今話題の電子地域通貨がマンションで使えたとしたら?飛騨・高山限定「さるぼぼコイン」の事例から考えてみた

飛騨・高山地域で実用化された電子地域通貨『さるぼぼコイン』。利用者のスマートフォンアプリで店舗にあるQRコードを読み取り使用する画期的な仕組みです。

紙幣や硬貨から、電子情報を使った通貨へ——。ITの進化やライフスタイルの多様化により、「お金」の概念が今変わりつつあります。

今年に入り話題となったビットコインは、インターネットを介して世界中で簡単に消費や取引ができるバーチャルな通貨の一例ですが、同じくITを駆使してはいるものの、観光地など“特定のエリアでのみ使用できる”という、ビットコインとは真逆の発想の「電子地域通貨」が注目されているのをご存知でしょうか。

……特定のエリア、といえば、私たちが住むマンションもその一つ。「自分のマンション内だけで使える電子地域通貨があったらおもしろいかも…」。そんな妄想を膨らませながら、独自の電子地域通貨システムを、飛騨・高山で実用化して話題になった株式会社アイリッジのシニアマネージャー・川田修平さんにお話を伺いました。

導入のハードルが低い電子地域通貨システム

ユーザーの位置情報を活用して、その近くにある店舗のセール案内などをスマートフォンに配信するといったシステムで急成長してきた株式会社アイリッジ。インターネットの世界(オンライン)の施策を、現実世界(オフライン)の経済活動につなげる「O2O(オーツーオー):オンライン トゥ オフライン」と呼ばれるマーケティングを手がけ、そのサービスを、広告配信やマーケティングから決済の領域にまで広げてみようと電子地域通貨プラットフォーム『MoneyEasy』を開発しました。

これは加盟店の店頭に設置したQRコードを、ユーザーのスマートフォン内のアプリで読み取ることで決済を行うというものです。ICカードによる決済とは異なり、店側は読み取り用の機器を導入する必要がないため、大きな初期費用は不要。操作は基本的にお客さんが行うので、いわゆる「ワンオペ」の店舗でも労力的な負担がなく、電子地域通貨サービスを手軽に開始できるのが大きな特徴です。

電子地域通貨プラットフォーム『MoneyEasy(マネーイージー)』利用の流れ。利用者が自分のスマートフォンを操作し支払いを完了させるので、導入店舗側の負担が少ないのが大きな特長。

飛騨・高山地域限定の電子地域通貨『さるぼぼコイン』を本格展開

この仕組みを採用し、地元経済を活性化する取り組みが始まっているのが岐阜県飛騨・高山地域。飛騨信用組合と共同で、高山市・飛騨市・白川村限定で使用できる『さるぼぼコイン』という電子地域通貨を2017年12月から開始しました。

「飛騨・高山地域は、『人口減少』『少子高齢化』といった問題を抱えて地域経済が停滞していました。しかし一方で年間450万人が訪れる人気の観光地という側面もあり、外国人観光客も42万人と増え続けています。外から人を集める魅力があるのならば、そこから落ちてくるお金を地域で回す仕組みを普及させれば経済を盛り上げる基盤になる。そう考え、3ヶ月間の実証実験を経て本格導入に至りました」と話します。

ユーザーは飛騨信用金庫の窓口やネットバンキングなどで、アプリにさるぼぼコインをチャージ。商品やサービスを購入したい店舗の店頭にあるQRコードを読み、自分で入力した金額画面を店員さんに見せれば、その場で支払いが完了するという流れです。

加盟店同士でのコインの交換もできることから、仕入れや店舗間の支払いにも活用可能。これにより「お金が地域外に流れにくい」仕組みを形成しています。

1 さるぼぼコインをチャージ
飛騨信用金庫の窓口、口座、ネットバンキングなどを利用
チャージするとプレミアムポイントが付加される

2 加盟店でユーザーのスマートフォンを使い決済
店頭のQRコードを読み取り、ユーザーが金額を入力。店側に見せて確認

3 店は飛騨信用金庫の支店で決済手数料(1.5%)を除いた額を受け取る
加盟店間での仕入れなどの決済でも活用可

「本格導入から3ヶ月程度で、アプリのダウンロード数は7,000件、加盟店は約500店舗にもなり、1億数千万円もの現金がさるぼぼコインへチャージされました。サービスの初動としては当初の想定以上。システムや運用に大きなトラブルもなく、加盟店、ユーザー両方からの評判も上々です」と語る川田さん。

この成功をきっかけに同様の問題を抱える地域での活用も増えることが予想され、すでに複数の地域で実証実験が行われています。さらには同社が得意とするO2Oマーケティングと絡めて、アプリに来店ポイント、スタンプラリー、クーポンの配信などの機能も盛り込めば、地域経済活性化のツールとしての存在感がますます大きくなるのは間違いありません。

電子地域通貨システム『MoneyEasy』を開発した株式会社アイリッジ・シニアマネージャーの川田修平さん。

地方都市だけでない、電子地域通貨の利用範囲

この電子地域通貨に注目しているのは、飛騨・高山のような地域や都市だけではありません。「限られたエリア内で流通する通貨」という特性を生かせるのであれば、他にも活用できる領域は少なくないのです。

