熊本地震で被災したマンションが、1年半のスピード決議で建替えを実現できた理由に迫る!

上熊本ハイツ(解体前)

2016年に発生した熊本地震では、熊本市内のマンション被害が甚大でした。
熊本市により全壊と被災判定が行われたマンションは、合計19棟(※旭化成不動産レジデンス調べ)。そのうちのひとつが、今回ご紹介する5棟構成の上熊本ハイツです。上熊本ハイツは、熊本市内で全壊判定を受けたマンションのうち、いち早く建替決議が成立したマンションです。
震災からの早期再建を実現したのは、1980年の竣工以来長年の間形成されてきた管理組合の結束力と住民コミュニティの力、そして行政の支援でした。

熊本地震で受けた被害が甚大だった上熊本ハイツ

熊本城からほど近くにある上熊本ハイツは、1980年竣工・全5棟・100戸の分譲マンション。

今回ご紹介する上熊本ハイツは、熊本市内の被災分譲マンションで、マンション建替法による初の建替事例です。アドバイザーとして建替の事業計画を立案した、旭化成不動産レジデンス株式会社の開発営業部 第一営業部長 阿佐部さんにお話を伺いました。

高経年マンションの建替は住民の総意を得るまでに時間がかかるものですが、被災マンションの建替は、さらに困難を要するものです。上熊本ハイツは、築38年の旧耐震構造。60〜70代の住民が多く、長年しっかりとした自主管理を行ってきて、自治会・地域活動を通じてマンションコミュニティが形成されていました。それまでに管理費の滞納などはなかったということからも、しっかりとした管理体制の様子が伺えます。

そしてこのコミュニティ力が、熊本地震の被災を乗り越え、団結・協力しながら、復旧への道を探る行動につながりました。

被災後98名の住民全員と連絡、管理組合がスピーディに機能

傾きの大きかった4号棟(左側)は、南へ30センチ傾斜。
他の棟も、傾斜やライフライン破損の被害を受けました。

2016年4月16日、熊本地震の本震とされている2度目の震度6強のときには、住民は皆、北側にあった総合体育館の駐車場へ避難。住戸内に残された高齢者がいないか、住民同士が自然と声をかけあって回ったそうです。ここでも住民の結束力が活かされていました。

液状化で30センチ近く地盤が沈下。貯水槽が破断するなどしました。

4月16日の被災後、管理組合の初動はいち早いものでした。被災から約3週間後には、復興特別委員会を立ち上げ、約2ヶ月半後には応急対応でライフラインを復旧。5棟のうち3棟の住民は一部戻り始める中、週2回のペースで理事会・復興特別委員会を開催する体制を構築しました。

管理組合がこのように早く対応できたのは、住民それぞれが掲示板に避難先や連絡先を残して、区分所有者98名全員の所在がわかっていたことが大きなポイントでした。管理組合の皆さんも、今から思えば、「区分所有者全員に連絡がついていたことが、建替決議のスピード成立のカギとなった」とおっしゃいます。

【建替成功のポイント】

・被災後、区分所有者全員と連絡をつける
・管理組合によるスピーディな復興体制の構築

それだけでなく、5棟あるマンションの全棟の住民同士のつながりがあったことも、大きな要因だったといえます。
以前マンション・ラボでも、阪神・淡路大震災で被害を受けた2棟構成のマンションの元理事様にお話を伺い、被災直後から復旧へ至るまで道のりについてお話を伺ったことがあります。復旧に関する合意形成は深刻な問題なだけに、日頃の管理組合の役割や住民同士のつながりが、こういう非常時に生きてくるのだと言えます。

マンション・ラボ:阪神・淡路大震災の被災マンション、震災直後の被害状況と修復への道のりとは?

「年内までに方針を決める」と、目標を定めたことが効果

6月17日には熊本市により1〜5棟の全棟が「全壊」という罹災証明が下されました。

理事会の下に結成された復興特別委員会のメンバーは6名。行政からのマンション管理適正化交付金を活用して、必要な情報収集のためにアドバイザー3社(旭化成不動産レジデンス株式会社、株式会社ラプロス、アークエステート株式会社)を選定してそのサポートを受けることにしました。
被災マンションの復興を進める中で、損壊の程度の判断、罹災証明上の判断基準、復興に際してはどの法律が適用されるのかなど、一般の人にはわかりにくいことが多々あります。
上熊本ハイツは、専門家の意見も交え、修復できるのか建替なのかについて「年内までには方針を決める」という目標を定めて、その可能性を検討し始めました。
いつどうなるかわからない被災生活の中で、目標を定めて迅速に行動した管理組合と住民の皆さん。これも結束力なしにはできないことですね。

【建替成功のポイント】

・目標と期限を定める
・専門家から情報収集やサポートを受ける

修復か建替か?約8カ月後には建替推進決議成立、約1年半後に建替決議成立!

7月には、区分所有者のほとんどが参加した住民全体説明会を開催。その後もアンケートや個別面談などを行いながら、住民の不安を解消しつつ、約8カ月後の12月には区分所有者98%の賛成により修復ではなく建替の方針で、建替推進決議が成立。
改めて事業協力者の選定や計画検討を進め、被災から約1年半後の2017年9月24日には、区分所有者97%の賛成により建替決議が成立しました。熊本市による被災マンションの公費解体の受付期限は、2017年10月4日。公的な助けをしっかりと活用しながら、計画的に進んできたのがよくわかります。

「東京五輪を新居で見る!」を目標に再建を目指す

再建後の外観予想パース。総戸数184戸、全戸南向きの明るい住まいへ!(※現段階での予定であり変更となることがあります)

2018年3月現在で解体は完了し、今後は2020年夏の竣工予定に向けて本格的に事業が進んでいきます。再建後のマンションには、7割以上の住民の皆さんが新しいマンションに戻ってくるそうです。「2020年の東京五輪を新居で見る!」を目標に、防災面にも配慮した新しいマンションが完成する予定です。

旭化成不動産レジデンス株式会社 阿佐部さん
「上熊本ハイツ様のケースは、建替を多く手掛けてきた当社の経験上でも、復興特別委員会立ち上げから約1年半で建替組合の設立まで実現した驚異的な早さです。これは、一重に日頃の管理組合様の結束力や住民同士の結びつき、そして行政の支援があったおかげです」

【建替成功のポイント】

・管理組合の結束力・自治力、住民同士の結びつき
・行政の支援
国のマンション管理適正化・再生推進事業の交付金の活用、優良建築物等整備事業(マンション建替タイプ)の活用、住宅金融支援機構の高齢者向け返済特例制度の適用など

新しく生まれ変わった再建後のマンションでも、管理組合の結束力と住民同士のつながりが一層深まるに違いありません。

これまでにマンション・ラボでも、東日本大震災、阪神・淡路大震災で被災したマンションの復旧の様子を取材してまいりました。数々のマンションの復旧への道も参考になさってください。

地震で被災したらマンションはどうなる?復旧や備えなど、知っておきたいマンション防災対策まとめ

また、今回お話を伺った旭化成不動産レジデンス株式会社は、以前築61年の四谷コーポラスの建替にも関わり、マンション・ラボでもその建替成功の要因について紹介いたしました。被災マンション以外にも、高経年マンションの建替は住民の合意形成が難しいものです。以下の事例も参考になさってください。

マンション・ラボ:築61年!民間初の分譲マンション・四谷コーポラスの建替成功の2つの要因
旭化成不動産レジデンス株式会社「マンション建替え研究所」(※外部サイト)

マンション建替えを目指す管理組合と区分所有者を支援するために設立された独自の組織。

2018/06/22

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