代官山で注目の「シングル家庭×単身世帯」シェアハウスに見た、入居者同士が心地よく暮らすヒント

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にぎわい過ぎず、大人の落ち着きを見せる人気の街、代官山。そこに「シングル家庭×単身世帯」タイプの子育て支援シェアハウス「スタイリオ ウィズ 代官山」(http://stylio.jp/with/daikanyama/index.html)があります。
最近よく耳にするシェアハウスですが、「シングル家庭×単身世帯」のシェアハウスは全国でもあまり例を見ない、珍しいスタイルのシェアハウスです。
—シェアハウスって若い世代の人が暮らすものじゃないの?
—ライフスタイルの違う人たちが、一つ屋根の下で住むってどんな感じ?
スタートして2年、シェアハウスの日々の様子を、運営する東急ライフィア株式会社(http://www.tokyulifia.co.jp/)の露木圭さんに聞いてきました。

女性支援・子育て支援の政策からスタートしたシェアハウス

「スタイリオ ウィズ 代官山」の建物は渋谷区が所有していて、もともと災害が起こった際にすぐに駆けつけることができる防災職員住宅でした。築50年を経過し使用されない物件となっていたものを、2014年3月に東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)がリノベーションを行い再生しました。

―東急東横線代官山駅から徒歩2分、JR山手線恵比寿駅からも徒歩8分という好立地。なぜ、普通の賃貸物件、また単身世帯のみのシェアハウスにしなかったのでしょうか?

寮の造りをそのまま活かすと、賃貸物件よりはシェアハウスの方が建物として相性が良いですね。
それに、建物を所有する渋谷区は、「女性支援・子育て支援」を重点に置いて、さまざまな課題解決に取り組んでいます。東急電鉄としても渋谷区の資源活用やその政策に沿ったかたちで考え、普通の住まいではなく子育て世帯支援のシェアハウスを区に提案したところ、採択され事業化することになりました。
自分自身も一般的な単身者向けシェアハウスの運営ノウハウはありましたが、「シングル家庭向けのシェアハウス」は経験もなく、ある意味大きなチャレンジでした。

企画・設計の段階から関わった露木さん。運営スタートしてからは管理側として2年間ずっとそばで見てきました。

企画・設計の段階から関わった露木さん。運営スタートしてからは管理側として2年間ずっとそばで見てきました。

シェアハウスのルールはたった2つ

「スタイリオ ウィズ 代官山」の入居者は全部で21世帯。そのうちシングル家庭世帯は7世帯、単身世帯14世帯です。全部で30人(そのうち子どもは9人)が、大きな家族のように暮らしています。

―ライフスタイルの違う多様な人たちが共に暮らすために、運営面で決めていることなどありますか?

シェアハウスとして明確にルールとして決めていることは、「みんなの迷惑になる行動はしない」「共有部分に私物は置かない」この2つです。大きな問題は今までないのですが、何かあってもこの2つのルールに照らし合わせ、解決を図るようにしています。

―明るく清潔感があり、整理整頓された空間が広がっていますね。

入居希望の方を含め、さまざまな方が見学に来ますが、みなさんが「きれいですね」とおっしゃってくださいます。管理側としては、週1回の巡回と、共用部の清掃が週に4回入るのみです。もちろん清掃業者がしっかりとやってくれているというのはもちろんですが、親子世帯を中心に「子どもを育てる環境」であるという肌感覚によって衛生的に敏感になっていることも大きいと思います。

ライフスタイルを考えたフロア仕様

1階には共有のキッチンと、「GORO-MA(ごろま)」と呼ばれるリビングダイニングルームがあります。キッチンには、料理するにも十分な広さの調理台が3つあり、ショーケース型冷蔵庫と業務用冷蔵庫(厨房機器タイプ)が用意され、いずれも中の棚が部屋ごとに区割りされています。

みんなのリビング・ダイニングは、いつも整理整頓が行き届いています。

みんなのリビング・ダイニングは、いつも整理整頓が行き届いています。

「GORO-MA」は、その名の通りゴロンとできるように、フローリングに丸クッションがありリラックスできる空間。ちゃぶ台とテレビ・パソコン・本・絵本なども置いてあります。普段はみんな一緒にというよりは、自分たちのペースで食事をとったり仕事をしたり、ということが多いようです。季節のイベントや退去のお別れ会などでは、みんなで集まりにぎやかに過ごすこともあります。夜、子どもを寝かしつけた後、GORO-MAに立ち寄って大人同士で語り合う、そんな時間も子育て中の母たちにとっては、良い気分転換になるようです。

思わず鼻歌が聞こえてきそうな「GORO-MA」のデザイン。目で見てわかることが、子どもたちのスムーズな日常をサポートしています。子どもとお兄さんとで、チャンネルの取り合いもたまにあるとか…(笑)

思わず鼻歌が聞こえてきそうな「GORO-MA」のデザイン。目で見てわかることが、子どもたちのスムーズな日常をサポートしています。子どもとお兄さんとで、チャンネルの取り合いもたまにあるとか…(笑)

