300人の住民が参加することも!トキアス南千住の管理組合理事に聞いた、マンションイベントを成功させるコツとは?

春のお花見に夏まつり、秋のハロウィンパーティーには100人以上もの子どもたちが参加!――南千住にある大規模マンション「トキアス」では、1年を通じて四季折々のイベントが開催され、サークル活動も活発に行われています。

盛んに行われるコミュニティ活動は「どんなきっかけから始まったの?」、「継続するための工夫は?」「担当者の負担はないの?」との思いから、トキアス管理組合理事長の平澤裕二さんにお話を聞いてきました。

【取材協力】
トキアス管理組合理事長 平澤裕二さん。2008年に初めて管理組合理事長になる。2014年、2度目の理事長に立候補して就任後、防災やコミュニティ形成などさまざまな取り組みを始め、現在に至る。

(取材先マンション情報)
建物名:トキアス
所在地:東京都荒川区南千住
階数 :分譲マンション・20階建て・共用棟含め5棟構成
総戸数:620戸
竣工年:2005(平成17)年
トキアス公式ホームページ(外部リンク)

力を入れるようになったきっかけは住民の「防災意識の向上」のため

「マンションの防災意識を高めたい」――「トキアス」がコミュニティ活動に力を入れるようになったのは、防災の事を考えてのこと。ご近所の助け合いができるよう、顔見知りを増やしておきたい。そのためには、防災訓練やイベントに“住民が参加しやすい工夫”を考え始めたのがきっかけです。

平澤さんは2008年に初めて理事長に就任し、他のマンションと情報交換をする中で、防災の取り組みの大切さを知りました。しかし、当時のトキアスは約2千人の住民がいる中で、防災訓練に参加するのは20~30人、しかも、そのほとんどが理事会役員でした。

その後、2011年に東日本大震災が起きましたがトキアスにはほとんど被害がなく、「耐震性があるマンション」として住民が安心し、防災意識が高まることがありませんでした。

この時、平澤さんは理事長を退いていましたが、理事長経験者が集まる勉強会に出てみると、他のマンションでは震災経験に基づき「防災マニュアル」を見直し、より実践的な取り組みを検討していました。

――「自分のマンションは防災機運の高まりに乗り遅れている」と、平澤さんは実感したと言います。

→(参考記事)地震で被災したらマンションはどうなる?復旧や備えなど、知っておきたいマンション防災対策まとめ

「参加したくなる防災訓練」を考えたら活発なイベントになった

平澤さんは、2014年に2度目の理事長に就任すると、「住民が参加したくなる防災訓練」を考えるようになりました。トキアスでは分譲時より、全戸から毎月500円の「コミュニティ費」を徴収していて、年間で370万円ほどの予算があります。そこで、「参加者を増やすための工夫」と「活動する役員の負担軽減」の経費として予算を使うことを理事会で決め、まずは防災訓練終了後に「ビンゴ大会」を開くことにしました。

防災グッズの他、テーマパークのファミリー招待券やグルメ商品券など豪華な景品を用意して「ビンゴ大会」を告知したところ、防災訓練には約300人の住民が参加。「ビンゴ大会があると聞いて、子どもと一緒に訓練に出ました。消火器の使い方もわかり参加して良かったです」など、住民からも好反応がありました。

2017年4月実施の防災訓練の様子。

2017年4月実施の防災訓練の様子

「防災リーダー養成研修(第5回)」の様子。他にも「幼い命を守る防災セミナー」などを開催

「防災リーダー養成研修(第5回)」の様子。他にも「幼い命を守る防災セミナー」などを開催

一度体験すると防災訓練の大切さがわかり、住民の防災意識も高まります。

またイベント会社に勤務する理事がいたので、イベント案を出してもらい、毎月大小さまざまなイベントを開催するようにしました。多くのイベントを開催するのは、次のような狙いがありました。

転入出の多いマンションなので、次から次へと各種イベントがあると、新住民の人も早い段階でイベントに参加でき、コミュニティに加わりやすくなります。当初からの住民も含め、参加を重ねていくうちに「〇〇号室の△△さん」までは覚えなくても、「顔見知り」が増え災害時のスムーズな助け合いつながるのではないかと考えたからです。

災害時には「自助」が必要にもなってきます。住民それぞれの「自助」の力を合わせれば、マンション全体の「共助」となりえる――こう管理組合では考え、「トキアスに住む人たちはみな家族だ」のスローガンを掲げています。

『災害対策のためのマンションコミュニティとは?都市のコミュニティづくりを手掛けるHITOTOWA INC.荒昌史さんと考えてみた』

住民の幅広いニーズに応える多岐にわたるイベントとサークル

この防災訓練をきっかけに、イベントやサークル活動もどんどん活発になってきました。この他に、トキアスにはどのようなイベントなどがあるのでしょうか。詳しく聞いてみました。

【年間イベントと公認サークル】
年間イベント 公認サークル
・お花見(4月) ・ガーデニング
・総会(5月) ・彩事季倶楽部
(慣わしや風習から自宅の飾り付けを学ぶ)
・汐入まつり(8月) ・トキアジェンヌ
(住民の婦人会としてサロン的な場を提供)
・ハロウィンパーティー(10月)
・日帰りバス旅行(11月)
・餅つき大会(12月)
・ウインターコンサート(12月)
(住民による演奏会)

