ファミール伏見の理事会に学ぶ!マンションの資産価値におけるコミュニティの役割

マンションには、住民の歴史が刻まれています。マンションブーム初期の時代から現在に至るまで、42年に渡ってずっと良質なコミュニティを育んできたマンションがあります。3世代に渡って住む人もいるという、そのマンションの魅力の秘密は何でしょうか?

築42年、3世代に渡って住む人もいる“故郷”のようなマンション

ファミール伏見

1972年に、京都市内で初の高層マンションとして竣工。地上11階建て・280戸・3棟構成。管理組合と自治会を兼ねて運営を行う。京都市「HOPEすまいる文化賞」をはじめ受賞多数。熱心なコミュニティ活動が、さまざまな自治体やメディアで取り上げられる。

ファミール伏見の管理組合兼自治会の理事長兼自治会 会長の高木さん、副理事長の田村さん、副理事長の堀内さんの3人の方に、お話を伺いました。

写真左から、管理組合兼自治会 副理事長の田村さん、理事長兼自治会 会長の高木さん、副理事長の堀内さん。

ファミール伏見は、1972年に京都市内で初の高層マンションとして完成しました。入居当初は、医者、教師、弁護士といった職業の人々が住む高級マンションだったそうです。いまでも3世代にわたって住む人もいるという、まるで“故郷(ふるさと)”のような存在のマンションとして豊かなコミュニティが育まれています。そもそも、コミュニティが出来上がるきっかけは何だったのでしょうか?

高木さん「京都市で初の高層マンションということで、施工会社もマンション建設自体に不慣れな時期だったのでしょう。入居後に、屋上からの漏水や風呂釜のひび割れなど、建物のトラブルがいくつか発生したのです」

田村さん「それで、まず奥さん達が結束しましてね(笑)。翌年の総会で、不具合の改善についての活発な討議が行われました。いわば最初のトラブルが住民の結束の基盤になったようなかたちです」

トラブル解決に一致団結してあたることが住民同士の結束を強固なものにするというマンション事例は多いものです。まさにその通り、同世代のファミリー層の入居者が多かったこともあり、ファミール伏見ではこれらトラブルに対応するために、自然なかたちで自治会が設立され、コミュニティの基盤が最初にしっかりできあがりました。

管理組合の役員=自治会の役員で円満なコミュニティ形成

さらにファミール伏見がユニークなのは、初期の段階で管理組合と自治会とを一体化させたことです。

田村さん「そもそも自治会が最初にできていて、管理組合はそのあとにできました。当時はまだマンション自体が黎明期で、マンションができたら必ず管理組合をつくるという規則もなかった時代です。ただ、自治会も、管理組合も、マンションを暮らしやすくするために活動するという点では同じ目的を共有しています。一緒にした方が効率はいいと思いますよ」

3棟あるマンションには非常階段が14本設置されており、同じ階段1本を共有する20戸に付き1名の階段理事を設けています。ヨコにつながるのではなく、タテの階段を通してグループ化しているのは、スキップ方式に停車するエレベーターということもあり、階段が住民の生活の中心となっているからです。集合住宅では、よく使う生活導線の場から顔見知りができていくことを考えると、それも自然な流れなのでしょう。

ファミール伏見の管理組合・自治会には、管理会社との対応や建物の維持・管理全般を担当する管理委員会、高齢者対策や防犯など全般を担当する生活環境委員会、自治会や学区の行事を担当する行事委員会という、3つの委員会があります。管理組合・自治会のメンバーと階段理事は、これら3つの委員会に横断的に関わります。

その他に、住民同士の親睦活動としてのサークル(ファミール会、なかよし会、寿会、女性の会)、ファミール新聞編集委員会、自主防災部などがあります。サークル活動では、子育て世代の「なかよし会」、高齢者の「寿会」をはじめ、ゴルフや卓球、麻雀などの自主的なサークルが数多くあり、関心のあるイベントで複合的な交流ができます。また地域とのつながりでは、ファミール伏見が属する藤森学区という地域の活動にも積極的に関わっています。かなりしっかりと組織立てが成されているのがよくわかります。

田村さん「管理会社に管理業務をお願いしていますが、マンション管理について勉強してしっかりとした専門知識を持っている住民もいますので、アドバイザーとして、業者選びから工事の施工チェックまで細かいところをチェックしてもらっています。いろいろな面で業者任せにしないで、都度自分達で判断することが大切ですから」

住民が、管理に関して意識が高く積極的に関わっていることがわかります。しかし管理組合・自治会の後継者問題に頭を悩ます点は、他のマンションと同様です。最近では若い子育て世帯も入居しているため、今後に期待するところだそうです。

マンションの語り部的な存在、広報誌「ファミール伏見新聞」

自治会やサークル活動などの多岐にわたる住民の活動をひとつに結びつけ、住民の情報共有の場となっているのが、1984年から発刊されている広報誌です。発刊当時は手書きのガリ版刷りの「ファミール伏見だより」として始まり、一時お休みした時期もありましたが、現在も毎月1回カラーで「ファミール伏見新聞」として発行されています。発行回数はすでに第270号も超え、発行長寿記録を更新中。現在の編集委員は12名、堀内さんも編集部員のひとりです。