2階はシングル家庭用のフロアです。
各家庭のルームプレートには、個性あふれるイラストが記されています。子どもたちが自分の部屋を間違えないための、“マーク”になっています。
また、各階に洗面・洗濯・トイレ・お風呂・ミニキッチンが備わっていますが、2階は親子世帯が多いため同時間帯が重なり、少し混み合うときもあります。お互いライフスタイルをある程度わかっているのでうまく譲り合いながら使っているようです。特に目が離せない年齢の子どもがいる家族は、2階のミニキッチンで料理の準備をすることも多いそうです。

ドアがギャラリーになっている部屋も。次はどんな作品が飾られるのかな?それも楽しみです。

ドアがギャラリーになっている部屋も。次はどんな作品が飾られるのかな?それも楽しみです。

3~4階は単身世帯の居住空間。
基本的には、各階同じ設備が整っていますが、4階のみ風呂やトイレは女性限定となっています。
お互いが安心して気持ちよく使えるように、気になったことは、各々がその場でホワイトボードに書き込みます。管理側が一方的に伝えるのではなく、居住者同士の主体的なコミュニケーションが生まれているようです。

お風呂場のメッセージボード。伝言の他に、利用時間を書き込みます。時計もセットしたのは、一旦部屋に戻らなくて済むようにと、入居後うまれたアイディアです。

お風呂場のメッセージボード。伝言の他に、利用時間を書き込みます。時計もセットしたのは、一旦部屋に戻らなくて済むようにと、入居後うまれたアイディアです。

渋谷を一望できる屋上テラスには、バーベキューセットや家庭菜園も設置しています。
住居者が友人を呼んでバーベキューをしたり、管理会社が菜園ワークショップや夏祭りのイベントなどを開催したりします。

夏祭りの様子。代官山は思ったより高層ビルが少ないので、屋上は開放感溢れる空間です。

夏祭りの様子。代官山は思ったより高層ビルが少ないので、屋上は開放感溢れる空間です。

「暮らしは日常」いかに“普通”に関わりあうか?

―お互いの暮らしの距離が、他の住まいと比べて密接しているシェアハウス。人と関わることが得意な人、普段から友達が多い人が向いているのでは? と考えてしまいますが、実際はどうでしょうか?

「公共やパブリックな空間での協調性と、暮らしの中での協調性は違う」ということを、この2年の運営で感じています。例えば、イベントなどの外で出会う人たちとは、一歩踏み込んでコミュニケーションをとることで、より仲良くなれるでしょう。暮らしを共にするシェアハウスでは逆に、プライベートにはある一定の距離を保つ“適度な間”というのが大事になります。

ただ距離を保つだけでは、関わりあいが生まれにくいのですが、ここでは子どもたちが絶妙なコミュニケーションの手助けをしてくれているように思います。単身世帯の入居者も「子どもがいても問題ないですよ」というスタンスの人が多く、必要以上に仲良くというよりは、自然な形で空間を共有しています。子どもたちで賑やかなときもありますから、適宜自分の部屋にそそくさと戻るときもあるでしょう(笑)。

―ここでは「子育てシェアサービスAsMama」(http://asmama.jp/index.html)も導入されています。子育てをシェアするという理念の元に、子どもの送迎や託児をワンコインで頼むことができ、子育て家庭には心強いサービスですね。

AsMamaの子育てサポーターは、このシェアハウスから比較的近郊に住む、地域の子育て中の人たちです。管理側で主催するイベントには、いつも参加してもらい、お互いが顔見知りになるキッカケづくりをしています。初めて会う人に、いきなり何かお願いするというのもハードルが高いですから。

また、助け合う仕組みを、建物内だけで完結するのではなく、地域の人たちへと開いていくことも、退去後も助け合うつながりを維持できるという点で大切です。ワンコインですが対価がちゃんとあるのも気兼ねなく頼りあい、お互いが苦しくならないコツではないでしょうか。

このサービスを導入したのは、シングル家庭だけに限ったことではないのですが、「頼る勇気を持つ」ということを、仕組みとして促していきたいという想いからです。全てを自分1人で背負うのではなく、色んな人たちと助け合いながら生きていく。そんな大人の背中を子どもたちに見せる「住まい」にしたいと思っています。

「GORO-MA」でのイベントの様子。オレンジのTシャツを着たAsMamaのサポーターのお子さんも一緒に参加。子ども同士も仲良くなることでより安心して頼れるようになります。

「GORO-MA」でのイベントの様子。オレンジのTシャツを着たAsMamaのサポーターのお子さんも一緒に参加。子ども同士も仲良くなることでより安心して頼れるようになります。

暮らすことは日常。頑張って関わるのはお互いに疲弊してしまいます。それぞれの「普通の暮らし」を共有できるようにさまざまな試行錯誤を経て、今、一つのカタチが見えてきた「スタイリオ ウィズ 代官山」。
マンションも、多くの部分を入居者同士で共有しています。シェアハウスとは関わり合いや触れ合う頻度が違いますが、お互いが気持ちよく暮らしたいものです。そのためのルールや入居者同士の関わり方、地域とのつながり方など、心地よく「共に暮らす」ためのヒントが、ここにあるような気がしました。

「スタイリオ ウィズ 代官山」オープン時の記事はこちら
「シェア」という集住スタイルに学ぶ、マンションコミュニティのつくりかた

(文:Loco共感編集部 山本弥和)

2016/10/19

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