高齢化+IoTの先進国・北欧で見つけた未来のマンションライフへのヒント① ~デジタルサイネージを活用した、フィンランドのシニア向け集合住宅~

今回は、北欧のシニアが住む集合住宅や施設でのIoT活用事例について、一般社団法人ケアリングデザインの代表理事 小野由記子さんにお話を伺いました。超高齢社会に突入した日本のマンションライフのヒントにしてみませんか?

高齢化+IoT先進国・北欧の知見を日本の暮らしに!「北欧シニアのくらし視察」

フィンランドのシニアコレクティブハウス「コティサタマ」の玄関前で、代表理事の小野由記子さん(写真向かって右)と理事の吉田紗栄子(写真左)さん。

小野由記子さんが代表理事を務める一般社団法人ケアリングデザインは、Over50’sの大人の住まいをもっとここちよくすることを目標に活動している団体です。

そのケアリングデザインが、2018年6月にフィンランドとノルウェーのシニアの集合住宅や施設、個人住宅を視察したときのレポートから、北欧の集合住宅でどのようにIoTが活用されているのかについてご紹介します。

シニアの、シニアによるシニアのための集合住宅「コティサタマ」

フィンランドの「コティサタマ(Kotisatama)」は、シニアのハウジングコミュニティ実現を目的に設立されたアクティブシニア協会が、計画・設計に関わったコレクティブハウスです。
アクティブシニア協会は、将来そこに住む住民が会員となって、自分達が住む集合住宅の企画・設計・運営・管理にまで関わるという住民参加型のプロジェクトです。

小野さん
私達は2011年に、アクティブシニア協会が手がけた第1棟目のコレクティブハウス「ロプキリ」を視察しています。今回ご紹介する「コティサタマ」は2棟目となります。どちらも、協会の会員で自立した生活が送れる48歳以上というのが入居資格です。
1棟目の「ロプキリ」は、陶器で有名なアラビア地区の再開発エリアに建設された7階建て・58戸。今回の「コティサタマ」は、9階建て・63戸、現在55〜80歳代までの男女82名の住民が住んでいます。

「コティサタマ」の外観。ヘルシンキ中心部からメトロで4分の距離にある港湾跡地の再開発地区に、2015年に完成しました。

小野さん
「コティサタマ」は、ヘルシンキ市がITを活用したスマートシティ構想を進める再開発エリアにあり、周辺には36階建ての高層マンションやショッピングモール、総合福祉センターを建設中で、2030年には2万人が居住するスマートシティになる予定です。
最新設備や技術を取り入れる再開発エリアに、シニアのためのコレクティブハウスが建設されて、多世代型のスマートシティとして計画されているのは、社会との関わりという点でも良いですね。

最上階の9階テラスから、現在再開発が進むカラサタマ地区が一望できます。

タッチパネル式デジタルサイネージが掲示板代わり!

タッチパネル式デジタルサイネージ。イントラネットに接続されており、最寄り駅の時刻表、シティイベントなどの情報がわかるようになっています。

役割毎の住民グループとお知らせの表示(写真左)と最寄り駅からのメトロの行き先一覧(写真右)。

小野さん
1棟目との違いは、スマートシティに建設されたということもあり、デジタル機器が導入されていることです。エレベーターホールには、タッチパネル式のデジタルサイネージが壁面に設置されています。日本のマンションで言えば、エントランスの掲示板がデジタル化されているようなものですね。情報が集約されていて、見た目にもスッキリと美しいです。

エントランスのドアから、デジタルサイネージが設置されているエレベーターホールにかけてのインテリアは、非常にシンプル。日本のマンションのようにゴージャスなデザインのエントランスホールではなくシンプルで機能的な点が良いと、小野さんは評価します。

住民がコミュニティキッチンやライブラリー運営、清掃もプロ並み!

1階には、吹き抜け式のコミュニティキッチン+ダイニングルームがあり、毎日30人ほどの住民が食卓を囲みます。厨房では、住民の調理グループ(シェフ・調達・会計・情報担当)が予算を立てて毎週の食事を作ります。なんと1食4.5ユーロ(約600円)だそう。

「コティサタマ」には、個人の住居以外の共用部分として、1階にはコミュニティキッチン+ダイニング、ホビールーム、2階にはライブラリー、オフィス、ランドリールーム、ゲストルーム、最上階の9階には2つのサウナ、暖炉付き多目的室、レジャー室があります。

1階の吹き抜けから階段で続く2階のライブラリー。住民が寄附した本や映画が楽しめます。

家具の修理ツール、ハンドクラフト用機材、機織りなど、充実した機材があるホビールーム(写真左)と、プロ並みのアイテムが揃った掃除用具室(写真右)。共用部の清掃は住民グループで行うため、入居時に専門家による掃除方法のレクチャーを催したそうです。

