分譲マンションとシニア向け住宅の“複合開発プロジェクト”で、超高齢社会の課題に挑戦!

世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本。高齢者の人口増加と共に、シニア向けマンションも年々増えてきました。そういった中、『世代循環型の街づくり』をコンセプトに複合開発プロジェクトが実施されています。

プロジェクトでは同じ敷地内に、「分譲マンション」と「シニア住宅」、「ケア住宅」を開発。住むうちに高齢になり健康状態が変わっても、他の場所に移ることなく暮らし続けられる環境づくりが進められています。事例をもとに、そのプロジェクトについてご紹介します。

高齢社会対応の集合住宅をベースにした、安心して年齢を重ねていける環境づくり

CCRC(Continuing Care Retirement Community)という言葉をご存知ですか?
これは、高齢者が元気なうちから入居し、同じ敷地内で将来要介護の状態になっても、安心して住み続けられるアメリカ発祥の集合住宅のことです。

東京都世田谷区は日本全国でも要介護認定者の割合が高く、高齢者にとって住みよい社会をつくることが課題となっています。この世田谷区でCCRCの考え方をベースに、積み上げてきたシニア住宅事業の実績を活かし「世田谷中町プロジェクト」を展開しているのは東急不動産株式会社。安心して年齢を重ねていける街づくりに取り組んでいます。

このプロジェクトでは、1万坪の広大な企業社宅跡地を活用し、分譲マンション「ブランズシティ世田谷中町」と、高齢者住宅「グランクレール世田谷中町」を一つの街に開発しています。「グランクレール世田谷中町」には自立型「シニアレジデンス(シニア住宅)」と、介護型「ケアレジデンス(ケア住宅)」と状況に合わせた高齢者住宅を併設。

また、長年住む中で介護が必要になった場合には、シニア住宅からケア住宅への住み替えだけでなく、分譲マンションからケア住宅へ住み替えていくことができるように、買取保証サービス(竣工後5~20年間)が導入されています。

そのため、将来、体調を崩して別な場所の介護施設に移ることへの不安を持つことなく住み続けられますし、場合によっては、親・子・孫の三世代が同じエリアで暮らすこともできます。

「世田谷中町プロジェクト」で建てられた「高齢者住宅」。70~80歳代の人が多く居住し、自分らしい暮らしを楽しんでいます。

マンション内に設けた「多世代がつながる場」と「健康長寿」のための取り組み

敷地の中心には「分譲マンション」や「シニア住宅」の住民と、地域の人々も利用できる共用棟「コミュニティプラザ」があります。

施設1階には地域に開いた、いわば窓口的な場でさまざまなプログラムを催す「コミュニティサロン」、1・2階は「認可保育園」が入っています。4階には、分譲マンションとシニア住宅の人が利用し、多世代にわたる住民同士の交流を育む「カルチャールーム」を設置。また、地域の人が利用できる介護事業所(定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所、看護小規模多機能型居宅介護事業所)も併設されています。

同じ敷地内に多世代が利用できる施設を設けたことで、コミュニィティが自然と生まれる“きっかけの場”がつくりだされました。このことは、東日本大震災を経て社会課題となった「地域コミュニティの重要性や近隣住民同士のつながり」にも貢献できる施設となっています。

コミュニティサロンで行われている「ヴォイストレーニング」風景。声を出しながら簡単なエクササイズをします。

『50歳から考える、90歳までの住まい方「シニアリノベーション」』

『“終の棲家”選びはいつからがベスト?~シニアのマンションライフを考える~』

さらに、グランクレール世田谷中町では、認知症の発症を防いだり遅らせたりすることができると言われている、“ロコモ予防プログラム”も実施しています。コミュニティサロンでライフサポートをする「ホームクレール」を通じて地域へも発信し、健康長寿社会の実現に向けて取り組んでもいます。

クレールホールで月・木曜日に開催する「ロコモ 予防プログラム」の様子。ロコモの進行を食い止めて、健康寿命を延ばすことを目指しています。

『厳かな京都のシニア向け分譲マンションに見る、シニアの暮らしやすい環境と取り組み』

多種多様なプログラムやイベントで住民に安心と選択肢を

プロジェクトで設置しているコミュニティサロンでは、シニアが生きがいをもって元気に暮らし続けることを目標とする、「ホームクレール」によるプログラムを提供しています。

「ホームクレール」では、シニア住宅の運営会社の東急イーライフデザインがこれまで培ってきたノウハウを生かして、さまざまなカルチャープログラムを実施。また、それに併せて、近隣にキャンパスをもつ東京都市大学と産学連携にて企画する多世代交流が楽しめるプログラムも実施しています。

(プログラム・イベント事例)

工夫点としては、「頭と体の健康維持」をテーマに健康寿命延伸のためのプログラムに力を入れている点や、参加者同士の自然な交流が生まれるよう配慮している点、講師も地域の人に多くお願いしている点があげられます。

①シニア住宅の住民だけでなく、マンション住民や地域住民も参加可能な、多世代の交流を生み出すためのカルチャープログラム
例:書道や水彩画、脳トレなどのプログラムに、10~20人ほどが集まり、シニア住宅入居者と地域の人が半々の割合で参加しています。

