏みながら住民全員で一緒に考えていく姿勢は大切ですね。

マンションのエントランスホールで開催した説明会の様子。

中谷さん「説明会も、エントランスにみかん箱を置いて座って貰って行いました。約半数の世帯が参加してくれました。総会は近隣で会議室を借りてやっているんですが、目立つエントランスでとにかくみんなに関心を持ってもらいたいと思ったんです」

ゲリラ的に、住民向けメルマガ配信を続ける

中谷さんは理事会の仕組みの改革にも意欲的です。議事録もすぐにgoogle docでネットにあげて、住民同士で共有します。

さらに2014年7月から、メールアドレスをもらった住民にメルマガを配信。月に1〜2回ほど、他のマンション事例の情報や、日々考えていること、マンションで起こった問題などを書いて配信しているそうです。

中谷さん「自分ひとりでやっているから、ゲリラ的なメルマガみたいなものですけどね。送信ボタンを押したあとは、恥ずかしくて住民の誰とも会いたくないですね(笑)。ラブレターと一緒で、メルマガを書いているときは気持ちが乗っているからどんどん言葉が走っちゃう。まだそんなにリアクションはないですけど、長く続けていくとボディブローみたいに効いてくるのかなって思っています」

半年ほど続けているうちに、BBQなどみんなで顔を合わせたときに、少しずつメルマガのコメントをもらったりするようになってきたそうです。中谷さんの狙いは「マンションに関心のある住民づくり」。

中谷さん「自分もいままで関心のない住民でしたし、関わりたくないというのも自由です。けれども、『関心のある住民』の比率が高いほうが、総じて良いマンションになります。それは『関わりたくない』ひとにとってもメリットです」

マンションも自分も年をとる、考えるのが面倒でもとにかくやろう!

マンションでの修繕委員会の様子。

いまやっている修繕委員会には、設計士の人や、区民農園を一緒にやっている人など、仲間のようにつきあえる人が集まっているそうです。

「自分たちのマンションのためにできることをする」という共通意識のもと、和気あいあいと取り組んでいるのだとか。

長期修繕計画は、マンションが年をとっていくのを少しでもよくしていくための仕組みづくりです。中谷さんは、まず知るところから始めよう!と言います。

中谷さん「マンションは、50年60年の物語です。『住民も年をとる。マンションも古くなる。社会も変わる』。これは、”約束された現実”であり、これを否定できるひとはいません。つまり、状況は必ず変わる=現状は維持されない、ということです。『何もしない(考えない)』という選択肢はありません。僕は、これを住民の『共通認識』にしたいと考えています。

今後10年、20年、30年、40年と、様々な議論が起こるでしょう。そのとき、『いまのままでいいから考えない』ということだけは、やめましょうと言いたいのです。まずは、マンションの現状を共有するところから始めます。道のりは長いですが、まぁ、向こう何十年という時間はありますからねぇ(笑)」

お互いを知る、マンションの現状を知る、そこからスタートして、マンション全体で共通の目的を持つことが大切だと中谷さんは言います。

しかし、みんなが共通の目的や認識を持つにはどうしたらいいのでしょう。誰もが同じ考えを共有するのは、ときに難しい場合があります。異なる意見や考え方の人も出てくるはずです。もしかすると文句を言う人もいるかもしれません。そんなとき、中谷さんはどんな風にモチベーションを保つようにしているのでしょうか?

中谷さん「マンションは十年単位で長く暮らす場です。そこに自分の暮らしを続ける土台をつくりたい。同じ環境に暮らすもの同士で助け合える雰囲気を作りたい。

ボランティア活動のときもそうでしたが、一つの目的を明確にすればみんな同じ方向を向けるのです。ボランティアでは『被災地支援』が目的でしたが、マンションは『みんなが幸せに長く暮らせる住まいにしよう』という目的がある。僕だって、住民とニコニコ挨拶するようになったのはここ数年のことですよ。

少しくらい恥をかいてもいいし、何か文句を言われてもいい。それはそのとき話して解決していけばいいのです。やらなきゃゼロです。

理事会の話し合いで何か提案があがったとき『誰かにクレームもらうんじゃないか』『言われたら困るな』的なことがあると思います。ある程度想定することは大切ですが、『見えない誰か』を過剰に気にしすぎると、『クレームをもらわないこと』が目的となります。

するとそれが『みんなが幸せに長く暮らせる住まいにしよう』という目的を上書きしてしまい、クレームをもらわないためには『何もしないことが最良手段』となってしまいます。ある程度は、クレームをもらってもいい。

僕は、目先の面子より、未来の名誉を取りたいです。20年後、僕は60歳です。そのとき『あのときああいう活動があったから、こんなマンションになれた』と言われたい。いまやらなければその可能性はゼロですからね」

中谷さんのマンションコミュニティは、現在進行中。でもそこには確かな土台が出来上がりつつあるようです。今後の取り組みに期待したいですね。

2015/02/09

e-mansion life ×マンション・ラボ スペシャルアンケート&プレゼント
↑ page top