小野さん
「コティサタマ」の素晴らしい点は、分譲マンション形式で個人の部屋を所有しながら、住民が調理や掃除などの役割分担を受け持っていることですね。管理員や清掃スタッフはいません。住民が責任を持って役割を分担し、ホビールームやライブラリーを活用しながら共通の趣味グループと交わり、コミュニティと関わりながら暮らすのが、アクティブシニア協会の提唱する住宅コミュニティのコンセプトです。

住民は室内に洗濯機を持たず、設備が揃った乾燥室付きランドリールームを予約して使います。予約システムはIT化されておらず、使いたい日の時間帯に自分の鍵を差し込むだけ。ランドリーの予約はアナログの方が使いやすいので、そうしたとのこと。デジタルとアナログをうまく使い分けて暮らしています。

「コティサタマ」の暮らし方は、まるで自分の住まいがマンション全体に拡大したかのようです。管理や清掃も、管理員さんや清掃員さん任せだと、サービスを提供する側・受ける側という線引きが出来てやはりどこか他人事になります。
「コティサタマ」というコミュニティ全体を自分事化するには、一人ひとりが責任と役割を担い、趣味という楽しみまで共有するのが、最適な方法なのかもしれません。

住居内のスマートメーターで水道使用量の見える化

標準的な47平米の部屋。奥に見えるのはサンルーム。夏は窓を開けて、冬はつかの間の日差しをサンルームで楽しみます。

小野さん
各部屋は、38.5~77.5 平米で、シングル向けの標準的な47平米の部屋には、キッチン・バスルーム・2ルーム・サンルームがあります。日本でいう2DKですが、廊下がなくてムダのない間取りですね。

住居内には水道使用メーターが設置されていて、赤い金魚が表示されるとその月は水道を使い過ぎているというのが一目でわかります。

小野さん
自立して生活できることが入居条件なので見守りシステムなどは導入されていませんが、水道使用量が見える化されたスマートメーターが室内にあり、省エネルギーを楽しく生活の中に取り込んでいますね。

スマートシティにシニアのコレクティブハウスがある意義は、社会参画!

太陽光発電、シェア電気自動車などスマートシティのさまざまな試みが行われるカラサタマ地区。これからの取り組みに大いに期待したいですね。

コレクティブハウス「コティサタマ」があるカラサタマ地区は、エリア全体で先進的なスマート化が推進されています。たとえば、リサイクルルールによって色分けされた廃棄物収集ポイントがあり、そこから投入されたゴミは、地下のパイプラインに吸い込まれて毎時40マイルで廃棄物管理施設へ運ばれます。
他の住居建物では、スマートメーターと家庭用リモートコントロールをつないで、モバイル機器で家電を操作するなどのシステムも導入されています。

また、IoTを食品廃棄問題に活用するFoller社は、スーパーマーケットなどの個々の商品に付けられたタグを利用し、生鮮食品の消費期限にあわせて価格を自動的に引き下げ、顧客に値下げ通知が届くシステムを構築してフードロス軽減を図ります。これは店舗側にとっても、タグによって在庫管理がスマート化できるというメリットがあります。
カラサタマ地区は、このように街全体でIoTを活用して省エネルギー・フードロスなどの社会問題に取り組んでいます。

小野さん
ヘルシンキの最先端スマートシティに、シニアのためのコレクティブハウスがあることには、大きな意義がありますね。
1階のコミュニティキッチンは外部にも開かれていて、IoT実証サービスの説明会やヘルシンキのチャリティイベントの会場としても活用されています。住民も社会問題への参画が容易になりますし、近くのプレスクール(小学校)との交流も設けられているそうです。
「コティサタマ」は、シニアがただ集まって住むだけの場所ではなく、内部のコミュニティや社会という外部コミュニティとつながっていくための場づくりまでデザインされている訳です。


多世代が居住するフィンランドのスマートシティの中にあるシニアのコレクティブハウス「コティサタマ」。運営元のアクティブシニア協会という名前通り、アクティブなシニアがこれからの社会にどのように関わっていくのかという点でも楽しみな場でした。

(写真提供/CARING DESIGN、SCORE)

2018年11月14日〜27日、西武池袋本店7F特設会場にて「くらしのデザイン展2018」を開催予定。今年のテーマは『いまどき 方丈』。期間中 、11月19日には阿部勤氏と中村好文氏による「いまどき 方丈」トークショー(外部リンク)、
11月21日にはヤドカリによる「タイニーハウス入門」セミナー(外部リンク)を
池袋コミュニティカレッジにて開催。

2018/10/09

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