コミュニティサロンでの「脳トレ教室 元気にハイ!面白スクール」での様子。

「メ・ロ・ディ予防トータル音楽歌体操」では「琵琶湖周航の歌」をとりあげてリズムよく体を動かします。

②シニア住宅の人も参加可能な、分譲マンションの住民向けクリスマスパーティー
今後、季節ごとのイベントなど分譲マンションの住民向けイベントにも、シニア住宅の人が参加し、交流できるきっかけを作っていく予定です。

③地域と連携して開催した大型イベント
街びらきイベントとして開催した「世田谷中町まつり」では、敷地中央を通る地域の人も通行できる通路に、キッチンカーを並べ食事ができたり、近隣の小学生がソーラン節を踊ったりしました。

世田谷中町まつりで行われた、地元の学童クラブや学校の協力で実現したステージコンサート

世田谷中町まつりで開催したヨガ教室では、多世代の参加があり、知り合うキッカケが生まれました。

参加者の反応は、「●●先生のクラスに毎回参加するのが楽しみ」「好きなときに参加できる点が手軽」など大変好評で、ご入居者と近隣住民の人々が積極的に交流されるシーンも、多く見られるようになりました。

このように、イベントやプログラムはマンションの住民だけのものから、近隣の学童やNPO等の協力を得て、地域に開かれた大型イベントまであり多種様々です。

マンションに居住する人は、不審者を寄せ付けないセキュリティーの高さやプライバシーを守れる空間といった住環境に魅力を感じている人も少なくありません。また、そういった中、大震災以降はいざというときを想定して、地域とのつながりを必要だと感じている人も増えています。ですから一人一人が選択肢の中から自由に選べられるように、さまざまなニーズに応える形で開催しています。

世田谷中町まつり開催時には敷地中央の通路に出店も並び、地域の人も多数訪れました。

イベントの企画・運営は、現段階では東急不動産ホールディングスグループの会社が中心になって行っていますが、イベントを通してマンションでさまざまな活動ができることを体感してもらい、将来的にはこの街の住民が主体となってすすめることを理想としています。

自分たちでアイデアを募り、必要に応じて地域町内会などと協力し、地元密着型のイベントを自主運営することで生活意欲の向上を目指しています。

「それぞれに程よい距離感、ちょうど良いコミュニティ環境をつくっていきたい」と、東急不動産の木田英和さん(写真左)は話します。

『シニア世代の交流に特化したマンションのコミュニティ事例~ブラウシア』

マンションを世代交流の場に。超高齢社会の社会課題解決への一歩

「世田谷中町プロジェクト」は、高齢者の生活と意識、住環境に関する調査報告など(*参考報告書)を参考に取り組んでいます。

報告によれば、高齢者の人たちは「若い世代との交流に積極的に参加したい」と考えており、グループ活動に参加することで、「新しい友人や生活の充実感を得ている」などの結果が出ています。また、自立した生活や介護ケアをしやすくするためにも、住まいについてもバリアフリー化の推進が言われています。

▼*参考報告書の一例
「平成28年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況 第3節 国際比較調査に見る日本の高齢者の意識」(外部リンク)
「内閣府の社会意識に関する世論調査」(外部リンク)
「厚生労働省政策レポート高齢化の住まい」(外部リンク)

また、このプロジェクトの分譲マンションでは、「株式会社東急コミュニティー」と連携し、「ライフマネジメント」ノウハウを生かして建物管理が行われています。

とはいえ、広大な敷地やマンション管理の豊富なノウハウがなくても、「世田谷中町プロジェクト」の考え方のベースにある「CCRC」を、それぞれのマンションの状況に合わせたやり方で、実施することは可能かもしれません。

例えば、
――高齢者が地域社会から孤立しないように、身近な人とつながり安心ができるよう、共用部をうまく活用し、町会館的な交流の場のようなサードプレイスにする。
――多世代で楽しめるようなイベントを、地域の人と共に世代をまたいで企画開催することで、高齢者の日常にリフレッシュ感や活気を生み出す。
――介護ケアを見据えたマンションのバリアフリー化や、近くの介護施設との連携、健康状態や家族状況に応じた同一マンション内の住み替えの利便性向上で、世代循環させる。
などが、考えられます。

「世田谷中町プロジェクト」は、日本の社会課題である「高齢者の住環境や介護についての解決策」として“先駆け的な挑戦”であり、愛着のある街に長く暮らし続けるためのヒントになりそうです。

【取材協力】

「世田谷中町プロジェクト」は、東急不動産株式会社が開発を行っている、分譲マンション「ブランズシティ世田谷中町」と高齢者住宅「グランクレール世田谷中町」の複合開発プロジェクトです。お二人の方にお話を聞かせてもらいました。
・ウェルネス事業ユニット ヘルスケア事業本部 シニア住宅事業部 木田英和さん
・住宅事業ユニット 首都圏住宅事業本部 マンション開発第一部 兵頭淳さん

文:Loco共感編集部 渡辺みずき

2017/12/05

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