被災時こそ、簡単でおいしい炊き出しが食べたい!熊本地震の被災地支援から生まれた、新しい炊き出しのレシピとあり方とは?

川崎市のマンション住民が呼びかけて、熊本県益城町へ支援物資を送ることから始まった市民レベルの被災地支援活動。やがて現地での炊き出しノウハウが「おいしいミニ炊き出しレシピブック」という1冊の本にまとまり、いま各地の防災イベントで「災害時にも食べなれた味でおいしく」を合い言葉に、ミニ炊き出しの知見がじわじわと広がりつつあります。
「草の根防災」とも言える、この取り組みのリーダーにお話を伺いました。

きっかけは、熊本の被災地へ支援物資を送ることから始まった

山本美賢さん・詩野さんご夫婦にプロジェクトの成り立ちのお話を伺いました。美賢さんは、「減災ラボ」で減災社会実現へ向けての取り組み、詩野さんは「溝の口減災ガールズ」の代表として、被災時に食べ慣れた家庭の味を呼びかける活動を行っています。

2016年4月に熊本地震が発生。二度の大きな揺れによる被害の大きさに、日本全国が驚愕し、活発な被災地支援活動が行われました。

以前マンション・ラボで、3つのマンションが連携した「炊き出しフェス」をご紹介した川崎市溝の口にある「パークシティ溝の口」の山本美賢さん・詩野さんご夫婦も、その一助となるべく奔走されました。

マンションは、つながるとパワーアップする!?3つのマンション共同主催の防災「炊き出しフェス」山本さんが理事を務める「パークシティ溝の口」と同じ町内の合計3つのマンションが連携して実現した「炊き出しフェス」の様子。

美賢さん
同じ地区にある「パークシティ溝の口」「ザ・タワー&パークス田園都市溝の口」「メイフェアパークス溝の口」の3つのマンションは、以前から交流がありました。熊本地震発生直後に、いつも仲良くしている「ザ・タワー&パークス」に住む熊本出身の女性の弟さんが益城町に住んでいることがわかり、3マンションで協力して支援物資を送ろうということになりました。

熊本地震直後、マンション住民を中心にPTAや友人のつながりを通じて、溝の口と大岡山の2箇所から、支援物資合計ダンボール90箱、義援金40万円を熊本県益城町へ送りました。

詩野さん
東日本大震災のときにSNSなどで呼びかけて支援物資を送った経験から、被災地のニーズは刻々と変わっていくことがわかっていました。益城町でキーパーソンとなる人とコンタクトをとり、ニーズの変化に応じて、本当に必要なものを厳選した支援物資と義援金を集めました。おかげで今回は、使えない物資はなかったのが良かったです。

詩野さん達が東日本大震災の被災地への支援物資を集めたときには、真冬にもかかわらず、水着や夏用の衣類などの家庭の不用品を送ってくる人たちがいたそうです。それは、被災地で何がいま必要なのか、もらって使えるものなのかということを考えもしない「想像力の欠如」なのだと、詩野さんは言います。

以前陸前高田の仮設住宅の方々にお話を伺ったときにも、支援物資の問題点について述べられていました。支援する側が、想像力を働かせて支援物資を送ることが重要です。

陸前高田から学ぶ防災の教訓~いまも続く仮設住宅での生活~マンション・ラボが陸前高田の仮設住宅にお住まいの方々に伺った、震災直後にすぐ必要なもの・配付ルール・問題点をご紹介しています。

支援する側は、いま被災地で何が必要か想像力を働かせて、可能な限り、変化する現地の情報を入手して物資をまとめる。支援される側は物資をどう使ったのか・いつ何が活用できたのかという情報を共有する。この2つの情報がうまく組み合わせられれば、いつどこでまた災害が起こっても、みんなで共有できる防災知識となります。

益城町で行われていたご近所さん同士の「ミニ炊き出し」の効果

益城町で民家の軒先でご近所さんが集まって「ミニ炊き出し」。これならマンションでも出来そうです。

地震が落ちついたあと、山本さん夫妻は仲間と益城町を訪れて、被災時に感じた良かったこと・困ったことをシェアする座談会の場を持つなどして交流を続けます。

詩野さん
地震の後、中華料理店の方が停電で使えない冷蔵庫のストック食材を使って、お店の軒先で調理をする「ミニ炊き出し」を行ったそうです。ゴミ収集車がくるめども立たないので腐敗しないようストック食材を無駄にしないためだったそうですが、余震が続く中でみんなで一緒にごはんを食べる安心感もあったと聞いて、顔の見える関係同士の「ミニ炊き出し」の効果に気付きました。

美賢さん
それと「炊き出し」というとガッツリ大鍋で豚汁やカレーを作ってみんなに配給というイメージだったのに、益城町では、お母さん達が集まって工夫しながらいつもの食べ慣れたきんぴらごぼうやマカロニサラダを作ってバイキング形式で並べていたのも驚きと発見でしたね。なんだ、こういう形で出来るんだ、と。


確かに私達は「炊き出し」と聞くと、自衛隊や行政から提供されるものと思いがちですが、自分達でストック食材を持ち合い、助け合って「ミニ炊き出し」を行えることこそが「共助」なのですよね。

益城町の「ミニ炊き出し」が、マンションの防災イベントやレシピブックに結実!

