映画『団地』の阪本順治監督に訊く!昭和の集合住宅、団地のオモシロさ。

阪本順治監督・藤山直美主演 映画『団地』©2016「団地」製作委員会

阪本順治監督・藤山直美主演 映画『団地』©2016「団地」製作委員会

集住がテーマなら何でも知りたくなっちゃう好奇心旺盛なマンション・ラボ編集部。最新作の映画『団地』の阪本順治監督にインタビューしてきちゃいました。いや〜、昭和の集合住宅“団地”の魅力がふんだんに溢れている映画ですよ!

阪本順治監督最新作!映画『団地』は、“妄想としゃべくりのハーモニー”

 主人公ヒナ子(藤山直美)と夫・清治(岸部一徳)は、営んでいた漢方薬局店を畳んで、大阪近郊にある古い団地へ引っ越してきました。そこから始まったのは…? ©2016「団地」製作委員会

主人公ヒナ子(藤山直美)と夫・清治(岸部一徳)は、営んでいた漢方薬局店を畳んで、大阪近郊にある古い団地へ引っ越してきました。そこから始まったのは…? ©2016「団地」製作委員会

映画『団地』は、2000年度多数の映画賞を受賞した映画『顔』でタッグを組んだ、阪本順治監督と舞台女優・藤山直美さんコンビによる最新作品です。阪本監督がこのために書き下ろした、団地を舞台にした脚本は、“こんな団地あるよね” “こんな住民いるいる!”と頷いてしまう人間関係コメディーに仕上がっています。団地を舞台にした映画と聞いて、マンション・ラボ編集部も興味津々です! そこで阪本監督に映画や団地についてのお話を伺ってまいりました。

――阪本監督は、今回の映画でなぜ“団地”という舞台を選ばれたのでしょうか?

阪本監督
「今回たまたま、忙しい藤山直美さんのスケジュールが2週間だけぽっかり空いて、僕の映画ならまた出てもいいよという声をもらったことから始まりました。撮影期間も限られていたので、ふと、団地をテーマにした今回のラストシーンが浮かんできたんです」

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――阪本監督も同世代である藤山直美さんも団地に住んだことはないそうですが、お二人の小学校時代は、高度成長期で団地の建設ラッシュ。団地に住んでいる友達もたくさんいて、よく遊びに行っていたそうです。当時の団地は、それまでは文化住宅や一戸建てだった日本の庶民の暮らしに、近代的な風をもたらした最先端の集合住宅でした。

阪本監督
「今回の映画で描きたかったのは、昭和の輝かしい団地ではなく、いまの団地の風景です。団地ってタテ階段があってその両側に住戸が並んでいて、タテ型の長屋みたいなもんですよね。ある意味、下町的なムラ社会を形成していて、社会の写し鏡みたいなところがある。新しさの象徴だった時代から、建物もそこに住む住民も年月を経たいま、デイサービスの迎えの車が定期的にやってくるのが日常になっている。そんないまの団地を舞台に、藤山直美さんや岸部一徳さん、石橋蓮司さん、大楠道代さんの四人が織りなす大阪の庶民の会話劇をやりたかったんです」

――脚本執筆の段階から、キャスティングの四人を思い描き、アテ書きで作成したという阪本監督。関西人なら、オープニングで聞こえる浜村淳さんのラジオの声からすでにノックダウンされてしまうことでしょう。

映画の設定では、大阪近郊の古い団地が舞台となっていますが、実際に映画を撮影したのは、栃木県足利市にある錦町団地というところです。いくつかの候補地のなかで、まさに阪本監督のイメージにぴったりの規模感の5階建て・エレベーターなしの団地だったそうです。団地の住民の皆さんも、エキストラとして映画に参加・協力したというから楽しいですね。

阪本監督
「団地ロケは面白かったですよ。助監督なんかは、自治会の行事に出席して皆さんとお酒飲んで仲良くなったりしてね。地方での映画製作というのはひとつの地域興しのイベントでもあるから、映画クルーがいかに地域の人と溶け込んで、仲良くなって撮影するかというのは大切なことだと思っています」

――足利市は「映像のまち構想」を掲げており、撮影クルーのサポート体制も充実していたそうです。自分の住んでいる団地で映画が撮影されるって、住民としても誇らしい気分だったのではないでしょうか。

 団地の自治会長(石橋蓮司)や住民が集まる集会室のシーン。©2016「団地」製作委員会

団地の自治会長(石橋蓮司)や住民が集まる集会室のシーン。©2016「団地」製作委員会

阪本監督が「団地はムラ社会」と言うように、オートロックのマンションのように閉ざされた空間ではなく、ベランダや階段からなんとなく住んでいる住民の顔が見える団地社会は、自然な人間関係が生まれやすい、と同時にとんでもない噂も生まれてきます。

映画では、近所付き合い、ゴミ出しルール、DV(ドメスティックバイオレンス)、自治会長の立候補、いろいろな人間関係や社会の縮図が、団地というムラ社会にぎゅっと詰まっていて、コメディーとして笑って楽しむ一方で、考えさせられる部分もあります。

とはいえ、何かというと住民が集会室に集まって、問題を話し合ったり、噂話がさらに暴走するので、「みんな、実は仲がいいんじゃないの?」って突っ込んだりしちゃいます。

団地は、“噂のコインロッカー”!?