堀内さん「毎月の編集は大変ですけれど、楽しみにしている方もいるので休刊したことはありません。内容も、季節のお祭りやイベントレポート、工事のお知らせやサークル活動、転入・転居情報に至るまで、1枚の新聞にたっぷりと必要な情報を詰め込んでお伝えしています」

発刊第1号からきちんとファイリング保管もされていて、時代の変遷を映し出しながら、住民の歴史をつぶさに報告してきたマンション内メディアとして貴重な資料となっています。こうしたマンション内メディアが、住民をつなぐツールとしてうまく機能しているのでしょう。

長年に渡って発行されているマンションの広報誌。1984年6月1日発行の記念すべき第1号には、なんと「夕暮れに5〜6ぴき こうもりがやってくる」というニュースも!この当時から、マンション内のシニアの「寿会」の活動が活発だったこともわかります。

お祭りごとはコミュニティの基本、地域の伝統のお祭りとも連携

春、満開の桜の木の下で行われる桜祭り。

みんなの協力がないとできない、季節のお祭りや地域のお祭りごとが活発なのも、ファミール伏見のコミュニティを貫く根幹になっているといえます。

高木さん「ある意味、マンションがひとつの町内みたいなものですからね。夏祭りには、個人協賛者を募り、抽選会でプレゼントする景品を揃えます。今年も158名の協賛者から32万円ほどの寄付をいただきました。景品は生活用品などですが、皆に何かしら当たるようになっているので、例年好評です」

春の桜祭りでBBQや豚汁を提供して、その売上金の一部を災害復興支援金として被災地へ寄付したこともあるそうです。手間はかかるけれども、やはりこうしてみんなで実施するイベントが、マンションをひとつにつなげるのだといいます。

田村さん「たまに、マンションは何もしなくていいから楽だと勘違いしている人もいらっしゃいますが、大勢の人が集住するマンションだからこそコミュニケーションが必要なのです。人の輪に入ろうとする努力をしないと、自分でマンションを住みにくいものにしてしまうのではないでしょうか」

夏祭りには、引っ越した元住民もやってくることがあるといいます。住民がマンションを故郷のように感じている証しなのでしょう。

防災への取り組み

マンション住民の高齢化と防災対策は、現代のマンションの課題です。ファミール伏見でも、災害後もマンションでいかに助け合い、安全に滞留することができるかをテーマに、防災へ取り組んでいます。

堀内さん「防災訓練で、起震車を使った地震体験もしました。揺れが発生することがわかっていても動けませんでした。やはり体験することは大切ですね」

バールや縄、担架などのマンションに必要な機材を備蓄したり、BBQの炭を使って炊き出しができるように備えたり、緊急時の連絡先リストの完備など、消火・救命・救助の面で、できることはすべて取り組んでいます。

顔が見えるマンション、住民の心をつなぐシンボルツリーの存在

ゆったりした敷地内にある、緑豊富で贅沢な中庭。子ども達はこの中庭で遊んで育ちます。

マンションの中庭に枝を広げる立派な桜の木は、ファミール伏見のシンボルツリー的な存在。30年ほど前に古紙回収の収益で購入した桜の木は、いまでは吉野桜3本、八重桜1本、枝垂れ桜2本の合計6本となり、緑溢れる中庭となっています。

常にマンションと共に成長してきた桜の木々は、シンボルツリーとして住民と住民の心をつなぐ役割も果たしているのではないでしょうか。成長した子ども達が帰って来たときにも、変わりなく迎えてくれる木々やマンション、両親の顔。変わらないで存在するものが、マンションへの愛着を湧かせる存在になるのでしょう。

また、ポストに名前を出さないマンションが増える中、ファミール伏見では、管理棟前に全入居者の名前が入った案内板を設置しています。賃貸入居者も、こうした点については理解を示しており、自治会活動などに関してトラブルはほとんどないそうです。

顔と名前の見えるマンションとして、良好なコミュニティを培ってきた歴史があるからこそ、住民にとっては愛情が染みこんだ“故郷”としてのマンションになっているのではないでしょうか。

中庭に面した場所に、京都ならではのお地蔵さんと入居者案内板が並んでいます。

ファミール伏見は、良好なコミュニティが存在して、建物の維持・管理も適正に行われていることから、中古物件価格は売値より値上がりしており、資産価値も向上しているといいます。今後は、管理組合兼自治会として、マンションのためのさまざまな施策を論議しているようです。

高木さん「たとえば将来的には、これからの高齢化社会に備えたデイケアサービスのマンション内誘致や、管理組合で空き室を買い取って賃貸に回す空き室対策なども検討しています。年数を積み重ねるほどに強くなるマンションを目指して、次世代に受け継ぐことができるように、いまあるコミュニティ基盤を大切に守っていきたいですね」


マンションの資産価値には、良好なコミュニティがあるかどうかということも、ひとつの判断基準になりつつあります。長年に渡って住民同士が良好なつきあいを行っている、成熟したコミュニティが存在していること。それは、建物の維持管理、防犯、防災、交流、地域との連携など、さまざまな面に波及します。
「マンションは管理を買え」と巷ではよく言われていますが、良好なコミュニティがあるマンションは、自ずと管理もしっかりしているものです。もしかするとこれからは、「マンションはコミュニティを買え」と言われる時代になっていくのかもしれませんね。あなたはどう考えますか?

2014/10/24

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