管理組合は4月から新しい年度が始まり役員が輪番で替わり(立候補もあり)、5月に総会が行われます。8月の「汐入まつり」はマンションがあるリバーパーク汐入町会が主催するものですが、毎年トキアス管理組合から生ビールとかき氷の出店をし、秋のイベントの準備前の新役員の親睦を深める良い機会にもなっています。

110名もの子どもたちが参加したハロウィンパーティーの様子。30軒の家庭が、仮装をした子どもたちがお菓子をもらいに行く家として参加。「トリックオアトリート!」の声が広いマンションに響いていました。

これらのイベントの他にも、陶芸教室・アロマ講習会などが平日の昼間にも開いています。「週末のイベントには出られない」「子どもがいる世帯中心のイベントには出にくい」などの、幅広い年代や立場の住民の意見にもこたえるようにしています。

中には、イベントに参加した住民から「定期的に開催して欲しい」との意見が多数寄せられ、ワインセミナーを定期的な土曜の夜開催とし、“ヴィンテージ倶楽部”というサークルになりました。(内容:「ボジョレーヌーボーについて」や「スパークリングワイン」などテーマに沿って、第1部が講義、第2部がワインとケータリングの食事で懇親会)

でも実際のところ、イベントの企画・運営って大変なのでは?

けれども、トキアスほどの大規模マンションで数多くのイベントを実施していくには、企画はもちろん準備や住民への案内などの運営にも、担当者のご苦労があるのではないでしょうか。ハロウィンイベント担当の人に、感想を聞いてみました。

(小川弘子さん)
「2カ月前から準備を始めました。前任者とスマートフォンのLINEで何度も連絡をとり、参加の呼びかけ方をアドバイスしてもらったのが心強かったです。改善した方がいいものは別のやり方にしましたが、無事に終わってほっとしています」

(早川信明さん)
「お菓子の準備をしました。役員になるまでイベントに参加したことはなかったのですが、協力的な人がたくさん住んでいることに驚き、自分のマンションの良さを見直しました」

(飯塚圭一さん)
「役員になったのをきっかけに、家族で積極的にイベントに参加するようになりました。ハロウィンパーティーではカメラマンだったので、子どもたちが転んだりすることがないよう注意しながら、マンション内を一緒に移動しました」

前列(左)飯塚さん(中央)小川さん(右)早川さん
役員として今年知り合った皆さんですが、アットホームな雰囲気でイベントを盛り上げていました。

トキアスの役員決めは、「これならできそう」というもので希望をとっています。また、住民の協力体制があるからでしょうか、積極的に取り組んでいる印象を受けました。

活発なコミュニティ活動を継続させていくためにしている4つのこと

トキアス管理組合が、活発にコミュニティ活動を継続していくために、大事にしていることが4つあります。

①何のためにイベントを開いているのか、コンセプトを明確に伝える

イベントでのあいさつでは、必ず「防災のためにやっている」ことを伝えます。
ハロウィンパーティーでも子どもたちにその旨を話、「友達と一緒にお菓子をいただく家を訪ねることで、マンションに住んでいる人がわかります。いざという時には助け合いましょう」と呼びかけています。
→(参考)『マンションのイベント、住民が「必要性」を感じられることが実施のカギ!』

②コミュニティを形成していく仲間や後継者ができる工夫

平澤さんのようにリーダーシップがとれる理事長は頼もしい存在ですが、住民が「依存」し過ぎてしまうとコミュニティが継続できません。
前年度担当者に、1年間フォローしてもらうようにしている半面、前例を引き継ぐだけではなく、変えていくことについても静観するようにしています。そうすることで新担当者が、「イベントにかかる経費や労力が、参加人数や盛り上がりに見合っているか」を検討し、当事者意識が持てます。

③外部事業者に依頼する

「日帰り旅行」:3台の大型バスの貸し切り手配などを頼んでいます。参加費は5千円/1人ですが、それ以上の体験ができると好評です。
「餅つき大会」:300名以上の住民が参加しますが、イベント用品のレンタルをします。

このように、役員の負担を軽減すれば準備に追われず、参加者と一緒に楽しみ親睦を深めることができます。

④ホームページや掲示板で広報をまめにする

マンションのホームページと掲示板で「トキアス通信」を発信しています。イベントに参加できない住民にも内容を知らせ、情報を共有することで「同じマンションに住んでいる」という“帰属性”が生まれます。

マンションの広報「トキアス通信」。ホームページと掲示板でイベントの内容報告や参加募集など、丁寧なアナウンスをしています。

便利なWebツールを使って住民に情報をお知らせしているマンションもあります。住民もパソコンやスマートフォンからお知らせを確認できるので、とても便利ですね。
→(参考)マンションの防災力を高める!ザ・パークハウス横浜新子安ガーデンから、ITツールの活用方法を学ぶ


こういったことを大事にすることで、トキアスでは数多くのイベントがマンションの住民みんなが楽しめるものとして、続けられるのでしょう。マンションごとの特性や住民それぞれの考え方に違いがあるとは思いますが、マンションでの「コミュニティ形成」を考えるのに、トキアスの事例はヒントになるのかもしれませんね。

▼マンションのコミュニティ形成については以下でもご紹介していますので併せてご覧ください
『ライオンズ茅ヶ崎ザ・アイランズに学ぶ、マンション・マルシェを成功させる3つの秘訣』

『マンションのコミュニティ事例!ものづくりでつながるマンションのシェアスペース~日の出ファクトリー~』

文:杉本雅美(Loco共感編集部)

2017/12/21

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