『MoneyEasy』は、長崎県のハウステンボスや愛媛県の伊予銀行(本店内の食堂や近隣の飲食店で活用)といった施設や企業での実証実験が始まっており、本格運用の準備が着々と進められています。「企業の社員食堂やコンビニなどで利用できるシステムを開発し、実際に当社内でも実験をしています。これは社員食堂や社内の置き菓子などを利用する際の決済のほか、社員の福利厚生にも使えるのがおもしろいところです。例えばランチに体に良いとされている食材を選ぶ人に会社からポイントを援助したり、勤怠管理システムと連動させて1ヶ月間無遅刻無欠席の社員にポイントを与えたりという使い方が考えられます」。

ほかにも模範的な接客態度をとった社員に対して、感謝のメッセージカードとともにポイントを付加して表彰する、社内美化など業務以外のことで働いてくれた際にポイントで労をねぎらうなど、社内環境の改善やモチベーションアップにも効果を発揮すると川田さんは言います。「人の善意、意欲、奉仕の気持ちなど定量評価できないことに対し、キャッシュではない価値で気軽に、しかも正当に応えることができるのが電子地域通貨の魅力でもあります。会社という大人の世界で『ご褒美に100円』というのは、なかなか成り立ちにくいですよね。でも『よくやった、100ポイント!』というのであれば、もらう方は嬉しいし、与える企業側の負担も少ない。社員と企業のWin-Winな関係の構築に役立つのも、この仕組みの大きなメリットなんです」と語り、企業内における電子地域通貨の「利便性」「手軽さ」以外の利点を説明して下さいました。

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マンションでも利用メリットはたくさん!

さあそれでは、マンション内の共用施設や自販機、行事、近隣の商店街などで利用できるオリジナルの電子地域通貨システムを導入したとして、それをどう活用できるかを考えてみましょう。

川田さんの言葉にあった「善意、意欲、奉仕の気持ちなど定量評価できないことに対し、キャッシュではない価値で応える」という特徴がカギになりそうです。

例えば…
●マンションの清掃活動に参加した人に対して、100マンションポイント
●定期的な防災訓練に参加した人に対して、200マンションポイント
●健康促進のための体操やウォーキング参加者に対して、500マンションポイント
●マンション内の劣化や破損箇所を発見し、通知してくれた人に対して、1000マンションポイント
●理事を引き受けてくれた住民に対して、5000マンションポイント
などの施策はどうでしょう。

考えてみれば管理費の一部を活用して、清掃活動の後に参加者にペットボトルのお茶を配ったり、理事にいくらかの報酬を出しているマンションもありますから、それがポイントに変わっただけとも取れます。また、もしわずかなお礼で住民が積極的に劣化や破損箇所を教えてくれるのであれば、その分管理費用を削減できるかもしれません。しかもお茶やお菓子という「モノ」よりもありがたみがあって、かつ現金のような生々しさがないのが電子地域通貨の良いところ。それが商品券のように近隣の商店でも使えるとなれば、周辺コミュニティとの関係強化や経済活性化のきっかけにもなります。

あるマンションにお住まいの理事Aさんの1日を例に、マンション内電子地域通貨(仮に『MLマネーとします』)導入後の世界を思い描いてみましょう。

2018年度にマンション管理組合理事に選出されたAさん。

初めての理事会後、マンションの管理規約に従い、管理費から理事の報酬として5000MLマネーが贈られました。これで理事を引き受けたことのモチベーションが上がります。

理事会後、理事仲間とともにマンション内にあるベーカリーへ。ここではいつも、なるべくMLマネーを使うようにしています。レジにあるQRコードをスマホのアプリで読み取り、自分で金額を入力して店員に見せれば買い物終了。小銭いらずで、とても便利です。しかも代金のうち5%がマンションの修繕費に寄付される仕組みになっているので、マンションの役に立つこともできます。

お腹も満たされたところで解散し、Aさんはそのまま奥さんに頼まれていた夕食の買い出しに。マンションから歩いて5分のところにある商店街ではMLマネーが使えます。肉屋さんと八百屋さんで買い物をしたら、来店ポイントが2MLポイントついて得した気分に。

帰り道、マンションの敷地内で破損している電灯を見つけました。これをマンション住民専用アプリを通じて管理会社へ報告。お礼として1000MLポイントがもらえました。

夕飯の席では、家族で明日の朝のマンション清掃についての話題に。早起きが苦手な息子も、参加者にもらえる100MLコイン目当てにお手伝いしてくれるそうです。

このように、まさにさまざまな使い方を考えることで、一石二鳥にも三鳥にもなりうるのがマンションでの電子地域通貨の実用化です。共用部の利用料支払いなどで交通系のICカードの導入を行うマンションも出てきましたが、より手軽に開始でき、なおかつ様々な波及効果も期待できる電子地域通貨システムは、次の時代の快適なマンションライフを築く画期的なツールになるかもしれませんね。

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