阪本監督
「団地の女性たちが噂話をするシーンで、ビールケースを逆さまにして、イス替わりに座り込んでいるんですけど、あれは助監督が実際に大阪の団地でやっているのを見て取り入れました。本腰入れて噂話をするんですよね。団地ってほんまにおもしろい。
団地のベランダは、ある意味、団地の外社会へ向けて自己表現する場でもあって、自分が支持する政党ポスターをベランダに貼ってる大阪のオッチャンとかも実際にいたりしますしね」

――団地のベランダが、外とつながっていて、自己表現の場であるというのはおもしろいですね。

阪本監督
「やっぱりね、こんな風に噂話が生まれるくらいの密接で濃い人間関係の方が、どこかしら豊かなんですよ。噂話すら起きない、隣の部屋の人と顔も合わせたことないというのは、どこか歪んでいる。だからこの映画は、顔見知りのいないマンションに住んでいる人にも、見てもらいたいですね。“やっぱりこんなんはイヤヤ”と思うかもしれませんけど(笑)」

――団地に引っ越してきたばかりの主人公ヒナ子(藤山直美)は、ある意味ムラ社会・団地のストレンジャーです。ちょっとクールな視点で、団地内で勝手なウワサが転がっていく様子に呆れて、「団地てオモロイなぁ、噂のコインロッカーや」と呟きます。

 ゴミ置き場での1シーン。主人公ヒナ子の夫・清治(岸部一徳)と自治会長の妻で団地のゴミ管理人・君子(大楠道代)との会話は、淡々としつつ、なんともいえないオカシミに満ちています。 ©2016「団地」製作委員会

ゴミ置き場での1シーン。主人公ヒナ子の夫・清治(岸部一徳)と自治会長の妻で団地のゴミ管理人・君子(大楠道代)との会話は、淡々としつつ、なんともいえないオカシミに満ちています。 ©2016「団地」製作委員会

――阪本監督は、マンションにお住まいだそうですが、マンション暮らしはいかがですか?

阪本監督
「そうですね。マンションのゴミ出しもちゃんとやっていますよ。ゴミ管理人の君子(大楠道代)みたいに人のゴミ袋までチェックすることはやりませんが、ゴミはきれいに出してないとイヤなタイプですね。ちゃんとしていないと、すごく気になる(笑)」

――映画では、ゴミ管理人がいて、ゴミ置き場が住民同士の会話の場となるのも団地コミュニティならでは!です。

映画にでてくる団地の床下収納、「あれはね、ほんまにあったんですよ!」

岸部一徳さん扮する夫・清治は、あることがきっかけで台所の床下収納に隠れてしまいます。「あれ、この部屋は3階という設定なのに床下収納があるって不思議」そう思って伺ってみたところ…。

阪本監督
「あれはね、僕が子どもの頃、団地の4階に住んでいた友達んとこには、ほんまに床下収納があったんですよ。映画ほど大きくはないですけどね。これ、誰に言っても信じてもらえないんだけど」

1階だけじゃなく、各階に床下収納がある部屋って、なかなかいいですね。映画では別の使われ方になっていましたが(これは映画を観て確認してください!)、個人の備蓄庫や防災倉庫にも使えそうだし、これからのマンションにもぜひつくってもらいたいところです。

阪本監督に訊く「マンション×○○○」は、なんとブランコ!?

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――マンション・ラボでは、「こんなマンションがあったらいいな」という自由な発想力の妄想マンションアイデア「マンション×○○○」を、さまざまな方に伺っています。
阪本監督が、マンションにこんなものがあったらいいな、こんなマンションがあったらいいなと思うものはありますか?

阪本監督
「ブランコですね。マンションの屋上にブランコ! 絶対にあったらいいですよ。大人になってもどこかでブランコを見かけると、なんか乗りたくなりません?」

――なんと即答! しかもブランコとは意外な発想ですね。

阪本監督
「僕、好きなんですよ、ブランコ。節目節目で乗ってますね。考え事するのにぴったりなんですよ。それにブランコって、子どもから大人、年配の人まで乗れるでしょ? マンションの屋上にブランコがあったら、誰かと出会うきっかけにもなるし。いいと思うけどね(笑)」

――確かにブランコって、漕いでいるうちにだんだん心が無心になるというか、そういうメディテーション的な部分もあります。安全上の問題などはありますが、屋上庭園のあるマンションにブランコがあったら、空に向かって漕いでいるような感覚が味わえるかもしれません。

そういえば団地といえば、ブランコやジャングルジムの遊具がある敷地内公園のイメージがあります。映画『団地』の個性豊かな登場人物たちが、団地のブランコに乗っていてもおかしくないかも!

0530_5監督ご自身が節目節目でブランコに乗っているとは意外なエピソードでしたが、脚本や映画の構想を練るのにも役立ちそうですね。次回作品構想は、もしかしたらブランコから生まれてきたりして!?

コラムニストの泉麻人さんが「ウルトラ団地型コメディー!」と評した映画『団地』は、まもなく公開。ぜひ劇場で“団地愛”に満ちた映画を体験してください!

団地

0530_6脚本・監督:阪本順治
主演:藤山直美
配給:キノフィルムズ
2016年6月4日(土)より有楽町スバル座、新宿シネマカリテ他全国ロードショー
http://danchi-movie.com

『団地』の噂ばなしがTwitterでも!!
https://twitter.com/danchi_movie

©2016「団地」製作委員会 映画『団地』

2016/05/31

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