マンション規約改正の手順とポイントとは?~ガーデンハイツ入間の事例~

2016年3月に「マンションの管理の適正化に関する指針」および、「マンション標準管理規約」が改正されました。改正のポイントについては、<『マンション標準管理規約』の改正内容を改めて確認してみよう>で、ご確認ください。

今回は、管理規約改正の動きを察知し、すばやく規約改正を実施した「ガーデンハイツ入間管理組合」理事長の山崎二三四さんに、マンション管理規約改正の手順やポイントを伺いました。

【取材協力】

ガーデンハイツ入間管理組合の現・理事長、山崎二三四(にさし)さん。ガーデンハイツ入間のホームページも管理しています。

自治会と共同で利用する集会室にてお話を伺いました。

【ガーデンハイツ入間のマンション概要】

戸数:262戸
築年数:33年
特徴:西武系の分譲マンションとして1985年に施工。マンション独自の自治会(いわゆる町内会の一つ)を管理組合と別に運営。4棟からなり、中央にはテニスコートを備え定期的に自治会がイベントを実施。当初多くが30歳代だったマンション住民は、現在半数以上が60歳代となっている。

ガーデンハイツ入間の規約改正へのステップ

国が管理規約改正を検討している頃、偶然にもガーデンハイツ入間の理事会では、マンションでの防災に関して改めて見直そうという話が持ち上がっていました。

東日本大震災の時には何も被害はなかったものの、今後起こりうる災害でも無傷である保証はありません。実際に被害が出てしまいマンションを再建という時に、総会を開く余裕があるとは思えず、現状の規約のままでは有事に何もできないことに気づいたからです。

そこで理事長の山崎さんが、管理規約を見直すことになりました。

規約改正は次の6つのステップで行いました。

①国土交通省のマンション標準管理規約の特に改定事項を確認
②改定事項が自分のマンションの現状に必要であるか否かを理事会で検討
③必要な改定事項について、具体的に改定内容を検討する
④規約改正草案を理事長(ガーデンハイツ入間の場合)が作成
⑤総会で住民合意を取る
⑥規約改正内容を配布し周知・運用へ

山崎さんはもともと土木関係が専門で、自治体の事務手続きにも詳しく、2016年にマンション標準規約が大きく改正されることを自ら調べていました。そして、告示前から改正内容に基づいた準備(上記②~⑤)を始め、17項目のマンション規約を改正するに至りました。

「マンション標準管理規約」の改正内容を確認してみよう!

ガーデンハイツ入間の規約改正は「実行力」がカギ

「ガーデンハイツ入間の規約改正の中で、山崎さんが注目してほしいポイントとして挙げている、『理事会役員の資格要件変更』と『災害関連』に関わる規約の改正について、詳しく話してもらいました。

【1】『理事会役員の資格要件変更』――現状に合わせ、あえて外部専門家は置かない

2016年の国土交通省によるマンション標準管理規約では、「外部専門家の活用」が改正ポイントになっています。しかし、ガーデンハイツ入間では、あえて外部専門家は活用せず、現状の役員の資格要件を緩和することにしました。

それは、理事会で外部専門家について検討した際、次のことがらが挙げられたからです。
・実際に住んでいない人(外部専門家)が総会に出て発言しても、住民が納得しがたいのではないか?
・現状、マンションの名義人の配偶者や子どもが代理で会議に出席することが多い。

従来の規約では管理組合員(世帯主・名義人)しか役員にはなれませんでした。しかし、名義人が仕事や高齢で理事を遂行するのが難しく、実質、代理人が会議に参加するケースが多かったのです。

理事会はこの2点を勘案し、住民の合意形成を取るのが難しいであろう外部専門家は置かず、むしろ、現状の役員資格要件を緩和し、名義人の配偶者または一親等の親族(未成年を除く)も役員に選出することに変更したのです。

この改正によって新たに「役員」となった世帯主の配偶者にあたる方は、初めはとまどっていましたが、すぐにしっかりと役目を果してくれたそうです。

あくまでも住民のための管理組合・理事会として、住民同士の納得感を大事にし、ていねいに合意形成をできた大事な規約改正となりました。

【2】『災害関連』――有事の際どれだけ迅速に対応できるのかで考える

『災害関連』規約の改正は、「有事には悠長に会議を開いていられない!」という気づきからでした。理事会では、「有事の際にできるだけ迅速に被害に対応できる規約にするか」が検討されました。その結果、以下のように改正されました。

