マンション防災対策の勘違い—火山噴火で起こりうる災害は噴石・火砕流・火山灰

最近、国内外での火山活動の報告が目立ちます。
この機会に、火山災害について正しく理解してみましょう。

キラウエア火山噴火では、現地でマスクが売り切れ状態に

今年2018年5月3日に、ハワイのキラウエア火山が噴火しました。
私は偶然4月下旬に現地を訪れていて、すでにかなり活発化していた火山活動を見学したところでした。現地のガイドの方は「ハワイで大噴火が起こったことはない」と気にもしない様子でしたが、それから10数日後に大噴火が起こり、現在も付近の住民に影響を及ぼす火山活動が続いています。

ハワイでは、溶岩の噴出から放出される有毒ガス(二酸化硫黄)から身を守るために、マスクを買い求める住民が殺到して売り切れているというニュースを拝見しました。しかし一般的な防塵マスクでは降灰の吸い込みをカバーできても、有毒ガスの二酸化硫黄には対応できません。

「首都圏に火山災害は起こらないはず」という勘違い

ハワイの噴火ニュースは、他人事ではありません。日本でも全国で火山活動が活発化しています。しかしまだまだ「首都圏には火山災害は起こらない」「火山の噴火はうちには関係ない」という人が多いようです。

2015年の箱根山の噴火

2015年には、都心から80㎞ほどしか離れていない箱根山で観測史上初の噴火が起こりました。幸い小規模な噴火でしたが、箱根山は過去に何度も大噴火を繰り返してきた活火山です。
もし大噴火が起こったら、火砕流到達地域は神奈川県藤沢にまで至り、ライフラインに影響を及ぼすと言われている10センチ以上の降灰域は、東京・千葉・埼玉にまで及びます。

火山灰は、農作物の被害、交通麻痺、家屋倒壊、航空機のエンジントラブルなど社会生活に多大な影響を及ぼします。

富士山の噴火に備えたハザードマップ

富士山火山防災協議会は、富士山で被害を伴う火山災害が発生した場合に備えて、富士山ハザードマップ検討委員会や富士山広域防災検討委員会を結成して、富士山に関わる火山防災対策の推進を図っています。

富士山火山防災協議会※外部サイト

富士山火山防災協議会が作成した「富士山火山防災マップ」は、火山灰や軽石を噴出する大規模な噴火が起こった場合、神奈川は30〜50cm、東京・千葉・埼玉には10cmの降灰が堆積すると予測しています。実際、1707年の富士山「宝永噴火」では、約100km離れた東京などの首都圏にまで火山灰が降っています。

富士山火山防災マップ※外部サイト

2018年になってからも活発な国内の火山活動

今年になってからも、東北の蔵王山、関東の草津白根山、伊豆・小笠原諸島の硫黄島、九州・南西諸島の桜島や霧島山など、日本全国で火山活動の報告が続いています。

気象庁「平成30年(2018年)の週間火山概況 活動状況について特に掲載した火山の一覧」※外部サイト

「噴火警戒レベル」が出たら、どのような防災行動を取るべきなのかについて、はっきりと理解しているでしょうか?

噴火警報レベル5になると、噴火の影響は火口周辺だけでなく、居住地域にまで及びます。大きな噴石、火砕流、融雪型火山泥流などが居住地域まで到達するような大きな噴火が切迫または発生し、状況に応じた避難が必要になります。

【噴火警報レベル】

噴火警報レベル5:噴火警報(居住地域) 避難
噴火警報レベル4:噴火警報(居住地域) 避難準備
噴火警報レベル3:噴火警報(火口周辺) 入山規制
噴火警報レベル2:噴火警報(火口周辺) 火口周辺規制
噴火警報レベル1:噴火予報 活火山であることに留意

気象庁リーフレット「噴火警報と噴火警戒レベル」※外部サイト

火山噴火の被害、降灰から身を守るためには?

火山噴火によって起こる災害には、大きな噴石、火砕流、融雪型火山泥流、溶岩流、小さな噴石・火山灰、土石流、火山ガスなどがあります。

特に火山灰はとても細かく、人体の目・皮膚・肺に影響を及ぼします。一度吸い込むと肺の奥にまで入り込み、せき、呼吸困難、気管支炎、せきの発作を引き起こします。

地震災害でも、壊れた家具や建材の粉塵から身を守るために、高性能な防塵マスクやゴーグルが必要です。万一、火山噴火による降灰が首都圏にも及んだ際には、こうした防災品が役立ちます。マンションの防災備蓄品に、ぜひこれらを追加しておきましょう。

また、お住まいの自治体のハザードマップに従って避難場所や避難経路を確認しておく必要があります。避難方法も、地震災害とはまた異なってきます。

首相官邸「火山噴火では、どのような災害がおきるのか」※外部サイト

火山災害は火山のある地域だけのものと思い込むことなく、火山災害が及ぼす影響や避難行動について、上記のようなサイトで火山災害に関する正しい情報を学びましょう。

国内外に火山防災を広げていく取り組みのスタート

鹿児島市は、桜島の降灰と共存するために、克灰袋や降灰除去機などを提供して、日常的に火山防災に取り組んでいます。そこで鹿児島市では、火山防災の先駆けの街として、火山防災力の一層の向上や防災ノウハウを国内外へ情報発信していくために、「火山防災トップシティ構想」の取り組みをスタートしました。

また鹿児島県では、2014年に「鹿児島の火山防災ガイドBOOK」を発刊して配付しています。1914年の桜島大正大噴火は、大量の噴石や降灰、噴煙からの有毒ガス、マグニチュード7.1の地震を引き起こしました。「鹿児島の火山防災ガイドBOOK」は、その被害の内容と火山防災の大切さを伝えてくれる貴重な資料です。

鹿児島県の火山防災ガイドBOOK※外部サイト

火山大国に暮らしているのだという意識で防災を考える

私達は、世界一の火山大国に暮らしています。
地震だけではなく、火山災害なども起こりうるのだということを常に意識しなければなりません。

マンションにお住まいの皆様も、自然災害はいつ何時やってくるかわからないということを今一度頭に入れて、正しく自然災害を理解して防災行動を考えていただければと思います。

2018/06/27

プロフィール

国崎 信江

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。文部科学省地震調査研究推進本部政策委員、防災科学技術委員などを務める。講演活動を中心にテレビや新聞など各メディアでも情報提供を行っているほか、被災地域で継続的な支援活動も行っている。

おもな著書に『大地震対策 あなたと家族を守る安全ガイド : ビジュアル版』(法研)、『震度7から家族を守る家: 防災・減災ハンドブック』(潮出版社)、『マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)』(つなぐネットコミュニケーションズ)などがある。


株式会社危機管理教育研究所

一般社団法人危機管理教育研究所


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