「炊き出しフェス」での「ローリングストックワークショップ」の様子。みんな興味津々です。

益城町との交流から、「ミニ炊き出し」を行った益城町の中華料理店の満田結子さんにお話を伺い、家庭のストック食材を使って、水と燃料を節約しながらできる時短調理、食べ慣れた味の良さを実感した川崎のメンバはー、その年の夏には3つのマンション共同開催の「炊き出しフェス」を開催。それぞれの場で、益城町の経験から学んだ「ミニ炊き出し」のレシピを広めていきます。

やがてクラウドファンディングを成功させて印刷費用を調達し、現地での炊き出しノウハウを1冊の本にまとめた「おいしいミニ炊き出しレシピブック」を出版することになりました。

「おいしいミニ炊き出しレシピブック」は、プロのカメラマン、デザイナー、料理家、編集者、ライターが結集して制作。毎日開いてもらうために、従来の防災本にはない、おしゃれでわかりやすい誌面構成となっています。

「おいしいミニ炊き出しレシピブック」購入はこちらから※外部サイト(からだにいいことスタイルSHOP)

美賢さん
この本で紹介したレシピは、マンションの防災イベントでも、大勢での持ち寄りパーティでも活用できます。1冊の本にまとまったことで、もっと多くの人に「ミニ炊き出し」の意義や調理方法を紹介することができるようになると期待しています。

夏に秋葉原で行われた「復興バー」では、山本美賢さんがマスターとなって「おいしいミニ炊き出しナイト」を開催。お酒を飲みながら「ミニ炊き出し」レシピが楽しめて、いざというときの防災知識にもなるという一石二鳥イベント。

9月には、神奈川県中原区防災訓練で「おいしいミニ炊き出し」ワークショップを開催。どんどん地域に広がっていますね。

いま「おいしいミニ炊き出しレシピブック」の知見は、各地の防災イベントで「災害時にもおいしく」を合い言葉に、どんどん広がりつつあります。全国の人がこの「おいしいミニ炊き出しブック」のレシピを楽しみながら覚えられれば、防災はもっともっと楽しく役立つものになるに違いありません。

「おいしいミニ炊き出しレシピブック」に学ぶ、マンション防災の可能性

「おいしいミニ炊き出しレシピブック」は、誰もが出来る「草の根防災」と言えます。楽しく備える、新しい減災・防災のかたちとして浸透していくとよさそうです。

マンション・ラボ編集部が特にいいと思ったのは以下の3つのポイントです。

マンション・ラボの視点 「おいしいミニ炊き出し」に学ぶ「3つのワザあり!」ポイント

①食品を腐敗させない・ムダにしないために、みんなでシェアして食べる
→助け合いやコミュニケーションにワザあり!

②大鍋でなくても、きんぴらやマカロニなどの食べ慣れたものをバイキング形式で食べる
→ふだん感覚のミニ炊き出しという発想の転換にワザあり!

③被災した状況をできるだけリアルに想像(発災から復興までの段階や、寒い季節・暑い季節で欲しいもの・食べたいものが違う)、その状況に応じた物資を持ち寄り&炊き出しする
→ライフラインやこころの状態にあわせたきめ細かさにワザあり!

いままでマンション・ラボが取材したマンションでも、住民が炊き出しを出来るように、季節イベントでプロパンガスや大鍋を活用されていました。

マンションでできる最大の高齢者&防災対策は、人間関係!築40年の京都・西京極大門ハイツでは、防災用ストックのプロパンガスを使って、餅つきイベントなどで大鍋料理を振る舞っています。

ふだんからこうした備えをされているマンションの防災イベントで、「おいしいミニ炊き出し」ワークショップを開催すれば、さらに万全な備えになるに違いありません。

またマンションの共有施設のキッチンなどで、防災に関心のある住民同士で「おいしいミニ炊き出し」パーティを行うのもよさそうです。お子さんと一緒に、簡単に調理できるレシピばかりなので、どんどん活用してみたいですね。

マンションの防災イベントのアイデアに困っている管理組合や管理会社の皆さんにもオススメです。マンションから出来ること・マンションから発信できる防災知識として、「おいしいミニ炊き出しレシピブック」をどんどん活用していきたいものです。

まずは、皆さんのご家庭でレシピの一品を試してみてはいかがでしょうか?
きっと、その簡単さ・便利さに驚くはずです。

熊本地震の経験・支援ノウハウを“食”でつなぐ 「おいしいミニ炊き出し レシピブック」のサイト。レシピブックを活用した、専門家によるミニ炊き出しワークショップや防災・減災の出張講座も行っています。書籍の購入も可能。

減災ラボ※外部サイト

防災、ソーシャル、学問・知学、メディア、コミュニティ形成のプロ集団。ユニークで多様な外部団体とも有機的につながり、これらのネットワークによって未来型の減災社会をクリエイトする。

2018/10/12

e-mansion life ×マンション・ラボ スペシャルアンケート&プレゼント

ランキング

↑ page top