・災害発生時、必要箇所への立入りについて
(従来)専有部分への立入り不可⇒(改正後)理事長または委任したものが立入り可能
・応急的な修繕工事の実施等について
(従来)要総会⇒(改正後)理事会決議で対応可

理事会決議については理事会の招集期日を明確にし、緊急時には招集期間を通常の1週間前から、最短3日で招集できるようにしています。具体的に状況を設定し、より実行可能な規約に変えたことで、想定される事態にすぐに対応できる規約となりました。

今まで準備していなかった防災用品設置のために、ゴミ置き場だった場所に防災設備を備えました。

今回の規約改正では、山崎さんの知識と規約への理解度、調査力が高かったことが成功につながったと言えるでしょう。しかし、マンションは住民みんなのもの、1人の頭の中だけで完結していては、いずれ破綻してしまいます。

そこで、山崎さんは住民全体が理解できるように、規約の「見える化」にも力を注ぎました。

1人のスペシャリストから、住民全体の理解のための「見える化」へ

マンションの規約は、ただでさえ言葉が難しく敬遠されがちです。理事会で、住民にとってどれだけ重要な規約案を作っても、肝心の住民に分かって納得して合意してもらわないとまったく意味がありません。

だからこそ、「分かりやすく目で見えるもの」を作り、住民一人一人に「規約改正が自分たちの生活にどうつながるか」を理解してもらうことが重要です。

例えば、今回の規約改正の1つである「リフォームの申請基準」です。
従来の規約では、「専有部分のリフォームについては、1か月前までに理事長に届出が必要。その後、理事長が理事会決議において承認を書面で出す」という時間のかかる工程でした。「緊急を要する場合」は、この限りではないのですが、どんな場合が「緊急」なのかは、明確には決まっておらず、その時の理事長または理事会委託者の判断に任されていました。

そこで、改正によってそもそも申請の必要な基準を狭め、届出が必要な場合を「共有部分または、他の専有部分に影響を与えるおそれのあるもの」についてのみとしました。

また、理事会を招集して決議しなくても、理事長承認のみ(事後に理事会報告)で対応できる例外を作りました。

以上のことを可視化したものが図1になります。

図1

この規約変更について住民理解を得るために、理事会は別途「専有部分の修繕工事申請等の手引き」を作り、住民に配布しました。イラスト(下図2)などで具体的に申請の必要有無が可視化されることで、住民も規約変更を柔軟に受け入れられたとのことです。

■マンションリフォームの「できること」と「できないこと」

図2:「専有部分の修繕工事申請等の手引き」より抜粋。修繕事項に上がりやすい内容を誰にでもわかるようにまとめています。「日本一細かいリフォーム細則かも」と山崎さんは笑います。

規約改正の推進力を個人の力量に頼ったとしても、その結果を個人の頭の中にだけとどめておいては、時が経つにつれて住民に認識されなくなり、また経緯をたどるのも大変になっていきます。

そのことをよく分かっている山崎さんは、「新規入居者がホームページを見れば、マンション規約がわかるようにしておきたい」「規約はマンションの基礎なので、隠さずさらけ出すことや新規入居者への規約確認は重要で、それができていないとトラブルの原因になる」と言います。

マンション管理規約の改正についてホームページで公開しており、他のマンション理事からの問い合わせに答えることもあります。

ホームページに規約改正のデータをアーカイブしておけば、いつでも気になったときに規約を確認することができます。1人のスペシャリストが整理した規約を、住民へていねいに可視化し、明文化することで、「〇〇さんじゃないと分からない」といった事態を避けることができます。ガーデンハイツ入間は「明文化」することで、誰にでも改正内容が理解できるようになったことが、成功のカギとなりました。

規約改正となると、見直しポイントを絞り住民合意を取り、さらに普及するには時間も労力もかかります。しかし、その先には、「誰にでもルールが理解できる、住みやすいマンション」の姿があるのですね。

――長く住む我が家、規約と共に住みやすくありたいものです。

(Loco共感編集部 衣笠可奈子)

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