高齢化+IoTの先進国・北欧で見つけた未来のマンションライフへのヒント② ~デバイスで入居者の安全を見守り、アートで心豊かにするシニア施設~

北欧のシニアが住む集合住宅や施設でのIoT活用事例について、一般社団法人ケアリングデザインの代表理事 小野由記子さんにお話を伺うシリーズ。1回目に続いて、2回目は、ノルウェーのシニア施設です。

ノルウェー最大の木造建築のシニアケア施設、自然素材が果たす役割とは?

木造建築「ウルル・ヘルスビッグ」の中庭は、プランターの緑が楽しめる設計となっています。

小野由記子さんが代表理事を務める一般社団法人ケアリングデザインが、2018年6月にフィンランドとノルウェーのシニアの集合住宅や施設、個人住宅を視察したときのレポートから、北欧でどのようにIoTがシニア向けに活用されているのかについてご紹介しています。

今回は、ノルウェーの首都オスローから列車で約1時間、アーケシュフース県フロン市にあるシニアのケア施設「ウルル・ヘルスビッグ(Ullerud Helsebygg)」です。「ウルル・ヘルスビッグ」は、ノルウェーでも最大の木造建築4階建てのヘルスケアセンターで、2017年3月に竣工したばかりです。

木造建築「ウルル・ヘルスビッグ」は、建物の内外にアート作品を取り入れているのも特徴のひとつ。外壁に取り付けられた彫刻家によるオブジェは、夜には青く発光して外観を彩ります。

小野さん
「ウルル・ヘルスビッグ」へ伺う前に、ノルウェー生命科学大学でAnders Qvale Nyrud教授に、木材などを活用した建築物の自然素材が、人にどのような効果を与えるかについてのミニレクチャーをしていただきました。
単に木造だとあたたかみを感じるという感覚的なことだけでなく、研究者による実験結果からも、病院やシニアのケア施設を木造にすることで心理的・情緒的効果が高まることが実証されています。

センサリングデバイスで室内の快適さや入居者の安全を見守る

入居者の居室。窓からは、豊かな緑の森が見えます。

「ウルル・ヘルスビッグ」では、160名、平均年齢85歳の入居者が、24時間ケアサービスを提供されています。居室は、玄関ホール・ベッドのあるリビング・バスルームのゆったりした3ルーム構成です。

居室入口には、操作パネルがあり、施錠・室温・照明のコントロールができます。

館内ではノルウェーのヘルステック企業SENSIOのセンサリングデバイスによる見守りが常時行われており、入居者はブレスレットやブローチ型のセンサーを身に付けます。一定時間センサーが動かなくなると起き上がれなくなったと判断してアラートを発し、スタッフルームのモニターに知らせます。

居室は開き戸式。玄関ホールを入るとベッドのあるリビングへ続きます。金具は杖をホールドするもの。

小野さん
センサリングデバイスは居室内にも設置されていますが、カメラで監視されているような印象を与えるものではなく、目立たない配慮がなされています。
居室の玄関部分にカラフルな家具を置いたり、杖をホールドする金具が玄関すぐの壁に設置されていたり、使い勝手を考えたくらしのデザインが施されているのが良いですね。

共用部のエントランスやスパにIoTを導入

エントランスホールのデジタルサイネージ。最寄駅の発車時間やイベントなどを告知します。

共用部分には、ビッグキッチン付きリビングルーム、ジム、スパ、ビューティーサロン、事務所、カフェテリアなどがあり、充実した居住者サービスが提供されています。

共用部のスパにある昇降式バスタブと照明。多様な照明コントロールができるようになっています。

アート予算は約350万円! IT+アートで心の豊かさを

エレベーターホールの壁面には、各フロアのゾーニングを示すアート作品が飾られています。

小野さん
ウルル・ヘルスビッグには芸術委員会が設置されていて、日本円で約350万円(250万クローネの内訳:フロン自治体から200万クローネ、パブリックアートを推進する公的機関KORO Public Art Norway から50万クローネ)の予算を使って、建物および施設内のアート作品を依頼したそうです。
施設内に設置したアート作品だけを紹介したアートブックまで制作されていて、アートへの関心の高さを感じます。「日常生活の中にあるアートは、居住者だけでなく、訪問者やここで働く人々、すべての人のためにある」というコンセプトのもと、アートを取り入れている姿勢が素晴らしいと思いました。


シニアのためのケア施設ウルル・ヘルスビッグでは、居住者の安全管理面で最新のIoTが採用されている一方で、心の豊かさを生み出すアート作品をふんだんに配していました。IoT技術とアートは相反するもののように見えますが、うまく融合して取り入れることで、居住者にもスタッフにも居心地の良い空間を生み出すことができるのですね。

私達の未来のマンションライフも、IoT技術とアートをバランス良くうまく取り入れていけるといいですね。

(写真提供/CARING DESIGN、SCORE)

2018年11月14日〜27日、西武池袋本店7F特設会場にて「くらしのデザイン展2018」を開催予定。今年のテーマは『いまどき 方丈』。期間中 、11月19日には阿部勤氏と中村好文氏による「いまどき 方丈」トークショー(外部リンク)、
11月21日にはヤドカリによる「タイニーハウス入門」セミナー(外部リンク)を
池袋コミュニティカレッジにて開催。

2018/10/15

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