「防災」対策と「被災」対策は違った!こうしてマンションの防災訓練を見直しました

地震が多い日本では多くのマンションが防災訓練を実施しています。マンションで被災した場合、耐震強度があるため避難所へは行かず、自宅での被災生活になると予想されます。その場合、今の訓練の内容で問題はないのでしょうか……?

マンション・ラボで昨年8月に紹介した被災後の生活対策を考える記事を読んで「防災」対策と「被災」対策の違いを感じ、「被災後に重きを置いた対策を自分たちの住まいで考えてみよう」と行動に移したマンションの事例をレポートします。

【取材協力】

物件:都内の駅から徒歩2分のコーポラティブハウス(区分所有権)(築12年)
※コーポラティブハウス・・・入居希望者が集まって事業主となり建設に関わること全てに携わって建てる集合住宅
世帯数:22世帯(ファミリー20、単身2)
訓練参加者:19名(12世帯、男10女9、大人14子ども5)

マンネリ化していた防災訓練に危機感を覚える

今回お話を伺ったコーポラティブハウスでは、毎年一回、秋の定例行事として防災訓練を続けています。これまでの内容は、共有している防災備品の置き場所確認、放水ホースの届く範囲の確認、消火器訓練、AEDやの使い方を救急士から教わる、といった一般的なものでした。毎年変わらず「少しマンネリになっていました」との理事長の松崎泰弘さんの言葉は、住民の多くが感じていることでもありました。

そんな時、住民の松田恵さんがマンション・ラボの記事「マンションで地震が起こったら…?夏休みの自由研究は親子で防災対策について考えてみよう!を目にしました。

そして、記事中の「(被災後の生活を乗り切れたのは)山の中で自然が多かったからできたこと。東京に住む私たちが震災にあったら、同じような暮らしでしのぐことはできない」という言葉に、まさに都会の真ん中にあるマンションの訓練の現状に危機感を抱いたのです。

「もっと具体的な“被災後の生活”を、我が家だけでなく一番身近なマンションの住民たちと共に考えたい」

松田さんは記事で講師を務めていた平野恭子さん(三陸町復興応援大使)を招いて、ワークショップを開催することを理事会に提案しました。すると、「マンネリ化した防災訓練を改善できるいい機会になる」とすぐに認められ、実施することになったのです。

住民が一緒になって、被災“後”の生活を想像し、具体案を考える

2017年のマンション防災訓練として、平野さんを講師に迎えて開催された被災後の暮らしを考えるワークショップ。12月に入ってすぐという忙しい時期にもかかわらず、半数以上の世帯が参加しました。

宮城県南三陸町に実家がある平野さんから現地の被災状況、東京から助けに行った時の様子や暮らしぶりなど映像を交えながら解説された後、2~3世帯ずつ4人で1グループをつくり、被災後のトイレや食事のことを中心に話し合いをしました。そして最後に各グループの代表者が話し合ったことを発表し、全員で感想と情報を共有しました。

(左)ワークショップのプログラム。内容は被災後にすぐに関係してくるものばかりです。
(右)話し合う前に書く「今、家にあるもの」「足りなさそうなもの」「実践して気づいたこと・買い足すもの」について、真剣に考える男の子。

グループ毎に発表された意見をまとめると、次のようになります。

~トイレ編~

【今、家にあるもの】
ペット用シート、ビニール袋、ジップロック、ダンボール、液体を固める粉、バケツなど
【足りなそうなもの】
介護用パット(人数×5~6回×7日分)など
【実践した人が気付き買い足すべきもの】
匂いを通さないビニール袋など

【参加者の気付き】

・トイレの被災後の使用開始時期について、管理組合で「規約」を作るといいのではないか。
・ペット用シートが人間にも有効か?実際に使ってみたい。
・用を足した物をベランダに置いてみて、実際に匂いを確認する必要を感じた。

子どもも大人も入り交じり、真剣かつ和気あいあいと話し合います。

以下の記事を参考にしてみて下さい。
災害用トイレはどれが使いやすい? 災害用簡易トイレの使用テスト

検証!家族3人10日間、マンションのベランダに放置した災害用トイレのゴミの量とは?

~食事編~

【参加者の気付き】

・非常食の味と量を確認したい。
・定期的に、マンションで炊き出し会を試してみたい。
・冷凍庫にある保冷剤は、冷蔵庫に移動させて使うといい。

以下の記事を参考にしてみて下さい。
マンションは、つながるとパワーアップする!?3つのマンション共同主催の防災「炊き出しフェス」

「備蓄食」からおいしい「美蓄食」へ。 いつもの「ウマイ」を、もしもの元気にしよう!~大試食会レポート~

マンションだからこそ協力してできることがある

ワークショップではトイレと食事のことを中心に話し合いましたが、その中で「マンション全体として取り組めることがかなりある」ことが分かりました。

・いつから使用可能かなど、被災後のマンションのトイレ使用規則を作る。
※被災して水道が止まった場合、上階が水を流すと下階に汚水が溜まってしまう。
・防災訓練の内容として災害時対策など、テーマを毎回設定して取り組んでいく。
・防災予算を検討する。
・住民各自の“得意分野”で協力し合える関係づくりをする。
・普段から住民同士でコミュニケーションするよう意識する。
(エレベーターで会った時に挨拶をする、季節のイベントで顔を合わせるなど)

理事長の松崎さんも「皆さんと話してみて、自分だけでなく、みんなでできることもあると発想が変わりました」と、希望に満ちた表情で口にします。

平野さんからは「持ち寄り、協力をするには、各自が何かしら持っていることが必要」とアドバイスがありました。自分では何も用意せず「持ち寄りやりましょう」は無理ということです。

今回の発起人である松田さんは「近隣住民、地域住民の皆さんも同様の意識を持って、被災後も立ち上がれるように備えられたらいいなと思っています。今回のマンションの防災訓練はその第一歩です。」とさらに広い“共助”まで視野に入れていました。

グループ代表者の発表を聞く参加者。同じマンションに住む人同士、「自分ごと」として意見を聞く態度も自然と真剣になります。

普段から住民同士が積極的にコミュニケーションを図り、信頼関係を築いていれば、マンションは共助しやすい環境にあります。今回の松田さんたちのように、被災後に起こりうることを自分たちのマンションを舞台にして考えることで、防災対策を「自分ごと」として捉えるきっかけになります。さらにマンション全体で考えると、共助の重要性や利点に気づき、より実のある備えができるのではないでしょうか。

文:Loco 共感編集部 葉山智子

▼本記事に関連する記事はこちらも併せてご覧ください。
家族3人・10日間分の災害用トイレごみの減らし方のコツ

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